学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

絵を見る楽しみ

2010-07-06 22:00:04 | その他
みなさんは、美術館や画廊などでどのように絵を見て楽しんでいますか?この絵は好きか嫌いか、この絵にはどんな意味があるのだろうか、絵に込めた作者の想いはなにか、どんな絵具を使って描いているのか。あるいはどのくらいの値がするものなのだろうか、と考える方もいらっしゃると思います。絵の楽しみ方は人それぞれ。今日のブログでは絵の楽しみ方をいくつかご紹介します。

私の場合、美術館や画廊に行く前に、展示してある絵の傾向や作者の生涯を簡単に予習してから見ます。ちょっと固すぎるかもしれません(笑)ただ、事前に調べていった場合と、そうでない場合の、絵を見たときの関心の度合いはかなり違います。学校の授業を予習した場合としなかった場合とでの理解度の差と似たようなものではないでしょうか。

実際に絵を見ると、私の頭の中にある画集が猛スピードで動いて(ときには無理やり動かして)、この絵と類似している絵を見たことがないかどうか考えます。記憶の中にある絵と目の前にある絵を比較して見る方法です。世の中には孤立した1点の絵はない。全ては大きな木から伸びる枝のようにつながっていて、過去現在がお互い共鳴しあって絵は生まれている、と私は考えています。この絵は誰の影響を受けているのか、あるいは誰に影響を与えたのか、そうしたことを考えながら、私は絵を見て楽しんでいます。

美術家の森村泰昌さんは著書『超・美術鑑賞術』(ちくま学芸文庫)のなかで、世相(または生活)と美術を結びつけて考えてみる、あるいは「脳の初期化」として固定観念に捉われずまっさらな頭の中で絵を見てみる、などを述べていらっしゃいます。世相と美術を結びつける、というやり方はとても面白いですね。何百年前に描かれた絵を、現在のカメラ(視点)で捉えるとどうみえるのか、古い絵を古いまま見ずに新しく更新していく。森村氏は「レンブラントとプリクラ」、「ゴヤと教育問題」などの特異なテーマで現代の社会や自分自身と絵を結びつけることを提案しています。(本のなかではもっと簡単に楽しく触れられています)

絵の見方は人それぞれで、決まった見方はありませんが、さまざまな視点から楽しんで見られることが絵の面白さの1つなのかもしれませんね。
コメント (2)
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