烏有亭日乗

烏の塒に帰るを眺めつつ気ままに綴る読書日記

慣習と伝統

2006-11-14 20:32:42 | ことばの標本箱

 慣習や伝統は、人々がそれに習熟し実践することができるようになって初めて知識となりうる性格のものである。「慣習」という言葉は英語ではふつうconventionpracticeであるが、前者は約束事が次第に慣例化して慣習となったというニュアンスをもつのに対し、後者は人々があることを実行し実践していくうちに慣例化していったという意味を含んでいる。だから知識としての慣習を指示するのは、コンヴェンションよりはむしろプラクティスのほうだと言っていいかもしれない。

『ケインズとハイエク』(間宮陽介著、ちくま学芸文庫)