朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」に関連して詠まれたものを抜き書きした。
風薫るサツキ、サザンカ、ハクチョウゲ根こそぎ掘られ除染進行
(福島市)伊藤緑 (6/17 野公彦選)
「神明町は除染済みました」日常の挨拶になりし切ない言葉
(郡山市)昆キミ子 (6/17 野公彦選)
原発の事故と補償で揺れている国の首相が原発を売る
(東久留米市)田村精進 (6/24 永田和宏選)
種が継ぎスミレ苧環花ざかり放置のままの除染待つ庭
(福島市)澤正宏 (7/1 馬場あき子選)
原発を笑みもてセールスせし首相この国どこへ導くならむ
(神奈川県)堀江照子 (7/8 野公彦選)
そこかしこまっさらの土敷かれいて他人顔なる除染後の街
(福島市)美原凍子 (7/15 馬場あき子選)
汚染土の保管に掘った穴の底蝉の子ぽつり戸惑い歩く
(福島市)伊藤緑 (7/15 馬場あき子選)
怖るべしチェルノブイリの廃炉まつ二十七年コンクリの棺
(相模原市)松波善光 (7/15 佐佐木幸綱選)
わが家まで七キロと近づく検問所にて服を着替える防護服にする
(東京都)半杭螢子 (7/22 佐佐木幸綱選)
四畳半の仮設に暮らし足るを知る半夏生の今日米寿迎えたり
(いわき市)佐藤美二 (7/29 佐佐木幸綱選)
原発の稼働をせかす一派来て霊峰米山顔を曇らす
(長岡市)佐藤正 (7/29 佐佐木幸綱選)
これがまあ民主政治か私語一つなくて除染の説明を聞く
(福島市)武藤恒雄 (7/29 佐佐木幸綱選)
タンポポとハハコグサとの色のみの除染の公園土まだむきだし
(福島市)斎藤一郎 (7/29 野公彦選)
熔け落ちし燃料棒は如何ならん朝顔の咲く紺深く咲く
(福島市)青木崇郎 (8/5 野公彦選)
参議院選禊となって再稼働一気に進むそんな気がする
(西海市)前田一揆 (8/5 佐佐木幸綱選)
再稼働急ぐ人等に預けしは小さき命と思えてならぬ
(門真市)奥中渓水 (8/5 佐佐木幸綱選)
津波だけだったならばと思う事多多ある日々に再稼働何故
(行方市)鈴木節子 (8/5 佐佐木幸綱選)
原発の無き岐阜の地でノーを言ふ坂本龍一神出鬼没
(岐阜市)後藤進 (8/5 佐佐木幸綱選)
足跡が庭の何処かに残りしはず除染で削られる夫の歩きし土
(郡山市)昆キミ子 (8/5 佐佐木幸綱選)
仕事だから浜の百棟を壊したと語る男の声弱々し
(福島市)澤正宏 (8/5 佐佐木幸綱選)
夏つばめ被爆の空を反転す
(行田市)藤田栄之 (6/17 金子兜太選)
六月の牛鳴いてゐる被災村
(福島市)池田義弘 (7/8 金子兜太選)
農は捨て妻子は戻らぬ梅雨寒し
(南相馬市)吉岡朝雄 (7/15 金子兜太選)