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国難打破から、いざ、未来創造へ

震災の救助活動で、自衛隊に対する世論が変化

2011年04月17日 | 災害・事故
2011/04/15 ウォール・ストリート・ジャーナル

 日本の安保政策が戦後ずっと抱えてきた葛藤は、自衛隊の正当性についてだ。憲法上の戦力不保持規定により、この民主的な経済大国は、半世紀以上もの間、世界で果たす役割を諸外国に比べはるかに小さくとどめることに甘んじてきた。これを変えようとすれば、戦争で傷つき、軍国主義と聞いただけで拒絶反応を示す国民の容赦ない抵抗に遭うのが常だった。

 しかし今、震災後の自衛隊の勇敢で不可欠な行動は、日本と軍隊の関係を永久に変えた可能性がある。この震災で、自衛隊に対する国民の新たな受容が始まり、海外で日本の利益を守る軍事的役割を正常化するために、日本政府が選択肢を変える可能性がある。

 米国の草案を元に作成、1947年に施行された日本国憲法の第9条は、日本を再び侵略戦争に走らせないことが目的だった。第9条は、日本国民は、国際紛争を解決する手段としては永久に戦争を放棄するとしたうえで、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と謳っている。しかし、1950年の警察予備隊の創設後、組織再編が急速に進み、自衛隊が発足。今日、25万人で構成される自衛隊の年間予算は約400億ドルで、世界でも有数の近代的な軍隊だ。

 日本国民は、自衛隊に対して、矛盾に満ちた感情を抱き続けてきた。これは、第二次世界大戦中に日本軍が行った残虐行為について国民的議論がなされなかったことと、自衛隊の海外派遣に憲法上の制約があるためだ。こうした状況を政治的右派は国家の不名誉と恥じ、左派は、新たな侵略を許さないために軍事的リーダーや政治家に自由を与えてはならぬと固く信じている。二大政党である自民党と民主党といえば、この問題について近づきたくないというのが本音だ。

 とはいえ、政治家が、自衛隊の海外派遣に以前より積極的な態度を取っていることに示されるように、自衛隊に対する態度は変わりつつある。1991年、日本政府は、イラクのサダム・フセイン大統領のクウェート侵攻を受けて結成された米国主導の多国籍軍に自衛隊を派遣せず、軍事介入の代わりに資金協力で済まそうとする「札束外交」だと国際社会から嘲笑と非難を浴びた。しかし、これとは対照的に、2001年、小泉純一郎首相は、ジョージ・W・ブッシュ大統領によるアフガニスタンの軍事作戦をすぐに支持した。

 日本の陸上・航空自衛隊は、アフガニスタンの復興支援活動に貢献、海上自衛隊はインド洋での同盟国艦艇への給油活動を8年にわたり行った。アフリカ東部ソマリア沖などの地域へは、海賊対策として、護衛艦を2年以上派遣している。ジブチ共和国には、日本にとって戦後初となる海外の海自基地がまもなく建設される。こうした活動のうち、幾つかは論議を呼んだものの、傾向としては明白だ。

 また、菅直人首相は最近、新防衛大綱を発表。大綱では、日本の安全保障活動を南西諸島など島しょ部にシフトすることが示された。10年前と比べ、自衛官募集のポスターは目立ちやすくなっている。この10年の積み重ねのおかげで、今の自衛官が自信をより深めていることは疑いようがない。

 こうした新たな姿勢の背景には、中国の軍備増強と、中国が東シナ海で取った行動などがある。昨年、中国のヘリコプターが日本の海上自衛隊護衛艦に接近したと報じられ、中国が日本の反応をうかがっているとの懸念が浮上した。9月には尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件が発生、中国の軍隊が直接関わった訳ではないものの、大国としての自信を深めた同国が、危機を引き起こそうとしているとの見方がさらに強まった。

 それでもなお、軍隊に対する人々の懸念は根強く、日本の自衛隊は、つい先月まで、社会的に受け入れられている、といった程度の存在だった。そして、先月の震災。これが、世論の動向を変化させる可能性がある。

 破壊的な地震と津波が起きて数時間以内に、自衛隊は救助・支援活動を開始した。総勢10万人以上の隊員が東北沿岸の被災地に入った。これは、日本の自衛官の40%にあたる。物資を運び、がれきを撤去し、被災者を避難させる隊員の姿が、新聞とテレビの報道に溢れた。

 自衛隊は、米軍と連携し、不眠不休で働いたようだ。数千人の米軍兵士も即座に行動を開始、空母ロナルド・レーガンの艦載ヘリや米空軍の輸送機で数千トンもの物資を運んだ。自衛官と米海兵隊は、現場で協力して支援活動を行った。

 こうしたことを受けて、日本国民は、おそらく戦後初めて、民主国家である日本の一部として自衛隊の重要性を認識した。これは、帝国陸軍・海軍による日清・日露戦争を支持するのとはまったく意味が異なる。これは、文民が率いる奉仕部隊――国内では民主的秩序の責務を果たし、海外では他の民主的勢力と協調する部隊――を支持することなのだ。

 こうしたことを受けて、日本の政治指導者は、自衛隊に大きな役割を負わせることを避けてきた政策について見直すだろう。米国をはじめ、アジアの多くの国は、地域の安定維持のために日本がより大きな責任を引き受けることを望んできた。自衛隊の震災での見事な対応は、プロフェッショナルで責任ある軍隊を日本は持っている、ということを国民に示した。今度は、日本のリーダーが、プロフェッショナルで責任あるやり方で、その軍隊を海外に派遣する意欲を示す必要がある。

(マイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長)

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