猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

「共謀罪」民主案丸飲みは論外

2006-06-02 09:59:53 | 訴訟・裁判・司法
 与党は、「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案の修正問題について、民主党の要求を全面的に受け入れる方針を決めたと伝えられている。その背景には、憲法改正国民投票法案や教育基本法改正といった重要法案の先送りに、自民党内から異論が続出しているため、せめて組織犯罪処罰法改正だけでもということらしいが、「無理が通れば道理が引っ込む」の諺どおりである。なお、本エントリーは、共謀罪導入自体の是非を論ずることは目的としていない。
 私が批判したいのは、もちろん、民主党案丸飲みは与党のメンツに関わるなどというくだらない理由からではなくて、民主党案に問題が大いにあるからである。共謀罪の創設は、国際組織犯罪防止条約の批准のための国内法整備が目的である。そして、同条約には、共謀罪の対象犯罪を(1)懲役4年以上の全ての犯罪とすること(2)国際性を要件としないことが明記されている。しかるに、民主党案はその両方に反して、(1)共謀罪の適用を国境を越えた組織犯罪集団が関与した行為に限定(2)対象を政府案の4年以上の懲役・禁固に当たる罪から「5年超」の犯罪に絞ることになっている。これでは、組織犯罪処罰法を改正して共謀罪を創設したとしても、国際組織犯罪防止条約に「違反する」ので締結できない可能性がある。こんなことは、言ってみれば戦後の一国平和主義と同じで、エゴイスティックと評されても文句はいえまい。そもそも、この点を根拠に与党は修正に応じなかったのであるにもかかわらずである。今まで批判してきた民主党案の通りに修正するのは全く筋が通らない話である。それこそ、自民党内にあるように、条約の批准的続きの段階で法律の再改正でもするしかなくなる。
 同条約は、既に121カ国が批准・締結しており、国際犯罪に対して国際社会が一致して取り組む体制が着々と構築されてきている。日本がもたつくことは、日本が「国際犯罪天国」となりうることに他ならない。そのことの重大性を認識すべきであって、政局沙汰は如何なものかと思う。まだ流動的な要素は残っているとは思うが、民主党案丸飲みには、個人的見解としては賛成しかねる。どうか、大局的見地からの議論をお願いしたいと思う。



(参考記事1)
[共謀罪、民主案全面受け入れ…与党、今国会成立を優先]
 自民、公明両党は1日、「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案の修正問題について、民主党の要求を全面的に受け入れる方針を決め、民主党側に伝えた。
 同日の衆院法務委員会理事会で与党側が「民主党が提出する修正案に賛成する。その代わり2日の委員会で採決させてほしい」と提案した。
 与野党の修正協議がこうちゃく状態に陥っている現状を打開して、同改正案を今国会で成立させるため、民主党側に全面的に譲歩したものだ。
 民主党内でも「与党提案に応じるべきだ」との声が広がっており、同改正案は成立する可能性が高まってきた。
 自民党の細田博之国会対策委員長は1日、衆院本会議場で民主党の渡部恒三国対委員長に会い、「民主党案を基本的に受け入れることにしたので、採決に応じてほしい」と打診した。与党は、その後開かれた衆院法務委員会理事会で正式に民主党案の受け入れを表明した。2日に委員会が開催されるが、民主党は採決に応じるかどうかについては「政府側の答弁を見極め判断したい」としている。
(読売新聞) - 6月1日23時59分更新

(参考記事2)
[共謀罪で新たな修正案 民主、取りまとめへ]
 「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法などの改正案をめぐり、与党が民主党の修正案を全面的に受け入れる方針に転換したことを受け、民主党は2日午前の法務部門会議役員会で新たな修正案をまとめ、同日午後の衆院法務委員会に提出する運びだ。
 これまで民主党の修正案を「国際組織犯罪防止条約に合致しない」としてきた政府、与党が、2日の委員会質疑で「納得できる答弁」をすれば、民主党も同日中の採決に応じる方向。ただ、小沢一郎代表は慎重に対応するよう指示している。
 民主党の新たな修正案は、4月に同党が提出した修正案に盛り込んだ(1)共謀罪の適用を国境を越えた組織犯罪集団が関与した行為に限定(2)対象を政府案の4年以上の懲役・禁固に当たる罪から「5年超」の犯罪に絞る-を柱に、共謀の定義を明確化することなどが内容となる見通し。
(共同通信) - 6月2日7時28分更新


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何か・・ねぇ・・ (PJ)
2006-06-02 17:27:55
聞いてたら、どっちもどっちの気がしてきました。

小泉さんは会期延長しないと言ってるようですが、

全部放り出すつもりなんでしょうか?
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PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-06-03 04:41:14
結局継続審議だそうですね。

こればっかりは、与党も弁護の余地がありません。「丸飲みにする」なんて言って政争の具にするから、組織犯罪防止という本旨が忘れられ、ますます反対派に「与党は危険なことを企んでいる」と言われるのでしょう。

重要法案が目白押しなのに「会期延長しない」というのも真意をはかりかねるところです。
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