猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

黄砂に平均値の10倍以上の重金属―鳥取県の研究所で観測

2006-06-18 09:11:48 | 環境・防災・エネルギー
 今年は、黄砂の飛散が特に多く、大陸からの大気汚染物質がそれに付着して飛来する可能性があらためて指摘され懸念されている。例えば、黄砂にNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)が付着していれば、酸性雨の原因になる。もっともこれに関しては、黄砂自体がアルカリ性であるために中和される可能性も指摘されており、さらなる研究が必要である。酸性物質のほかにも汚染物質はある。マンガンや砒素などの重金属もそうである。鳥取県では、昨年4月に黄砂を含む大気中から通常平均値の10倍以上のマンガンやヒ素などを県衛生環境研究所が観測していることが分かった。
 具体的には、鳥取県内で昨春7回の黄砂を観測し、そのうち県中部の湯梨浜町で、昨年4月15~16日に採取した黄砂を含む大気には計8種類の重金属が含まれ、マンガンは1立方メートル当たり0・097マイクロ・グラム、ヒ素は0・017マイクロ・グラムを検出した。これは、平均値のそれぞれ13倍、22倍に相当する。ただし、この数値は世界保健機関(WHO)の基準値を下回っており、直ちに人体に影響があるというわけではない。しかし、長期的に蓄積されることにより土壌汚染が進み生態系に影響を与える可能性はあるだろう。
 問題となるのは、中国における黄砂の大量発生と、中国の技術力が低いままの経済発展に伴う汚染物質の排出である。黄砂の大量発生は、大陸奥地の砂漠化が原因である。これはグローバルな気候変動が原因であるとも、現地での過度の遊牧が原因ともされる。緑化できればそれに超したことはないが、なかなか難しい。汚染物質の放出に関しては、典型的な越境汚染というやつで、汚染者である中国に何とかさせるのが筋ではあるが、現実問題としては残念ながら被害国である日本も援助して汚染を止めざるを得ない側面がある。その意味で、先日の対中円借款凍結の解除は忸怩たるものがある一方で、環境目的の割合が大幅に増加している点は一定の評価を与えるべきだろう。ついでに「何かあれば再凍結する」と麻生外相が明言していることも心に留めておきたい。
 最後に、越境的な環境問題と憲法に環境権を書き込むことの整合性を考えてみたい。憲法に、環境権を明記することは、国が国民の環境権を守る約束をするということである。他国で発生した汚染物質により国民が被害を受ける場合は、「国民の環境権を守る約束」は国内で完結しない問題であって、言ってみれば画に描いた餅である。まさか汚染源を絶つために戦争を仕掛けてでも環境権を守るなどということはあるまい。国民が良好な環境の下で健康な生活を送れるようにせねばならないのは当然であるが、環境権の定義は曖昧なのでもっと詰める必要があると指摘しておきたい。



(参考記事)
[鳥取の黄砂急変、マンガン13倍・ヒ素22倍]
 鳥取県で昨年4月、黄砂を含む大気中から通常平均値の10倍以上のマンガンやヒ素などを県衛生環境研究所が観測していることがわかった。
 世界保健機関(WHO)の基準値を下回るなど、健康被害を受けるレベルではないが、黄砂の発生する中国の急速な経済成長に伴う環境汚染が影響しているとみられる。同研究所は「近年、大規模な黄砂が発生しており、将来の影響を調べ、対策をとる必要がある」としている。
 同研究所は昨年度から韓国・江原道保健環境研究院などと3年計画で黄砂の共同研究に乗り出している。
 同県内では昨春、7回の黄砂を観測。うち県中部の湯梨浜町で、同年4月15~16日に採取した黄砂を含む大気には計8種類の重金属が含まれ、マンガンは1立方メートル当たり0・097マイクロ・グラム、ヒ素は0・017マイクロ・グラムを検出した。
(読売新聞) - 6月18日3時6分更新


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
それは・・・。 (PJ)
2006-06-18 12:54:56
賛成しにくいです。

中国は世界一の武器購入国であり、日本に対抗するために、世界中でいろんな工作をしているような国です。

それではまるで泥棒に追銭じゃないですか。

賠償金を取って欲しいくらいなのに・・・。

私は中国の七色の川を見てから、中国の食品は買いません。

 http://blog.livedoor.jp/safe_food_of_asia/archives/50010839.html



お金をあげても中国自身が何とかしようと思わない限り、どうしようもないと思います。
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PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-06-18 19:48:12
賠償金を取るというのは良い考え方で、有償援助をうまく活用して事実上賠償金を取る形にすればよいのです。踏み倒される心配は大とはいえ…。対中環境関連の援助の可否は、我が国の国民にとっての事態の切迫度に応じて決まります。中国の自助努力に待つ段階か、半ば強引に押しかけてでも汚染源を絶つべき「背に腹はかえられない」段階なのかによって対応は当然異なるべきです。本文では舌足らずでしたが、後者の場合のオプションを提示したつもりです。

賛成できない感情は大変よく理解できるので、もっとよい案があれば是非ご教示ください。思わぬ点を見落としているかもしれないので。
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いつも思ってるのは (PJ)
2006-06-19 11:52:28
最初に○年までに◎の数値が△△ppm改善されなければ、援助より高額の賠償金を課すよ、と細々とした条件をつけて欲しいんです。

日本に運ばれる黄砂や中国の河川の海への流入部、日本へ流れていく、いくつかのポイントでの有害成分を定期的に測定して評価することが出来るんじゃないでしょうか。

本当にムカつきますぅ。
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PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-06-20 01:01:53
>最初に○年までに◎の数値が△△ppm改善されなければ、援助より高額の賠償金を課すよ、と細々とした条件をつけて欲しいんです。



そういう合意つきのODAと即時停止の二者択一というのはよい手かもしれません。そうすると、ODA自体を諦めるような気はしますが…。

水質汚濁の問題は、海洋でかなり薄まるので直接の問題にはならないでしょうけど、水産資源への影響はあるかもしれません。その時には、中国産の海産物は禁輸しなきゃいけません。精査すれば、既に危険な品目もある可能性は小さくないでしょう。
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