細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『密偵』で描出される、日本統治下での朝鮮ダブル・スパイの暗躍ぶり。

2017年09月27日 | Weblog

9月19日(火)12-30 築地<松竹映画3F試写室>

M-107『密偵』(2016)Warner Brothers Pictures .Korea Production / Grimm Pictures / Herbin Films 韓国

監督・キム・ジウン 主演・ソン・ガンホ、コン・ユ <140分・シネマスコープ> 配給・彩プロ

1920年代の日本統治下の韓国では、独立運動の地下組織<義烈団・ウイヨルダン>が暗躍を続けていて、秘かに日本警察の取り締まりの地下での追求が激化していた。

ベテラン俳優のソン・ガンホが、ここでは日本警察の捜査官として、ちょっと聞きづらいが、日本語を使い韓国の地下組織を追求していくのだが、当然のように韓国語の方がうまい。

日本側の朝鮮総督府警務局課長という、ややこしい役職だが、とにかく現地の日本人捜査官としては、鶴見辰吾が演じているので、当然のように日本語は流暢だが、ソンとの会話のズレはしょうがない。

その彼らがもっとも重要視している地下組織のリーダーが、つい先日見た「新感染・ファイナルエクスプレス」で、堂々の主演で大活躍をしたコン・ユで、ここでは、かなりソン先輩を脅かす好演だ。

むしろ役柄としては、ソンと、コンは逆にした方が、国際スパイ・サスペンスとしては面白くなったろうが、やはり先輩のソンに遠慮してか、コンの悪役ぶりがいささか弱いのが、この作品の弱点だろう。

両優ともに巧いのだが、やはり年齢的な重量感では、ソン・ガンホの方が大先輩なのだから、ここでは彼に悪役を演じて欲しかったのが、当方の身勝手な注文だが、ま、コンも渋とい好演を見せる。

「密偵」というと、いかにも時代がかっているが、要は<シークレット・エージェント>であって、古くはリチャード・ウィドマークの「秘密諜報機関」の、つまり<スパイ>と言った方がわかりやすい。

ま、とにかく時代的には、日本の韓国統治が非常に難しく不利になっていた時期が背景になっているので、韓国映画としては、ここで名優ソンの二重スパイ的な暗躍が見せどころとして緊張感が高い。

しかし、そこにまた謎めいた、あの、超ベテランの、イ・ビョンホンが後半になって、微妙に絡み出してからは、どうもソンの行動にサスペンスが薄れたようで、せっかくの重厚さが・・・。

とはいえ、あの複雑な時代の朝鮮の雰囲気と、そこに居座っていた日本文化の、どうにも不具合な違和感が、このスパイ・サスペンスの舞台背景としては、大いに興味をそそられる映像ではある。

 

■左中間へのライナーを野手が譲り合ったのか後逸のヒット。 ★★★

●11月11日より、シネマート新宿ほかでロードショー


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