細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『さよなら、人類』そう、みなさん、いずれは、さらば。

2015年06月28日 | Weblog

6月18日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-075『さよなら、人類』" A Pigeon sat on a Branch Reflecting on Existence " (2014) Svenska Filmstitutet, スウェーデン

監督・ロイ・アンダースン 主演・ホルガー・アンダーソン <100分> 配給・ビターズ・エンド

スウェーデンのフィルム・インスティチュートで、映画と文学で学位を取得したアンダースンの作風は、すべてがアートといえる自画の緻密な絵コンテで成立している。

その画集はまさにアートであって、映画というよりは、総合的なグラフィック・ジニアス。二子玉川の蔦屋家電に置いてある画集を見ていると、その凄さに一時間はかかる。

構想15年、撮影に4年もかけたというシーンは、どこを取っても独特のブラック・ユーモアとアート・レベルに貫かれたような資質であって、まったく愉快で、恐れ入ってしまう。

いきなり<死との出会い>という、まさに呆れる様にトボケた突然死のスケッチを披露するが、まさに人間の死は、その生と同様に、ごくありふれた場面で起こりうるという視点。

サムとヨナタンという、見るからに冴えない<おかしな二人>が、多くの奇妙なエピソードの案内役のような感じだが、それでも唐突に時代は逆流して、変化してしまうのだ。

その冷静で皮肉で、しかも知的なアングルは、人間の普段の視線に似ていて、まさにごく日常的なシーンの連続だが、このアンダースン<目線>にかかると、すべてがダークなイラストレーションのようだ。

おかしな生活のスケッチは、グレイのトーンで統一されて、ほとんどはパントマイムのように多くは語らずに、その人間達の奇妙な、しかし大真面目な行動でスケッチされていくので飽きない。

それぞれに、あの先日見た「人生スケッチ」のように誇張されてはいないが、かなり独特のシニカルな切り取りで、まさに4コマ漫画のようなおかしさと皮肉に彩られている。

ほぼ100分の上映時間に、そのブラック・コミックの挿話は止めどもなく語られて行くが、いちいち説明も関連性もなく、しかしその全てが<人生の愚かさ>を冷笑していくようだ。

という意味では<動くおとなの漫画>という枠で括られて行くが、アメリカの<エスクァイア>や<ニューヨーク・タイムス>などのカリカチュアとは、まったく異質の北欧らしいクールさがおかしい。

これこそが<ロイ・アンダースン・ワールド>なのであって、説明するのは愚かな事だ。ヴェネチア国際映画祭でグランプリ受賞というのは、まったく異存がない。お見事な、考えさせる喜劇作品。

 

■ファールで粘ったものの、レフトのポールをかすめるホームラン ★★★★

●8月8日より、YEBISU GARDEN CINEMA 他でロードショー 


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