学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ジョージ・オーウェル『1984年』

2010-06-22 20:09:01 | 読書感想
今日も暑い一日でした。夜になると、まだ涼しい風が来て快適なのですが…熱帯夜の出現だけは避けたいものです(泣)

ジョージ・オーウェルの代表作『1984年』が読み終わりました。のちに来るであろう管理社会を風刺した小説です。以前ご紹介した『動物農場』をもっとリアルに、人間を大きくからめて描いたところが特徴でしょう。街のいたるところにテレスクリーン(政府の主張を延々と述べ立てる機械で監視装置もついている)や隠しマイクが設置された驚くべき管理社会。主人公ウィンストンは、こうした社会に疑問をふくらませていきます。しかし、反抗的な態度を取れば即逮捕(なんと反抗的な思考を持つことでさえ逮捕の要因になる!)。彼は隠れながら、反発を深めていくのですが…。

街中にテレスクリーンや隠しマイクが設置された管理社会。こんな社会を以前アニメで見たような気がします。大長編ドラえもんの…「大魔境」だったか、「小宇宙戦争」だったか、街のいたるところに貼られたポスターが監視の目になっているという都市を描いた場面がありました。こうした管理社会が小説やアニメの世界だけでなく、実現したらどうなるか?大変に恐ろしいことです。私が特に怖いと思ったのは、過去を抹殺してしまうこと。政府の不都合なことがあると、過去の新聞記事などを書き換えてしまうのです。また、国語辞典まで統制され、版を重ねるごとに語彙を少しずつ減らしてゆく…これで人々は考える力を失っていくというもの。オーウェルの社会を見る目、というものを強く感じさせる小説です。

読むと未来の社会がどうあるべきなのか、考えさせられる小説です。始めに『動物農場』を読み、そのあと『1984年』を読むといいのかもしれません。視野を広げる意味でも読んでおきたい1冊です。

●『1984年』ジョージ・オーウェル著 高橋和久訳 早川書房 2009年
コメント
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