業務日誌

許せないヤツがいる 許せないことがある
だから倒れても倒れても立ち上がる立ち上がる
あいつの名はケアマネージャー

認定調査 その1 Part2

2006年05月23日 | 業務日誌

さて、この日に伺ったのは、昔ながらの商店街の中のお宅。
現要介護5の78歳の母親Sさんと、未婚の姉妹2人の3人同居の世帯。

話が反れるが、都会に暮らす人々の住居はホントにウナギの寝床。ウチの近所なんか、10歩ぶんの距離に玄関が3つ並んでいる。おっと、いわゆる長屋じゃなくて、一軒一軒レッキとした持ち家。
もといたイナカのように立派な4枚開きの玄関を持つ家など、ここじゃ悪徳医師かヤ○ザしかあり得ない、それが都会の住宅事情。おカネがあっても土地がない。ウチの法人の院長ですらノーマルな1枚扉の玄関だし。

調査の対象者Sさんも、そんなウナギの仲間(失礼)。
1階の大きな掃き出し窓の外は隣家の壁。その隙間10センチ。
玄関脇、ほとんど陽の光が入らない居室で、Sさんは寝てた。
主介護者は長女で、2年前に母親であるSさんが骨折して以来自宅で介護してきたとのこと。その退院のおり、1度うちのひがしケアプランを通じて要介護5の認定を受け、サービスの利用も考えたのだが、訪問入浴を依頼したところ先方の業者から断られたと言われるのだった。
業者がサービス拒否??そんなことってあるのか???
とニチイさんと顔を見合わせた私だが、その疑問は調査修了後の退出時、あらためてSさん宅の玄関を見たとき氷解。
この玄関から訪問入浴の浴槽を入れるのムリっぽい。
ひと一人通るのが精一杯。あ、なるほどね。

えと、話がスッ飛びました、ごめんなさい。

驚いたのは、Sさんの長女氏にまったくと言っていいほど介護保険の知識がないこと。要介護重度の高齢者と同居する世帯の介護者として、これは逆にすごいことだ。
まず、この調査の依頼票をもらったとき、提出期限まで1週間しかなかったので(通常2週間)聞いたところ、この長女氏は更新の申請の仕方や申請先をまったく知らず、申し出忘れていたらしい。以前訪問入浴に断られてからは何のサービス利用も考えず、担当となるはずだったケアマネージャーの訪問も辞退(拒否?)。うちの居介からもとうに忘れ去られ、初回の認定をしたケアマネは退職していた(のに、よくウチの居介に調査依頼が回ってきたもんだ)。
保険を利用することも知らないので、高価な介護用ベッドも車椅子も自費で購入していたし、リハビリといえば知り合いの整体師が週に1度マッサージに来るだけだったし、当然介護タクシーも知らないので通院受診は往診を依頼。Sさんはこの2年というもの入浴したことがなくたまに長女氏に清拭してもらうだけ。ポータブルトイレさえ使わず即オムツ。あーあ。
退院後、安静にしていた時期からそのままずっと安静にし続け、完全な寝たきりになって(して)しまったのだった。
どこにも出かけず、少しも動かず、そして定説通り認知症になり、今では長女以外の人間は判別出来ず、「食べる」「食べない」以外は意思表示もしなくなった。おまけに2年間ずっと昼夜逆転。夜明けとともに眠り、月の光に目を覚ます日々。

本意でないにしろ、結果的にSさんを寝たきりにしてしまった張本人の長女氏(でもホントは、たとえサービスの利用がなくても当時のケアマネがもすこし相談にのっていれば、往診していた医師が適切な助言をしていれば、民生委員がもっと熱心に掘っていれば、Sさんはきっと寝たきりにはならなかったかも知れないので、長女氏だけに責任を負わすのは間違いなんだね)は、ここにきて初めて介護疲れを覚え始めたらしく、訪問入浴がダメならデイサービスでの入浴があると聞いたのですがと切り出した。
母親思いだが無知な彼女に軽い怒りを感じながらも、私とニチイさんは非審判的態度で「デイサービスは、高齢者を寝たきりにさせないために存在するサービスでして、既に寝たきりになってしまった方をストレッチャーなどでお連れすることは出来ませんので」と説明。2年前はともかく、今は訪問入浴用の浴槽も進歩発達してますので、ご自宅の玄関から入れることが出来るかも知れませんし…それがダメでも住宅改修して、訪問看護での入浴介助という手も…云々。認定調査なのに、介護者教室になってしまった。

とにかく、認定結果が出たらまた是非ご相談下さいと言い置いて、1時間近くに及ぶ認定調査(+介護相談)は終了。
帰り道の車中、なんとなくやるせなく重苦しい空気の中でふと「そういや訪問介護での入浴介助ってのもありましたね」と言った私に、ニチイさんから返ってきた返事は
「ヘルパーさんが怖くてそんなこと頼めないよ」
というもので、その言葉にまた驚いた私だったが、その話はいずれまた。