猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

気候変動に関する政府間パネル第4次報告書公表―「温暖化は人為的要因による」

2007-02-03 02:10:37 | 環境・防災・エネルギー
 パリで開かれていたIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化ついての第4次報告書「気候変動2007―自然科学の論拠」をまとめ、正式にこれを発表した。
 同報告書のシミュレーション結果によれば、このまま化石燃料に依存した経済活動が続けば、今世紀末の平均気温は1・1度から最大で6・4度上昇すると予測される。2005年までの過去100年間の平均気温は0・74度上昇している。前回第3次報告書(2001年)では、それまでの100年間の平均気温の上昇は0.6度だったので、温暖化が加速している可能性が高い。また「平均気温や海面水位の上昇などから、気候システムの温暖化は、疑う余地がない」「20世紀半ば以降の温暖化は、人間の活動による温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と述べて、温暖化の原因は人間活動であると強く示唆した。
 報告書の内容には、科学的にはなお不確定要素があるとはいえ、こればかりは実験して試してみるわけにいかないので、国際社会が一致結束して温暖化対策を進めるのは当然であろう。ただ、「6・4度上昇」というのは最も極端な計算結果であり、報道などでこの数値ばかりが一人歩きしているのは疑問である。温度上昇3度前後というのが最も確からしい値だったはずである。一番問題なのは、実は温度上昇の絶対値ではなくて進行速度である。極めてゆっくり上昇するならば2、3度ぐらいの温度上昇には生態系は相当程度順応できる。急激に温度が変化するから対応できないのである。このあたりの論理はもう少し正確に普及させるべきであろう。ただし、来日中のキリバスの大統領が訴えているような島嶼国の水没や、環境省の発表にある砂浜の消失は温度が実際に何度ぐらい上昇するかによるところが大きい。
 今年は、京都議定書で削減義務が決められている2008年から2012年という「第一約束期間」の前年であり、その後の4年間(第二約束期間)の温暖化対策をどうするかについても議論し始めなければならないなど、温暖化問題にとって大きな転換点となるはずである。米国の反応も、ブッシュ大統領の一般教書演説に環境問題への取り組みが盛り込まれたことに象徴されるように、温暖化対策拒否一本槍ではなくなった。温暖化対策がなされることを前提に考えれば、その潮流に乗り遅れることは産業にとってむしろマイナスである。おそらく、そういう論理に基づいて米国経済界は政権に圧力をかけたのであろう。また、二酸化炭素を地中に貯留する技術などの実用化にめどが立ったことも大きい。要するに、温暖化対策はビジネスチャンスだということである。国際政治の観点からも、温暖化防止の国際的枠組みの作成に積極的に関わることは発言力を高めることに繋がる。これらは、当然我が国にも当てはまることである。さきほどキリバスの大統領の例をひいたが、温暖化防止に積極的に取り組む姿勢を見せることは、消極的な中国との差異が明確になり、こういった島嶼諸国へのアピールポイントになる。昨年、中国は南太平洋の島嶼国への影響力を強めようと触手を伸ばしてきたが、それに対抗するにはやはり温暖化問題を持ち出すのが効果的であろう。もちろん、もっと大きな観点で「小さい国々を見捨てない倫理的な国」との評価を国際社会で得られることはソフトパワーを高めることに他ならない。温暖化問題は、結局は科学よりも政治の話にならざるを得ない。



(参考記事1)
[今世紀末の平均気温、6・4度上昇も…国連報告が警告]
(2月2日12時55分配信 読売新聞)
 【パリ=渡辺覚】当地で開かれていた国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第1作業部会総会は1日、地球温暖化の進行を科学的に予測した第4次報告書をまとめた。
 石油など化石燃料に依存する社会が続くと、21世紀末の平均気温は最大6・4度上昇するとの内容で、2日午前(日本時間同日夕)に正式発表する。
 報告書は、2005年まで過去100年間の平均気温が0・74度上昇し、0・6度だった第3次報告書(2001年)より温暖化が加速していると指摘。今後も化石燃料に依存したままだと、今世紀末の平均気温は、1・1度から最大で6・4度上昇するとした。
 さらに報告書は、北極で今世紀後半、晩夏にほとんどの海氷が消えると予測。猛暑や熱波などの異常気象の増加や台風の大型化、サンゴ礁への大きなダメージなどに言及、世界に警告を発した。

(参考記事2)
[温暖化「人間が原因」、国連4次報告を正式発表]
(2月2日23時15分配信 読売新聞)
 【パリ=渡辺覚】国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第1作業部会は2日、地球温暖化の分析・予測をまとめた第4次評価報告書「気候変動2007―自然科学の論拠」を正式に発表した。
 洪水、暴風雨、雪氷融解など世界中で見られる現象を、人間活動による二酸化炭素など温室効果ガス増加に起因する温暖化と明確に位置づけ、気候変動の厳しい現実を突き付けた。京都議定書とその後のより長期的な削減体制をめぐる国際協議への影響は必至だ。
 報告書はまず、「平均気温や海面水位の上昇などから、気候システムの温暖化は、疑う余地がない」と強調し、「20世紀半ば以降の温暖化は、人間の活動による温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と言い切った。「可能性が高い」とする2001年の第3次評価報告より踏み込んだ。

(参考記事3)
[キリバス大統領 「地球温暖化で水没の危機」と理解訴え]
(2月2日9時58分配信 毎日新聞)
 来日中の南太平洋の小国キリバスのアノテ・トン大統領が1日、毎日新聞の会見に応じた。トン大統領は「キリバスは、地球温暖化による海面上昇によって国土が海に浸食される危機に直面している」と、日本を含む国際社会が地球環境問題に積極的に取り組むよう訴えた。
 南太平洋の33の環礁からなるキリバスは人口9万9000人。平均の海抜高度は2メートルで、最も高いところでも高度5メートルしかない。トン大統領は「先進国の工業化によって地球温暖化が進んだ結果、キリバスのような小国が高いコストを払っていることを知ってほしい」と訴えた。
 親日家として知られるトン大統領の来日は、昨年5月、沖縄県で開かれた第4回日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議(太平洋・島サミット)に出席して以来。
【中尾卓司】

(参考記事4)
[温暖化で日本の砂浜9割が消失、農漁業も影響…環境省]
2(月2日23時25分配信 読売新聞)
 地球温暖化が加速しているとの国連の報告書が2日、発表されたのに合わせ、環境省は同日、これまでの国内での調査研究結果をまとめた資料集を公表した。
 熱中症患者が増え、コメの収穫量は減少、砂浜の90%が消失――。温暖化がこのまま進んだ場合、日本でも国民の健康面をはじめ、農業など多方面で深刻な影響が生じることが改めて示された。
 国立環境研究所などの予測によると、今世紀末、日本では最高気温30度以上の真夏日の日数(2006年は東京で38日)が2~3倍に増える。エルニーニョ現象がより顕著になり、6~8月には豪雨になる頻度が増し、異常気象がますます深刻化する。
 その結果、コシヒカリの栽培では、苗をこれまでと同時期に植えた場合、気温の高まりで50年後に東北地方南部から南の多くの地域で、約10%収穫量が減る。生育も不十分となり、米粒が乳白色化して、品質が下がる。九州北部から中部の水田では、太陽熱で蒸発する水分量が増加、慢性的な水不足が予測される。

☆ぜひとも、Blog●Rankingをクリックして、ランキングに投票して応援してくださいm(__)m


最新の画像もっと見る