烏有亭日乗

烏の塒に帰るを眺めつつ気ままに綴る読書日記

誤りやすさに対する無自覚

2007-03-29 07:17:44 | ことばの標本箱

 人類の良識という観点ではじつに不幸なことだが、人間が間違いをおかしやすい事実は一般論としてはつねに認識されているが、具体的な問題を扱う際には、はるかに軽視されている。誰でも自分が間違える可能性があることは十分知っているのだが、自分が間違える場合に備えておく必要があるとは、ほとんど誰も考えないし、どのような意見も間違いである可能性があるとは認めても、自分が確実だと感じている意見がその一例かもしれないとは、ほとんど誰も考えないのである。

J.S.ミル『自由論』