サナギ：その１

「もしもし、今日からサナギになりますので三日ほど休みます」
僕は受付に電話をしてから、また眠りについた。
休む時は必ず会社の受付に電話を入れる。課長としゃべるのは苦痛だし、８時半に会社に居るのは受付の人だけなのだ。
ここ数日は出社時間もだんだん遅くなり、昨日などは夕方の４時に出社した。受付の人は「おかえりなさい」と言ってくれた。
四畳半の部屋はほどよい湿度で、繭も大きくなってきた。ほとんど部屋いっぱいを占領しているその白い物体は、間接照明のような柔らかい光で包まれ、中に居ると眠たくなる。
三日後に目が覚めるかどうかは不安だが、とりあえず森田童子のカセットテープでも聞きながら寝ることにする。
手足には薄い殻ができてきて、サナギになる準備はすっかり出来ている。
問題は、サナギからかえった時いったい何になっているかだ・・・