学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

長沢芦雪《虎図襖》

2009-11-01 21:24:33 | その他
江戸中期の画家に長沢芦雪(1754~1799)が居ます。円山応挙の門下生で、京で活躍。応挙の代役を勤めるほどの画力がある一方で、性格は子どものような遊び心を持った人だったようです。ところが、過ぎたるは及ばざるが如し。あるときは、師の応挙をからかうようなことをしてしまい、一度破門を言い渡されたこともあったとか…。でも、彼らしいと言えば彼らしいのかもしれません。

長沢芦雪の代表作が《虎図襖》。読んで字の如く、襖(ふすま)に書いた虎の図ですね。虎と思えないほどかわいい(笑)。虎図というと牙をむき出しにし、爪を立てて、襲い掛かるような強さを描くのが一般的なわけですが、これは一味違います。「猫を思わせる無邪気さが感じられる」とは美術史研究家辻惟雄氏。襖4枚ですから迫力はあるのでしょうが、どこか遊び心が感じられる1点です。

この絵に限らず、長沢芦雪は動物のかわいらしい表情をいくつか描いています。私が見たなかでは、平成18年に東京国立博物館で開催された「プライスコレクション若冲と江戸絵画」展に出品された《猛虎図》、《白象黒牛図屏風》(牛の下にちょこんと座っている犬がまたかわいい)、同じく犬では千葉市美術館所蔵《花鳥蟲獣図巻》など。

長沢芦雪のような自由でほのぼのとした画風、私はとても好きです。もちろん、長沢芦雪の描いた作品にはおどろおどろしいものもあるのですが、そうしたものも含めて。なかなか長沢芦雪の絵を間近で見る機会がないのが残念ですが、また機会があれば、じっくり見て楽しみたいと思っています。

長沢芦雪について、詳しくお知りになりたい方は次の書籍がオススメです。言わずもがな、先ほどご紹介した辻惟雄氏の名著です。

●辻惟雄『奇想の系譜』ちくま学芸文庫 2004年

最新の画像もっと見る

コメントを投稿