「アメリカは為替によって日本経済を封じ込めに成功した」という認識を持つ人は少ない、少ないというよりは皆無と言っていいかもしれません。大部分の日本人は、「それって何のことなのよ」と思っていることでしょう。以下に、日本経済がどのように封じこめられているかを具体的な数字で示していきます。
前回、購買力平価という物差しを使えば、おおまかながら妥当な為替レートは1㌦168円(153円~184円)だろうと推測しました。
話をわかりやすくするため、車一台、1万ドルを輸出した場合を例にあげました。為替が1㌦110円の場合は売り上げは、110万円で5万円の利益とすれば、1㌦168円の場合の売り上げは168万円になります、単純計算で73万円の利益です(無論、輸出の場合、横持料、船賃、通関料そのたのコストがかかりますが話しをわかりやすくするため省略)。*訂正:73万円は63万円の誤りです。
為替が1㌦168円ならば、有り余る利益が出ます。トヨタは一昨年頃まで、2ヶ月か3ヶ月ごとに期間工募集の広告を出していました。つまり非正規雇用を繰り返すことで、労働者賃金をぎりぎりまで抑えて、黒字経営を維持してきました。為替が1㌦168円ならば、工員たちを非正規にする必要もなく、正規社員で且つもっと高い賃金を支給することができ、さらに高額の税金を納めることも可能だったに違いありません。いき過ぎた円高は社会を不安に陥れ、労働者を奴隷のようにこき使い、企業側は都合が悪くなれば切り捨てるのです。
トヨタが公表している決算書で、為替がどのように影響しているかを確認してみましょう。
2008年3月期の連結決算では、トヨタは過去最高の1兆7178億円の純利益を出しています。
ところがわずか1年後の2009年3月期の連結決算では、なんと4370億円の赤字に転落です。
販売台数の落ち込みもありますが、08年と09年の決定的な違いは為替レートです。08年は1㌦114円(ユーロ162円)、09年は1㌦101円(ユーロ144円)だったことが記載されています。為替レートが13円違うだけで、このような重大な結果の違いをもたらすのです。
日本は1985年のプラザ合意以後今日まで、円高による損失は百兆円単位の損失になるでしょう。どなたか興味のある方は試算してみてください。
次に、為替レートが1㌦100~120円だった1995年⇒2007年の「日本」対「世界各国」の経済成長を比較してみます。
財団法人:国際貿易投資研究所が公表している、世界各国のGDP(上位60)という表(ドル表示)があります。
その表の中から、日本を除く上位30カ国(但し、台湾と南アはデータが一部欠落しているのでこの2カ国は除く30カ国)の1995年のGDPが12年後の2007年にはどれほど大きくなったかを、計算(2007年GDP/1995年GDP)してみました。
その結果30カ国平均で、2.3289倍になっていました。この12年間の年間平均成長率に換算すると、なんと7.3%でした。中国とロシアの成長が極端に高い成長率を示していますので、この2カ国を除く28カ国では、年平均6.7%になります。1995年から2007年の間に世界は、驚異的な経済成長を遂げています。一方、日本はなんと0.834倍、つまりこの12年間でマイナス16.6%の経済成長です。以上30カ国だけの比較でみましたが、60カ国に増やして比較しても結果は変りません、なにしろこの12年間でマイナス成長だったのは日本以外にないのですから。
昨年国会でも話題になりましたが、国民一人あたりのGDPが18位になったことが、大きな話題になりましたが、この国際貿易投資研究所が公表している資料によれば、2007年の段階では、さらに低下して21位になっています。
ついでに言わしてもらうなら、厚生労働省が平成20年調査の国民生活基礎調査によると、1世帯あたり平均所得金額は、平成6年(1994年)664.2万円だったものが、平成19年(2007年)には556.2万円となり、108万円の減少です。平成19年の世帯あたり所得は、平成6年の83.7%つまり16.3%の減少です。これはまさにGDPの減少率16.6%とほとんど同じ数字です。当たり前と言えばあたりまえのことですが、日本経済が低下した分だけ、所得も減少したということになっています。
私は経済至上主義者ではありませんが、ここ15年余りの日本経済はひどすぎる。
これは30人クラスの生徒のなかに、箸にも棒にもかからぬ「日本という名の落ちこぼれの生徒が一人」いるのと同じことです。
品質管理の点から言えば、一個だけ極悪の不良品が発生しているということになります。
まともな企業管理者ならば、不良品の発生原因を究明して今後の企業運営に役立てるはずです。まともな教師なら、「おい日本君、体がどこか具合悪いの?親(米国)から虐待されているんじゃないの?」とおちこぼれの原因を探って、矯正してやるはずです。
政治家は政争にうつつを抜かし、経済学者は役立たず、マスコミは付和雷同している。さすがに多くの国民は、どうも何かがおかしいと気づき始めたのだろうか。戦後60数年、紆余曲折はあるものの、一党支配をつづけてきた自民党(背後にアメリカ)に見切りをつけ、今度は国民が自民党を捨てようとしているのではなかろうか。
次回は、為替と国民所得と自給率についてもう一度の検討します。
蛇足:プラザ合意後の日本はなんらの抵抗もみせず暴君(アメリカ)に虐待され続けている。次は国民の金融資産である郵貯・かんぽの金を民営化の名の下に国際金融博打市場に流され、数年後には雲散霧消ということはないよねー。こうして日本はぼろぼろになっていくのではないかと危惧する。
①赤字国債が500兆円も発行されて尚、GDPが全く伸びないのは、その額が外国か、ごく一部の富裕層に流れたとしか考えようがない。
②(子孫に借金を残すなと騒いでいるが)そもそもバランスシートで考えれば債務とともに債権も承継される(だから心配することはない)。
という二文に感銘を受けました(時々、さも自分の意見のような顔をして使わせてもらっています)。「経済」はこの位、シンプルに言ってもらって初めて理解できるというものです。いかりや爆さんの頭脳が老いて尚、明晰さを失っていないからでしょう。感嘆を禁じえません。
2003年の為替介入の費用45兆円、(米国の使用目的は、いかりや爆さんと意見を異にしますが)短期国債でまかなわれています。こうなると財務省から出ているらしい「財源はどうするんだ」論、つくづく酷いものですな。