細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ゼロ・グラビティ』の秀逸な宇宙空間からの脱出サスペンス。

2013年10月27日 | Weblog

10月24日(木)10-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-135『ゼロ・グラビティ/3D』Gravity (2013) warner brothers pictures / haydy films / esperant filmy

監督・アルフォンソ・キュアロン 主演・サンドラ・ブロック <96分>配給・ワーナー・ブラザース映画 ★★★★☆

驚異的な映像の、新鮮でリアルな美しさと迫力で見せる、まさに映画的な快挙。というと大げさだが、でも、これこそが映画ならではの魅力である。

誰も見たことも体感したこともないSFの世界は、見るものの興味と空想を駆り立てるが、この作品はSFだが、それほど突飛じゃない。

タイトルは、「無重力空間」のことだが、いきなり映画は、その宇宙空間でスペースシャトルの修理をしている作業員の姿を見せる。

地上60万メートルという位置での船外活動は、ごく日常的に地上のNASAとの交信で、順調に作業は終了しつつあった。

サンドラと、ベテランの宇宙飛行士のジョージ・クルーニーは冗談を交わしつつも、作業の最終段階。

突然、地上との交信が途絶えて、多くの細かな流星物に襲われたふたりはシャトルを捨てて宇宙基地への移動をするが、トラブル発生。 

まるで宇宙のハリケーンのような衝撃で、木の葉のように飛ばされたサンドラは、どうにか中国製の母船にたどり着く。

映画は、このとんでもない宙空での逃避行を、実に巧妙な宇宙空間のみの映像で見せて行く。その緻密に計算された映像は迫力満点。

とくに無重力状態で、何度も宇宙船に体をぶつけながらも苦戦奮闘するサンドラの演技は、ワイヤーだけの撮影ではないだろう。

ドラマは宇宙での事故から、単身、地球までの帰還と、着水した海上での脱出までを、ほとんどサイレントで一気に描ききる。

映画を見ていての感動とは、これまで見たこともない映像でも、本来の人間性を見失わないというドラマとしての強靭さ、だろう。

傑作「大いなる幻影」でも人間の出会いと、その偶然と必然のドラマ性を見せたキュアロン監督は、ここでも人間の強さと誇りを見せた。

おそらくは、年明けでも多くのオスカー・ノミネートが予想される傑作だが、これが「映画力」の強さなのだと感動した。

「2001年宇宙の旅」以来、多くのSF映画が作られたが、ジョン・スタージェス監督の「宇宙からの脱出」や、がロン・ハワード監督の「アポロ13」がお気の毒なほど、映像技術の進化が圧倒的で、もっとも知性と勇気と人間愛に貫かれた作品だと思った。

 

■飛距離のあるセンターへのフライだが、そのままバックスクリーン。

●12月13日より、全国ロードショー  


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