細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『クロワッサンで朝食を』の質素で焼きたてのいい香り。

2013年05月26日 | Weblog

●5月24日(金)13−00 京橋<テアトル試写室>
M−063『クロワッサンで朝食を』Une Estonienne a Paris (2012) T S production et amarion presents
監督/イルマル・ラーグ 主演/ジャンヌ・モロー <95分>配給/セテラ・インターナショナル ★★★☆☆
どこか「最強のふたり」の女性版を匂わせる、非常に洗練された逆境の人情ドラマだ。
政治的にも窮屈なエストニアに住む家政婦は、新しい生活を求めてパリの富豪老齢未亡人の世話をする住み込み小間使いとしてやってくる。
これは、エストニア出身の監督が知っている実話の映画化だというが、実に質素で誠実なタッチが心地いい。
85歳の高齢になるジャンヌ・モローは、そのままの存在感で、フォーリナーの出稼ぎ家政婦を蔑視して困らせる。
わがままな未亡人はかなり偏屈気ままで、朝食のクロワッサンは、ちゃんとパン屋の焼きたてでないと口にしない。
終日、広いアパルトマントの大きなベッドか、近所のブティックを散策する。このパリの何気ないスケッチが久しぶりに味がある。
老嬢には中年になる年下の元カレがいて、近所にカフェの経営を任せて、身辺の経済的なサポートは任せている。
ま、実に理想的な老後のシンプルな生活だが、家政婦には、ことごとく口煩い。
どうしても馴染めない家政婦は、とうとうキレてしまい、パリを断念して帰国を考えるが、そこでジャンヌはやさしく注文を出してめでたく解決。
実に繊細で、ささやかな感動を秘めた、久しぶりに心に沁みるヒューマンな佳作であった。
ああ、それにしても「現金に手を出すな」や「エヴァの匂い」があったから、好適役ジャンヌ・モローの存在感が光る。
往年の、よきフランス映画の風格が甦った瞬間だ。


■軽いスイングでセカンド塁上を抜けるクリーンヒット
●8月、シネスイッチ銀座でロードショー


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