向上を欲する進取の精神は、対話を求める。 . . . 本文を読む
蘇歩青は著名な数学者であり、この日も数学や教育をめぐっての語らいとなった。そのなかで、「数学は難しいといわれるが、易しく教えることはできるか」との質問に対する学長の答えが、伸一の印象に残った。
「何事も、『浅い』から『深い』へ、『小』から『大』へ、『易しいもの』から『難しいもの』へという過程があります。無理をさせずに、その一つ一つの段階を丹念に教え、習得させていくことで、可能になります」
さ . . . 本文を読む
彼は、テーブルの隅に座っていた、県男子部長の飯坂貞吉に声をかけた。そして、飯坂から、若くして両親を亡くしていることや、経済的な事情から大学進学を断念せざるを得なかったことなどを聞くと、伸一は言った。
「君は努力で勝利した人だね。学会は、実力主義であり、信心の世界ですから、学歴は関係ありません。しかし、学力は必要です。忙しくとも読書に励み、あらゆることを勉強し抜いていくんです。
社会の一流の人 . . . 本文を読む
「研究者のなかには、ともすると、独り善がりになり、自分が、いちばん偉いように思ってしまう人がいる。すると、研究面でも、視野が狭くなり、伸びていかなくなってしまうものです。すべての人から学んでいこうという、謙虚な向上心が大事なんです。
特に、信心の世界にあっては、学会の組織から孤立してしまったり、求道心を失うようなことがあれば、行き詰まってしまいます。 学会の本流に身を置き、先輩とよく相談しなが . . . 本文を読む
「学問は、宇宙の真理の探究であり、そこには、王道はない。それゆえに、学問の道には、覚悟と努力、そして、強靱な探究心が必要とされます。“なんとかなるだろう”といった安易な気持ちでは、決して達成されるものではないことを知っていただきたい。
大学を卒業したといっても、ただ大卒の資格を得ただけで、学問的にも、人間的にも、なんの成長もなければ、大学に学んだ意味はありません。それは虚像にすぎない。
そ . . . 本文を読む
「大変ななか、卒業できれば、皆さんも幸せであろうし、私も一番嬉しい。しかし、卒業だけに、とらわれる必要はありません。この創価大学通信教育部で学んだということは、自分自身の胸中に、輝く青春、輝く勉学、輝く努力の歴史を刻み、輝く先覚者としての道を歩んだということであります。
その誇りをもつならば、学んだ事柄は昇華され、偉大な人生の価値を創造することを知っていただきたいし、自信をもっていただきたい。
. . . 本文を読む
「私も勉強します。これから、さらに、世界の学者や指導者と、人類の未来のために、対談を重ねていきます。学ぼう。学びに学んでいこうよ」
伸一の言葉に、通教生たちは粛然とした。その炎のような向学心に、感嘆したのだ。
札幌農学校で初代教頭として教育に当たったクラーク博士は、農学校を去る時、見送りに来た学生たちに、「Boys, be ambitious」(青年よ、大志を抱け)との、有名な言葉を残してい . . . 本文を読む
「わかった。では、名前をつけさせてもらいます。『学光』というのはどうだろうか」
即座に名がつけられた。伸一は、前々から創大の通教生の出発にあたって、何か言葉を贈りたいと、考え続けていたのだ。
事務局長は、「がっこう」という発音から、伸一が意図した文字が浮かばず、「学校」だと思い、怪訝そうに尋ねた。
「はあ、『学校』ですか。確かに創価大学は学校ではありますが……」
伸一は、思わず噴き . . . 本文を読む
よく伸一は、学会の高等部員たちと会うと、こう言って励ましてきた。
「高等部員はできるだけ大学に進学するべきです。家庭の経済が許さない時は、自分で働いて夜学へ行けばよい。あるいは通信教育でもいい」
大事なのは、学歴ではない。学び抜く心である。学ばずは卑しである。
伸一は、どんな環境にあっても、勉強し続ける志をもってほしかったのだ。そのためにも、そうした人たちが学ぶことのできる、通信教育部の設 . . . 本文を読む
「まずもって向学の走者は、自己を制覇し、試練の障壁に信念のバネで挑み、生涯の自己錬磨の飛躍台にされんことを念願するものであります。 人間の真価は、ひとたび険難の峰にさしかかった時に、初めて明らかになるといわれております。前途に立ちはだかる困難をもって、挫折を自己正当化する手だてとするか、成長への好機と意義づけて進んでいくかで、将来の行路を決定づけてしまうといっても過言ではない。その選択は、ほかなら . . . 本文を読む
「仕事でも人生でも、いろいろあるものです。私もそういう時代をくぐり抜け、いろんなことで板挟みにもなってきました。今は、降りかかった火の粉みたいに、“なんでこんなことを”と思うかもしれないけれども、すべて、人生のかけがえのない体験だったと、後々になって思い起こされてきますよ」 . . . 本文を読む
松下幸之助にも、仕事のことを考え、悩んで、眠れないことは何度もあったという。
悪いことをする従業員がいて、悩み抜いた時もあった。しかし、そのなかで、現実を見すえ、「自分が、いい人だけを使って仕事をやるというのは虫がよすぎる」と気づく。
すると、気分も楽になり、人を許す気持ちにもなり、以来、大胆に人を使えるようになったというのである。
「そういう悩みから、いわば一つの悟りをえたわけで、今となっ . . . 本文を読む