猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

黄砂、大量に飛来―黄砂の”功罪”両面など

2006-04-20 10:21:01 | 環境・防災・エネルギー
 黄砂は中国大陸奥地の砂漠の砂が、低気圧に伴う砂塵嵐とよばれる暴風によって上空に巻き上げられ、それが偏西風によって運ばれる現象である。巻き上げられる高さは実に5000メートルから10000メートルにも達する。また最終到達地域はアメリカにすら及ぶという。
 18日には、普段地上観測には引っかからない東京や千葉でも顕著な黄砂が観測された。写真はそのときの都心の様子である。中国大陸における砂漠化が急速に進行している結果、日本に飛散する黄砂も増加傾向である。3月には韓国で「黄色い雪」が観測されてちょっとした話題になった。
 さて、黄砂というと、視程が悪くなったりといった被害に加えて、近年では大気汚染物質の運搬を懸念する人も多いことだろう。黄砂は、酸性雨の原因になる車の排ガスや火山ガスなどを大量に運び、それは年間に車70万台が出す排ガスの量に相当すると見積もられている。それに加えて、2005年の中国全土の二酸化硫黄(SO2)の排出量が2549万トンに達し、2000年と比べて25%も増加したなどという中国環境規制院があってみれば、憂慮するなと言うほうが無理というものだろう。
 しかし、黄砂はアルカリ性の炭酸カルシウムを含んでいるために、吸着した酸性物質中和する働きも持っている。その効果と、酸性物質が吸着して運ばれる効果のどちらが大きいかということがキーポイントになってくる。また、黄砂にはリンやカルシウム、鉄などの無機養分が付着しているため、海洋にに落下することで鉄分などの供給源となり、植物プランクトンが増え、これをえさにして魚が育っているともいわれている。こういうことに関する自然科学の研究は日中韓共同で大いにやったらよいのであって、さすがにここにまで「中国脅威論」を持ち込むのは、やりすぎというものだろう。
 もう少し政治色を帯びてくるのが、中国の火力発電が石炭大量消費することからS02の排出量が著しく多く、大気汚染の原因となっている問題である。こういう物質が偏西風に乗って日本に到来し酸性雨をもたらす危険性は大である(そんなことはないという研究結果もあるが)。火力発電所に頼りながらS02の排出量を減らすには、燃焼効率の高い新型のものを用いるたり脱硫装置を装着させたりといったことが必要になる。そのために、日本は援助をすべきなのかというのは、国民世論としては、単純に「援助したらいいじゃないか」というわけにもいかない。正直言って「貴国が汚染源なんだから何とかしろ」と考えるのが自然ではある。政府が前面に出るのではなく、技術をネタにうまい具合に企業が「商売」してくることで改善を促すのがまずは無難であろう。それにしても野放図な対中ODAは悔やまれるところである。やるならば、せめてこういう分野に限定すべきであった。



(参考記事1)
[広範囲で黄砂観測 東京6年、千葉18年ぶり]
 日本列島は18日、東北から九州までの広い範囲で黄砂が観測され、気象庁は「屋外では黄砂の付着が予想される」と注意を呼び掛けた。
 同庁によると、黄砂が観測されたのは、仙台や名古屋、大阪、松山、大分など55地点以上。千葉市では18年ぶり、東京都心では、6年ぶりの飛来になったという。
 黄砂は、中国大陸の砂漠などで、強風に巻き上げられた砂が偏西風で飛来し、空が黄色くかすんだように見える現象。今春は4月8日に59地点で観測されている。
 また18日は、北海道などを除き、5月並みの陽気となった所が多く、甲府は25・1度と今年初の夏日を記録。日中の最高気温は、東京22・3度、名古屋23・5度、福岡23・7度と5月中旬並みだった。
(共同通信) - 4月18日19時39分更新

(参考記事2)
[中国、SO2排出25%増 05年、00年比 北京市にも酸性雨]
 【北京17日傍示文昭】環境保護政策を行う中国環境規制院は、2005年の中国全土の二酸化硫黄(SO2)の排出量が2549万トンに達し、目標値を749万トンも上回ったことを明らかにした。中国の火力発電は石炭を多く消費することからS02を排出する原因となっており、発電量の増加が排出量を押し上げたとみられる。2000年と比べて25%増加しており、同規制院は「北京にも酸性雨が降るようになった」と指摘している。新華社などが伝えた。
 発表によると、05年のエネルギー総量は22.2億トンSCE(標準炭換算量)で、2000年と比べて55.2%も増加。このうち石炭の占める割合は68.9%に達した。
 また、05年には発電設備容量が2000年の2.38億キロワットから5.08億キロワットに伸びたが、同時に消費する石炭も5.8億トンから11.1億トンへとほぼ倍増。その一方で、火力発電所の脱硫装置の整備が進まなかったことから、SO2の排出量が増加したという。
 同規制院の鄒首民副院長は「第10次5カ年計画(2000―05年)はエネルギーや物質の消費過多で、粗放型の経済発展モデルが改善されなかった」と強調している。
=2006/04/18付 西日本新聞朝刊=
(西日本新聞) - 4月18日10時1分更新


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
中国・韓国には (PJ)
2006-04-20 14:08:28
環境汚染に対して損害賠償を請求したいです。

(韓国からのゴミの漂着で処理料がかかってますよね。)

損害賠償を請求されてしゅんとするような国ではありませんけど、懐が痛めば少しは慎むだろうという希望的観測ですw

砂漠の植林事業でも引っこ抜かれて売られてしまうようですし、それを放置しているような国に未来があるとはとても思えないんですけどねぇ。
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Unknown (総理大人)
2006-04-20 23:50:48
でも、せっかくのいい天気なのに、洗濯物干せない事を考えると中国脅威論の一つや二つ?は言ってみたくなります…



>技術をネタにうまい具合に企業が「商売」してくることで改善を促す



ビジネスチャンスですよね。上手に売り込むことができるかどうか…。。
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コメントありがとうございます (猫研究員。=高峰康修)
2006-04-21 00:21:12
>PJさま

環境破壊による被害に対する損害賠償請求は「因果関係がはっきりしない」と言われるに違いないですが、言う分にはタダですからね。あっちが歴史カードならこっちは環境カードでも使いますか。

中国のモラルハザードといえば、パイプラインに穴あけて盗んで売ってますよね。遵法精神の欠如は、きっと国家基盤を蝕むだろうと思います。



>総理大人様

当地九州北部では、2月ごろには黄砂を含んだ雪が吹き付けることがあるので、寒波の後の車の窓や車体はひどいですよ。

まあ、汚染物質を含んでいなければ不可抗力、汚染されていれば、ここでも「中国脅威論」かな…。
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