学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』

2010-06-26 20:48:09 | 読書感想
朝から天気の悪かったものの、さして湿度も無く、過しやすい日でした。今はぱらぱらと雨が降り出しています。起床すると、どうも右足が痛くてしょうがなく、ほっておけばそのうち治ると思いきや、未だに足に痛み(というよりもひどい疲労感)が走ります。明日には直ってくれればいいのだけれど。

イタリアの国民作家イタロ・カルヴィーノ(1923~1985)の『不在の騎士』を読みました。なんとあらすじを紹介したらいいのか難しいところですが、騎士アジルールフォは「存在するけれども存在しない」騎士。まるで謎かけですね(笑)彼は配下のグルドゥルー(こちらは自分が存在していることに自分で気がつかない人)ととも、自らの潔白を晴らしに旅に出るというもの。ただこの物語は、修道尼テオドーラによって作られた物語。つまり小説のなかに、また別の書き手がいて、彼女が物語を進行させるという仕掛け。しかも彼女の筆は、クライマックスに差し掛かると暴走してしまい…。

私は2度、読み直しをしました。2度目に読むと、小説のところどころにユーモアがちりばめられていることがわかります。今まで気がつかなかった足元の小石に気がついたような感覚でしょうか。この小説は「存在」をテーマにしていますが、そこを考えだすときりがなく、どうも難しい話になってしまうので、私は物語そのままに楽しみました。なかなか面白い小説です。特に後半部分。クライマックスといえば、物語のなかで最も力の入れどころなのに、どんどん突っ走ってゆく(笑)

イタロ・カルヴィーノは『見えない都市』が代表作のようですが、短編も楽しく読むことができました。

●『不在の騎士』イタロ・カルヴィーノ著 米川良夫訳 河出文庫 2005年




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