学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

果てしない封書詰め作業

2010-07-10 19:05:30 | 仕事
今日は暑かったものの、それほど湿気がなく、この時期にしては過しやすい一日でした。今は涼しい北風が吹いていて、とても気持ちがいいです。

今日は展覧会の案内を発送するための封書詰め作業。当館では約500通の発送をしています。ひたすらパンフレットをまとめて、封書に入れてゆく。そして糊付けをする。この糊付けが曲者で、やはり力を使いますから、体がかなり熱くなる。ただでさえ暑いのに、これでまた不愉快になる(笑)もう何年もしていることですから慣れた仕事ではありますが、夏の時期に作業をするのは大変です。

明日は今日の続き…どうか過しやすい一日であることを祈ります。

英語の学び方

2010-07-09 21:02:45 | その他
私は小説を読むのが好きですが、英文学を原書で読むのが夢です。私は学芸員ですが、恥ずかしながら語学が堪能ではなく、今は毎日勉強中の身。私は専門が美術ですから、英語の勉強には英文の画集(あるいは論文)を読むのが最も飲み込みやすい。けれども、飲み込みやすいとはいえ、やっぱりもっと早く会得したいという欲が出てきます。そこで生前、語学が堪能だった人の伝記を紐解いてご紹介しましょう。

まずは福沢諭吉。彼の著書『福翁自伝』には福沢がいかにしてオランダ語と英語を学んだか、勉強方法が載っています。福沢の方法は2つ。「素読」と「会読」です。「素読」は声を出して文章を読むこと、「会読」は2人以上で文章を読むことです。つまり声に出して、文章を頭に叩き込んでいったわけですね。これが主となった。そのほかには、筆写をしたり、辞書(字引)をひいてして英文を学んでいたようです。現在の我々の学び方とあまり変わらないですね。

では、もう1人。19世紀の考古学者シュリーマンです。アテネのトロヤ文明、ミケネ文明の遺跡を発見し発掘した著名な学者です。彼の勉強法は引用してみましょう。

「非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、毎日1時間あてること、つねに興味ある対象について作文を書くこと、これを教師の指導によって訂正すること、前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦することである。」(『古代への情熱』村田数之亮訳 岩波文庫 1954年)

この方法で、生涯で13ヶ国語をマスターしたといいます。

福沢にしろ、シュリーマンにしろ、音読を第一にあげているところは興味深いですね。やはり口に出して、耳で覚える方法は脳にインプットするうえで効果的なようです。あとはやはり継続性でしょうか。語学ほど継続して力のつくものはないそうです。これは私の学生時代の英語の先生が言っていました(笑)

音読をして、毎日継続して勉強する。語学はすぐに身に付くものではありませんが、辛抱強く学んでいきたいものですね。

規則ある生活から生まれるもの

2010-07-07 19:33:29 | その他
書店へ足を運んだら、緑色の文字で「村上春樹 ロングインタビュー」と題された雑誌を見つけたので、すぐに購入しました。雑誌名は『考える人』(季刊誌 2010年夏号 新潮社)です。小説家の村上春樹さんが3日間にわたる長いインタビューに答えていらっしゃいます。インタビューの内容は、村上春樹さんのデビュー作『風の歌を聴け』から『1Q84』までの小説の流れや試み、小説家を目指した動機、少年、青年時代によく読んだ本、ご自身の翻訳についてなど多方面に渡ります。なかでも私がおやっと思ったのは、村上春樹さんが規則正しい生活を過していらっしゃること。

私が高校3年生のとき、大学受験に備えるため夏合宿なるものへ参加しました。1週間泊り込みで、ひたすら勉強を続けるというもの。午前8時30分から午後9時まで缶詰状態。時間だけみるとなんとも大変な合宿だったわけですが、むろん合宿のスケジュールがきっちり決まっていましたから、規則正しい生活のなかで勉強をすることになったわけです。すると、家でだらだら暑さに文句を言いながらやるよりは、遥かに効率がいいことに気付きました。規則正しい生活は、人間の生活を活性化させるようです。けれども、そうわかっていながら、私は合宿を終えて家に帰ると、だらだらの夏休みを過してしまった(笑)

村上春樹さんの膨大な仕事、規則正しい生活のなかから生まれてきたのですね。ふらふらした生活をおくる私の背筋もピンと伸びるようなロングインタビュー。ぜひ、オススメの雑誌です。


絵を見る楽しみ

2010-07-06 22:00:04 | その他
みなさんは、美術館や画廊などでどのように絵を見て楽しんでいますか?この絵は好きか嫌いか、この絵にはどんな意味があるのだろうか、絵に込めた作者の想いはなにか、どんな絵具を使って描いているのか。あるいはどのくらいの値がするものなのだろうか、と考える方もいらっしゃると思います。絵の楽しみ方は人それぞれ。今日のブログでは絵の楽しみ方をいくつかご紹介します。

私の場合、美術館や画廊に行く前に、展示してある絵の傾向や作者の生涯を簡単に予習してから見ます。ちょっと固すぎるかもしれません(笑)ただ、事前に調べていった場合と、そうでない場合の、絵を見たときの関心の度合いはかなり違います。学校の授業を予習した場合としなかった場合とでの理解度の差と似たようなものではないでしょうか。

実際に絵を見ると、私の頭の中にある画集が猛スピードで動いて(ときには無理やり動かして)、この絵と類似している絵を見たことがないかどうか考えます。記憶の中にある絵と目の前にある絵を比較して見る方法です。世の中には孤立した1点の絵はない。全ては大きな木から伸びる枝のようにつながっていて、過去現在がお互い共鳴しあって絵は生まれている、と私は考えています。この絵は誰の影響を受けているのか、あるいは誰に影響を与えたのか、そうしたことを考えながら、私は絵を見て楽しんでいます。

美術家の森村泰昌さんは著書『超・美術鑑賞術』(ちくま学芸文庫)のなかで、世相(または生活)と美術を結びつけて考えてみる、あるいは「脳の初期化」として固定観念に捉われずまっさらな頭の中で絵を見てみる、などを述べていらっしゃいます。世相と美術を結びつける、というやり方はとても面白いですね。何百年前に描かれた絵を、現在のカメラ(視点)で捉えるとどうみえるのか、古い絵を古いまま見ずに新しく更新していく。森村氏は「レンブラントとプリクラ」、「ゴヤと教育問題」などの特異なテーマで現代の社会や自分自身と絵を結びつけることを提案しています。(本のなかではもっと簡単に楽しく触れられています)

絵の見方は人それぞれで、決まった見方はありませんが、さまざまな視点から楽しんで見られることが絵の面白さの1つなのかもしれませんね。

イタロ・カルヴィーノ『木のぼり男爵』

2010-07-05 21:21:26 | 読書感想
すっかりご無沙汰をしてしまいました。ここ数日は心持が良くなくて、仕事はしていたものの、帰宅してからは心身ともに休めていました。毎日じめじめする日が続きますね。心持が良くないのは、時期の問題があったのかもしれません。今日は少しずつ読み進めていた本が読み終わりましたので、読書感想です。

私が近頃良く読んでいるイタロ・カルヴィーノの『木のぼり男爵』です。みなさんは子どもの時に両親や学校の先生に反発して、背を向けるような態度を取りませんでしたか?私は両親とケンカすると、今後一切口を利かない!と誓いを立てたものでした。ところが、その日の夕食になって家族みんなが揃うと、そんな誓いはどこへやら。家族みんなで楽しい会話をしながら夕食を食べたものです(笑)『木のぼり男爵』は、家族間の不調和から、かたつむり料理を食べるのを拒否し、木の上で生涯を送った男のお話です。

木の上で生涯を過す、この奇妙な物語の主人公はコジモ。コジモの弟が語り手となって、物語は進みます。どこまでも広がる木々のなかをコジモは自由に動き回り、自分で狩りをしたり、家族から食事を分けてもらいながら生活を続けます。木の上から、という世間とは一線を画した場所で生活をすることで、様々な経験を積み重ね見聞も広がっていきますが、物語が進むにつれて、個性的な登場人物たちは舞台を降りるように少なくなっていきます。喜劇でもあり、悲劇でもある。特に終盤になると、これまで理性的であったコジモがだんだん野性的に変わってくるところが悲しいところです。それも「一線を画した」ゆえの運命だったのかもしれませんが…。

久しぶりに良い小説を読めました。幸せな気持ちでいっぱい。『木のぼり男爵』は米川良夫氏の翻訳によって、まるで童話のように楽しむことができます。これまで読んだイタロ・カルヴィーノの小説のなかでも、特にオススメの1冊です。


●『木のぼり男爵』イタロ・カルヴィーノ著 米川良夫著 1995年 白水社


無題

2010-07-02 18:10:06 | 仕事
昨日から7月が始まりました。時が経つのは本当に早いものです。今日は朝から良い天気でしたが、今は北風が強まり、ときおり雷もとどろいて、どうも不安定な天気になってきました。近年、短い時間に大雨が降ることが多いので、そうならないことを祈りたいものです。

ワールドカップ、日本は残念ながら敗れてしまいましたね…。残念ですが、未来に希望を持たせてくれる健闘だったと思います。4年後、楽しみにしたいですね!

明日は休み。ここのところ、おろそかになっていた英語の勉強をする予定です。天気も悪くなりそうですし…。今夜はゴーヤチャンプルを食べて、ゆっくり休みたいと思います。