猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

理屈が通らない民主党の国民投票法案

2006-05-30 23:30:08 | 憲法
 連立与党と、民主党は、先日26日に憲法改正手続きを定める国民投票法案を、それぞれ個別に衆院に提出した。当初言われていた共同提出ではなくて、単独での提出になった。これで、憲法改正に関する法案が現憲法下で初めて国会で議論されることになるのだが、何度も主張しているように、憲法自身が96条で改正手続を明確に定めているにも関わらずその手続の議論自体がタブーであったことは、まさしく異常の一言に尽きる。それを、今もって「憲法改正に繋がる国民投票法制定には反対」などといっている共産及び社民は、自分たちこそ憲法尊重義務違反である。その点で、自らの主張を盛り込んだ独自案を提出した民主党の行動は当然であり評価してよいと思う。それを踏まえたうえで、民主党案には疑問があるので批判したい。
 民主党案で、まず一番おかしいのは、国民投票の対象を憲法改正に限定することなく「国政における重要な案件」に拡大している点である。日本国憲法は、言うまでもなく代議制民主主義を採用しており、直接民主主義が適用されるのは国政の場面では憲法改正手続が例外的な存在である。現在喫緊の問題となっているのは、憲法改正規定があるにもかかわらずその手続が定まっていないという、立法の不作為であって、直接民主主義を拡大するか否かという別の論点を持ち込むのはおかしい。国政上の重要な課題について国民投票を実施すること自体は、一つの案として議論に値しないとは言わないが、それはあくまで憲法自体で規定することであり、憲法改正における論点である。
 次に、投票権者の資格について、民主党案は「原則18歳以上、国会の議決により当該投票に限り16歳以上とすることもできる」というものである。年齢は、国政への参政権、すなわち選挙権と合わせるのが筋である。当面は20歳以上とすべきである。もっとも、公選法も改正して18歳以上に合わせること自体には絶対反対というわけではない。整合性が取れないのがよくないのである。「国会の議決によ16歳以上とすることもできる」には、大反対である。16歳は、さすがに若すぎる。それ以上に問題なのが、「国会の議決により」というが、統一的な基準を設けることができるのかどうか疑問である。そのときそのときの判断でということになれば、恣意性が大きくなる。なぜこんな不合理な案になったのか理解に苦しむ。
 三つ目の大きな相違点は「過半数」の定義である。与党案では「有効投票総数の2分の1を超えた場合」、民主党案では「投票総数の2分の1を超えた場合」である。また、投票様式についても、与党案は「賛成が○、反対が×、その他は無効」に対して、民主党案は「賛成が○、それ以外は反対票」となっている。総じて与党案の方が理に適っていると思う。特に民主党案の「賛成が○、それ以外は反対票」は乱暴に過ぎる。ただし民主党案の「投票総数の2分の1を超えた場合」というのは、憲法改正の重要性を考えれば首肯できる点もある。
 民主党案を眺めた印象としては、違いを出すための違いに陥っている印象を強く受けた。特に、憲法改正のための国民投票法案を審議しているはずなのに、唐突に「国政における重要な案件」を持ち出してきたところなどは、私には、それ以外に受け取りようがなかった。元々民主党が主張してきたメディア規制関連は、与党側が譲歩して全廃してしまっている。憲法改正手続という超党派でなされるべき議論を政局めいた用い方をしようとする意図であれば、如何なものか。
 与党側は、十分に審議を尽くしたならば、今国会で早急に可決成立させるべきである。憲法に定められた改正手続が法制化されていないなどという立法の怠慢は一日も早く是正されるべきだからである。「強行採決」と批判を受けるかもしれないが筋は通すべきである。



(参考記事1)
<国民投票法案>与党と民主党、個別に衆院に提出
 与党と民主党は26日午後、憲法改正手続きを定める国民投票法案を個別に衆院に提出した。両案は6月1日の衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りする見通し。憲法改正に関する法案が現憲法下で初めて、国会で議論されることになる。与党は投票権者の年齢など民主党との相違点について協議を進め、衆院段階での修正合意を目指すが、今国会での成立は困難な情勢だ。
 両案の主な相違は、(1)国民投票の対象を改憲に限定するか(2)投票権者の年齢を20歳以上(与党)とするか18歳以上(民主党)とするか(3)白票を無効(与党)と扱うか反対(民主党)と数えるか――の3点。一方で共通点も多く、投票は発議から60~180日以内▽投票日の1週間前からテレビ・ラジオでのCMを禁止▽衆参両院に憲法問題を審議する「憲法審査会」を常設――などで一致している。
 与党側は当初、民主党を含めた3党での共同提案を目指したが、対決姿勢を示す小沢一郎代表が応じなかった。【田中成之】
(毎日新聞) - 5月26日14時31分更新

(参考記事2)
[憲法改正、投票は「16歳以上」=国民投票法案、26日提出-民主]
 民主党は24日午後の「次の内閣」で、憲法改正手続きなどを定める国民投票法案を了承した。同党案は、憲法改正以外の重要な政策課題での投票も認めた上で、投票年齢を(1)憲法改正の場合は国会の議決があれば「16歳以上」(2)それ以外では「18歳以上」-とした。また、「白票」は反対票とみなした。同党は与党案に合わせて26日に提出する予定だ。 
(時事通信) - 5月24日17時1分更新


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
16歳以上とか○以外とか (PJ)
2006-05-31 13:25:22
整合性もですけど、大事な案件をただ風向きだけで決めると言うことですよね。
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PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-06-02 10:12:36
そうです。まさに風向きできめているのが、一番おかしな点です。憲法改正の国民投票法案のはずが、余計なものまで入れてるし…。
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