学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

安村敏信氏『美術館商売』

2009-09-05 21:04:45 | 読書感想
書店の美術コーナーでは、概論や画集がたくさん並んでいます。なかでも最新刊を見て廻ると、今、美術の中でもどういったことに関心が持たれ、注目されているのかがわかります。

さて、私はこまめに美術コーナーへ足を運んでいますが、意外に少ないのが美術館運営についての書籍。これは、一般の方よりもむしろ現場の学芸員などをターゲットにしているためでしょう。学芸員といえば企画展示、のイメージがありますが、昨今では美術館の運営についても、しっかりと取り組む時代になっています。そう、館長だけが運営を考えるのではなく、学芸員一人一人が運営について意識する。そこでご紹介したいのが板橋区立美術館館長である安村敏信氏の『美術館商売』です。

安村氏が板橋区立美術館で実践されてきたこと。例えば魅力ある展覧会のネーミング、展示におけるディスプレイのあり方、キャプション表示、作品の高さなど実務的なことのほか、グッズの売り方、ボランティア活動、学校との連携まで、幅広く紹介されています。私は実際に学芸員として働いていますが、美術館や学芸員がどうあるべきか(きわめて実践的な)現場サイドの本がほとんど無いように思いました。ですから、私はこの本を教科書としていつも手元に置いています。

学芸員ではない方が読まれても、美術館の違う一面がご覧いただけますので、これまでにもまして、より美術館が好きになることと思います。そして、この本を読みましたら、ぜひ板橋区立美術館へ行かれることをオススメします。生きた知識になること間違いなしです。

●『美術館商売』安村敏信著 勉誠出版 2004年


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