細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『アウェイ・フロム・ハー/君を想う』わたしが壊れ、夫が消える。

2008年04月26日 | Weblog
●4月25日(金)13-00 築地<松竹試写室>
M-047 『アウェイ・フロム・ハー/君を想う』Away From Her (2006)film farm カナダ
監督/サラ・ポーリー 主演/ジュリー・クリスティ ★★★★
アルツハイマー病に冒された妻を、老後介護施設におくる夫の心境を描いた作品。
カナダ、オンタリオ地方の雪の世界。そこに老後の生活をおくる夫婦にも静かに試練が訪れる。
美しい雪も春の暖かさで、少しずつ消えて行く。フライパンを冷蔵庫に入れてしまう妻。
ジュリー・クリスティはこの老妻の演技で、ことしのアカデミー主演女優賞にノミネートされた。
ごく自然に淡々とした生活だが、確実に彼女の記憶も雪のように消え出した。黄色い花を見ても色彩がわからない。
サラ・ポーリー監督は『死ぬまでにしたい10のこと』などに出演した若い女優だが、この新作ではカナダのベテラン先輩陣のバックアップもあって、非常に繊細な人間ドラマに仕上げている。
誰もが迎える老後の変化。
避けられない現実だが、人間の知性は、どうしたら感情や記憶をコントロールできるのか。
この作品の凄さは、人間への最後の原罪として、その人生の過去の償いを清算しようと迫るところだ。
介護しようとした夫の愛を拒む妻。ストイックだが、ベルイマン映画の厳しさも見受けられた。

●初夏、銀座テアトルシネマなどでロードショウ

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