モノや知識は豊富に与えられても、精神の砂漠に放り出され、人間の道を教わらぬ子らもいる。戦火に怯え、飢餓に泣く子らもいる。
そうした、世界のすべての子どもたちが、自ら価値を創造し、幸福を実現していくために、創価教育はある。
創価教育の父・牧口常三郎は、『創価教育学体系』の発刊にあたり、自身の思いを、「児童や生徒が修羅の巷に喘いで居る現代の悩みを、次代に持越させたくないと思ふと、心は狂せんばか . . . 本文を読む
初代会長・牧口常三郎の『創価教育学体系』の第一巻が発刊された一九三〇年(昭和五年)の十一月十八日は、「創価学会創立記念日」であるだけでなく、「創価教育原点の日」でもある。
山本伸一は、二〇〇八年(平成二十年)、この十一月十八日を記念して、世界六カ国に広がった創価幼稚園(日本・札幌、中国・香港、シンガポール、マレーシア、ブラジル、韓国)に、新たな指針を贈った。
「何があっても 負けない人が . . . 本文を読む
マレーシア創価幼稚園の、ある園児の母親は、子どもの問いに、驚きを覚えた。
「お母さん、地球が病気になったら、どうやって地球を守ってあげればいい?」
そして、母親は、幼稚園で、「地球も人間も同じ生命であり、すべてのものが、互いに関係し合って成り立っている」と、教えていることを知ったのだ。それは、世界市民教育の基礎と言えよう。そこには、創立者の山本伸一の哲学がある。
――人間は、自然の恩 . . . 本文を読む
一九九五年(同七年)四月には、マレーシア創価幼稚園の開園式が行われた。マレーシアも、多民族国家であり、同幼稚園も、世界市民の育成に力を注いできた。マレー語、中国語(北京語)、英語の三つの言語の学習が、カリキュラムに盛り込まれている。
園児が、各家庭で使っているのは、マレー語、中国語、英語、タミル語などである。しかも、中国語は、北京語、福建語、広東語などに分かれる。それだけに、意思の疎通、相互理 . . . 本文を読む
さらに、教員たちは、学んだことを使い、「人を喜ばせる」ことの大切さを知る教育をめざしていった。そこに、人間主義の教育があると考えたからだ。
たとえば、首飾りの作り方を覚えたら、「母の日」に首飾りをプレゼントする。母親は喜ぶ。そうした体験を積み重ねさせるなかで、「人が喜んでくれることを進んでする子ども」の育成をめざすのである。 . . . 本文を読む
幼稚園の起工式で、伸一は、万感の思いを込めて、「二十一世紀を担う世界の指導者を育成するため、私も全力を尽くして応援してまいります」とあいさつした。
そして、九二年(平成四年)の九月、三歳から五歳までの百七十人が、第一期生として入園し、香港創価幼稚園はスタートした。
同幼稚園のモットーは、日本の札幌創価幼稚園と同じく、「堅強(つよく) 正直(ただしく) 活撥(のびのびと)」である。
伸一 . . . 本文を読む
園児は、みんなで遊ぶようになると、遊具の奪い合いが始まる。しかし、教員たちは、すぐには止めない。トラブルは、子どもたちが成長していくチャンスだからだ。話し合いをさせるのである。 園児たちは、どうすれば、少ない遊具で、みんなが遊べるかを考える。そして、順番で使おうということになる。ルールづくりが始まるのだ。
教員は、園児の意見を整理しながら、そこに至るまで、忍耐強く待つ――。ある時、園児がイスを . . . 本文を読む
子どもは、お友だちと仲よくしようとすることで、人を思いやる心を育む。
左手足に障がいがある女の子がいた。負けず嫌いの性格で、みんなと一緒に、縄跳びにも挑戦した。しかし、うまくいかない。最初は、その様子を見て、笑う子どももいた。
すると、それでは、モットーの「ただしく」や、「三つの約束」の「お友だちと仲よく」とは違うという声が、子どもたちからあがった。
また、教員は、“自分が、その子の立 . . . 本文を読む
子どもは、自分のことは、自分でできるようになりたいと思っている。
入園当初、多くの園児が歓声をあげている時に、泣き出す子どもがいた。札幌創価幼稚園の教員たちは、それは、集団生活の第一歩を踏み出そうとする子どもの、自己主張の声であると、とらえた。
「なんで泣いているの?」
教員が聞いても、すぐに答えは返ってこない。なだめながら、根気強く、笑顔で尋ねる。
「泣かずに言ってごらん」
ようやく . . . 本文を読む
六月二十日、札幌創価幼稚園では、初の運動会が行われた。この日、幼稚園の敷地内に創価教育の父・牧口常三郎が揮毫した「教育」の文字を刻んだ石碑と、伸一が揮毫した「つよく ただしく のびのびと」の文字を刻んだモットーの石碑が除幕された。
幼稚園では、皆でこのモットーを唱和し、覚えるようにした。園児たちが、生活のなかで、困難なことに挑戦する「負けじ魂」を育み、善悪を見極め、明るく朗らかな人間性を培って . . . 本文を読む
「ほかに何か、要望があったら、なんでも言ってください。園児たちのために、また、教職員の皆さんのために、私にできることは、なんでもしたいんです。と言っても、実際には、できないことの方が多いかもしれません。しかし、それが、私の心であることを知ってください」
皆、静かに頷いた。入園式前日から今日までの、伸一の行動を見ていて、誰もが、その彼の心を、痛いほど感じていたのである。園長の館野光三は思った。 . . . 本文を読む
「では、質問します。皆さんの担任の先生は、なんという先生ですか」
「こんどうせんせいでーす!」
皆が一斉に答えた。
「はい、そうです。近藤先生は、最高の先生なんですよ。よかったね。皆さんは幸せなんです。先生の言うことを、よく聞いてください。私も、皆さんが立派に成長するまで、ずっと見守っていきます」
伸一は、年長の三つの保育室でも、同じように担任の教師を誉め讃えた。園児が先生を好きにな . . . 本文を読む
「にぎやかだね。でも、子どもたちが、うるさいぐらい元気なのは、すばらしいことなんだよ。それによって、周りが生命力をもらえるんだ。輪陀王の故事のようなものだ」
御書によると、輪陀王は、白馬のいななきを聞いて、威光勢力を増す。その白馬は、白鳥の姿を見て、いなないたという。
「元気な子どもの声を聞けば、家族も、地域の人たちも、“かわいいな。この子たちを守るために頑張ろう”と元気になる。それが、社会 . . . 本文を読む