●3月15日(火)13-00 京橋<テアトル試写室>
M-034『山河ノスタルジア』" Mountains may Depart " (2015) X Stream Pictures / M K Productions / ARTE CNC /上海電影集団
監督・ジャ・ジャンクー 主演・チャオ・タオ、チャン・イー <125分> 配給・ビターズ・エンド
今の中国映画界で、もっとも質の高いレベルの作品を連発しているジャ・ジャンクー監督の『長江哀歌』や『罪の手ざわり』に次ぐ新作なので見逃せない。
しかも、この新作の製作には、わが北野武さんの<オフィス北野>もバックアップしているから、何やらワケありの必見レベルの新作。
ひとつの大河ドラマのような、母の青春から結婚と出産、そして夫の離婚、青春の元カレとの再会と死別cや、愛息の海外生活・・・と、いろいろ人生の旅路を追って行く。
さすがにジャ監督は、その時代の変化を、「マミー」のようにスクリーンのサイズで区分けして、青春の1999年はスタンダード、2014年はビスタサイズ、2025年はワイド。
この長いようでいて、実は26年ほどの時の流れを、主人公のタオという女性の生活をメインにして、10年ほど将来の近未来の生活まで見せてくれるのが、斬新な洞察ぶりだ。
中国の山西省というのは、監督の生まれた土地だというが、貧しい炭坑の街で閉山が続く寒村ながら陽気に生きるタオの青春と、彼女に接近するふたりの男が絡んで来る。
冒頭のディスコでの「ゴー・ウェスト」のダンス・シーンや、河原での打ち上げ花火、飛行機の墜落などで、突然のサウンド・アクセントは、相変わらずジャ監督のスパイス。
彼女は活発な性格で、ふたりの男には平等に交際していたが、どちらかというと強引なリッチ青年との結婚を選択し、しかし性格的な対立は続いていく。
そしてパート2の現代になるが、リッチな彼と生活は破綻し、ふたりは離婚し、元カレは鉱山の作業で肺ガンを発病して急逝してしまい、子供はオーストラリアに移住した元夫に預ける。
そこまでが現代の生活で、タオの生活は孤独で困窮し、パート3は2025年という、ほぼ10年後の彼らの生活を描く、という、かなり思い切った構成はさすがに斬新だ。
特に移住した子供は中国語を話せなくなり、もはや我が子とは思えぬ彼女は、ひとり故郷の河原で、あの青春の歌で踊っている。
こうした大河ドラマというのは、得てして重くのしかかるのだが、相変わらずジャ・ジャンクー監督らしいタッチは、ことの重大さも、季節の変化のように淡々と、しかし飽きさせない。
時代は流れて、人の感情も生活環境も変わり、故郷の風景も風化していくが、あの青春時代に聞いた歌のように、心の片隅には生き残って行く・・・というラストは味わい深い。
■左中間の当たりが意外に伸びて、野手が返球したが悠々のツーベース。 ★★★☆☆
●4月23日より、Bunkamuraル・シネマなどでロードショー