かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発を詠む(7)――朝日歌壇・俳壇から(2013年6月17日~8月5日)

2013年08月05日 | 鑑賞

朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」に関連して詠まれたものを抜き書きした。

 

風薫るサツキ、サザンカ、ハクチョウゲ根こそぎ掘られ除染進行
                   (福島市)伊藤緑   (6/17 野公彦選)

「神明町は除染済みました」日常の挨拶になりし切ない言葉
                  (郡山市)昆キミ子   (6/17 野公彦選)

原発の事故と補償で揺れている国の首相が原発を売る
                  (東久留米市)田村精進   (6/24 永田和宏選)

種が継ぎスミレ苧環花ざかり放置のままの除染待つ庭
                  (福島市)澤正宏  (7/1 馬場あき子選)

原発を笑みもてセールスせし首相この国どこへ導くならむ
                  (神奈川県)堀江照子   (7/8 野公彦選)

そこかしこまっさらの土敷かれいて他人顔なる除染後の街
                  (福島市)美原凍子  (7/15 馬場あき子選)

汚染土の保管に掘った穴の底蝉の子ぽつり戸惑い歩
                  (福島市)伊藤緑  (7/15 馬場あき子選)

怖るべしチェルノブイリの廃炉まつ二十七年コンクリの棺
                  (相模原市)松波善光   (7/15 佐佐木幸綱選)

わが家まで七キロと近づく検問所にて服を着替える防護服にする
                  (東京都)半杭螢子   (7/22 佐佐木幸綱選)

四畳半の仮設に暮らし足るを知る半夏生の今日米寿迎えたり
                  (いわき市)佐藤美二   (7/29 佐佐木幸綱選)

原発の稼働をせかす一派来て霊峰米山顔を曇らす
                  (長岡市)佐藤正   (7/29 佐佐木幸綱選)

これがまあ民主政治か私語一つなくて除染の説明を聞
                  (福島市)武藤恒雄   (7/29 佐佐木幸綱選)

タンポポとハハコグサとの色のみの除染の公園土まだむきだし
                  (福島市)斎藤一郎   (7/29 野公彦選)

熔け落ちし燃料棒は如何ならん朝顔の咲く紺深く咲く
                  (福島市)青木崇郎   (8/5 野公彦選)

参議院選禊となって再稼働一気に進むそんな気がする
                  (西海市)前田一揆  (8/5 佐佐木幸綱選)

再稼働急ぐ人等に預けしは小さき命と思えてならぬ
                  (門真市)奥中渓水  (8/5 佐佐木幸綱選)

津波だけだったならばと思う事多多ある日々に再稼働何故
                  (行方市)鈴木節子  (8/5 佐佐木幸綱選)

原発の無き岐阜の地でノーを言ふ坂本龍一神出鬼没
                  (岐阜市)後藤進  (8/5 佐佐木幸綱選)

足跡が庭の何処かに残りしはず除染で削られる夫の歩きし土
                  (郡山市)昆キミ子  (8/5 佐佐木幸綱選)

仕事だから浜の百棟を壊したと語る男の声弱々し
                  (福島市)澤正宏  (8/5 佐佐木幸綱選)

 

 

夏つばめ被爆の空を反転す
             (行田市)藤田栄之   (6/17 金子兜太選)

六月の牛鳴いてゐる被災村
             (福島市)池田義弘   (7/8 金子兜太選)

農は捨て妻子は戻らぬ梅雨寒し
             (南相馬市)吉岡朝雄   (7/15 金子兜太選)