『東京の坂・江戸の坂』その86。前回に引き続き都立大学駅周辺の坂道を歩く。天神坂を降りて右に曲がる。しばらくすると右側に東光寺という大きな寺が現れる。
東光寺は鎌倉時代に上州から世田谷に移り、豪徳寺付近に城を持ち、さらに碑文谷・衾を領地としていた吉良家当主吉良治家が若くして亡くなった息子の菩提を弔うため建てた寺で立派な本堂、心字池を中心とした庭園などを持つ。
その先には都立大学附属高校、氷川神社などがある。その先あたりにあるのが化坂(ばけざか)であり、起伏のある道の一部である。この坂の名前は赤土層に砂礫層が露出し、湧水が出ることを『はけ』といい、これが訛ったものと思われる。
坂の先を左手に曲がる。この道はバス通りとなっているが、さらに先を右に曲がると小学校が出てくる。これを左に曲がると上り坂となるが、これが『しどめ坂』。
しどめとは植物の一種、草木瓜のことで周囲に赤い花をつけるこの草が群生していたからついた坂の名前である。
その一本先を右に曲がるとまた同じような坂があるが、この坂が『太鼓坂』。急坂のため、太鼓を転がすように人が転がったからついたとも言われる。(谷中の団子坂と同様)
ここまで来たら、元来た道を戻る。左側に氷川神社に向かう道が出てくるが、途中から緩い下り坂となる。これが『氷川坂』、神社からついた名前である。
この辺りは目黒通りを頂点として下り坂となっているため、名前がない坂も多く、平行して坂となっているため、中々目的の坂までたどり着けない坂道マニアには厳しい地形である。