猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

クリーン開発メカニズムで世界初の温室効果ガス排出権賦与

2005-10-22 05:02:59 | 環境・防災・エネルギー
 先日「最大級の排出量取引事業へ」という記事において、新日鉄と三菱商事が中国でクリーン開発メカニズム(CDM)を利用した温室効果ガスの排出権獲得を伴うプロジェクトの計画について紹介した。それは、実現すれば世界最大規模であるものの、あくまで計画である。今日はCDMを用いて世界で初めて排出権獲得が実際に認められた例を二つご紹介したい。CDMの仕組みについては、前掲の記事を参照していただきたいのだが、排出権が国際的に価値あるものとして認められるには第三者機関による認証が必要であり、それは具体的には、国連の気候変動枠組み条約事務局である。今回認定されたのは、日本企業5社を含む日米欧の企業や政府機関など計25社・団体が出資している「世界銀行コミュニティ開発炭素基金」が、中米のホンジュラスで水力発電所を建設するという事業に対してである。この事業により、年間約3万7000トンの二酸化炭素(CO2)削減が見込まれるが、今回認定された排出権は、2210トンである。なお、日本企業の獲得分は5社の出資比率に応じて計約400トンである。
 ところで、2004年のわが国の温室効果ガス総排出量は、二酸化炭素に換算して13億2900万トンであった。これは京都議定書の削減目標の基準である1990年の排出量を7.4%上回るものであり、2008年~2012年における削減目標は-6%なので、今のところ差し引き13%オーバーということになる。この目標達成は極めて厳しいものである。前掲の記事で触れた中国での事業計画では年間で1000万トンの排出権獲得が見込まれるので、それに匹敵する規模のCDMプロジェクトを十数件実施してやっとクリアできるということである。今回認められた件など、第一歩には違いないが、微々たるものでどうしようもないというのが実情だ。一点だけ指摘しておきたいのは、基準年の1990年がEUにとって極めて有利に設定されている点である。実は、ヨーロッパ(特にドイツとイギリス)でエネルギー効率の改善が急速に進んで排出量が一気に減った直前の時期が基準に選ばれている。さらにEUは全体として8%削減すればよいのであって、各国は排出枠を「融通」しあうことができる。そういうカラクリがあるので、EUが環境問題でごり押ししてくるのは不当なことなのである。だからといって、温暖化対策をすることが無意味だなどというつもりは毛頭ないが、国際政治の側面を無視して環境問題を考えても空理空論に終わると指摘したい。


(参考記事)
[国連から温室ガス排出権、初の獲得…日本企業5社]
 富士写真フイルムや新日本石油など日本企業5社は21日、京都議定書の「クリーン開発メカニズム」を活用し、国際連合から世界で初めて温室効果ガスの排出権の発行を受けたと発表した。
 大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ、出光興産と沖縄電力も加えた5社が出資している「世界銀行コミュニティ開発炭素基金」が、開発途上国の温室効果ガスを削減する代わりに排出権を獲得できる仕組みを活用したもので、5社には出資比率に応じて計約400トンの排出権が分配される。
 同基金には、日米欧の企業や政府機関など計25社・団体が出資している。中米のホンジュラスに水力発電所を建設し、2003年6月~05年5月までに二酸化炭素2210トンを削減したと国連から認定された。この水力発電所は年3万7000トンの温室効果ガス削減が見込めるため、基金はさらに約3万5000トンの排出権の獲得を目指す。
(読売新聞) - 10月22日1時37分更新


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