学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

『十六夜日記』

2011-07-22 15:27:55 | 読書感想
今日は仕事がお休みです。台風が去ったあとの涼しさで、昨日、今日と過ごしやすい日が続いています。何だか秋のような感じもして、苦しかったあの暑さが多少恋しくもなる。おそらく、あと数日で今までの暑さが戻り猛暑となるのでしょうが、そしたら今の涼しさがきっと恋しくなるはず。私の気持ちも随分いい加減なものです(笑)

鎌倉時代の日記『十六夜日記』を読みました。これは同時代の女流歌人阿仏尼が書いた東海道の旅日記。

私は古典を好んで読みますが、完璧に内容が分かるほどではありません。『十六夜日記』の旅のきっかけがよく分かりませんでした。(心の悩みから旅を決意する?)ただ、どうも『土佐日記』や『更級日記』と違って、国司の転地などの関わりはなさそうなので、自発的な旅であるようです。京から逆に鎌倉を目指す。『更級日記』とは逆方向への旅になるわけですね。

作者の阿仏尼は、歌人というだけあって、土地の景観は和歌で詠まれます。和歌で詠まれると、作者の心情と土地の景観が組み合わさって、情緒豊かな印象が伝わります。また、自発的な旅のせいなのか、道中ではあまり京を懐かしがるような和歌は見当たらないことも、少し気付いた点として挙げておきます。

無事、鎌倉に到着して、阿仏尼はそこに住み始めたようです。

「浦ちかき山もとにて風いとあらし。山寺のかたはらなれば、のどかに、すごくて、浪のおと、松の風たえず。」

阿仏尼は海の近くに住んだようですね。ここでは和歌のやり取りが目立ち、少しばかり京を懐かしむ気持ちも出てきています。


「故郷は遠きにありて思うもの」

これは室生犀星の詩の一部ではありますが、そうした心は昔から変わらぬようです。


『更級日記』よりも『十六夜日記』は詠みやすいものです。鎌倉時代の東海道を旅したい方はぜひ。
コメント
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