ついに見た。
白熊はおもむろに2本の足で立ち上がると、手を大きく上に振りかざした。
そして目の前に腹ばいになって横たわる男の背中に向けてその全体重をのせた。
白熊は男を押さえつけるように男の背中の上に完全にのりかかっている。
白熊は動かない。
白熊の表情は私の位置からは良く見えない。ただ、白熊の体からは満足気なエネルギーが伝わってくる。
男はわずかに右手を動かすが、それ以上の動きはない。
男の表情もここからでは良く見えない。
わずかに苦痛のような表情も感じられなくはないが、男の体からは恐怖のエネルギーは伝わってこない。
男も楽しんでいるようだ。
白熊はまだ若い。そしてこの白熊にはクヌートという名前がある。
母親に見放されたクヌート。でも代わりにいつも一緒に遊んでくれる男がいる。
ちょっとまて、ここにいるのはこいつだけではない。
もっとたくさんの気配を感じるが、その一つの気配はただならぬものだ。
そいつを見つけた。
そいつはひっそりと腹ばいになって横たわっていた。
起きているのか寝ているの、そいつは眼のまわりも黒いためによくわからない。
眼の周りが黒いのは仲間になぐられたせいではない。ここには仲間はいない。クヌートのように一緒になって遊んでくれる男もいない。
疲れているのか、たいくつなのか、それともいつもこうしているのか、5分前からこいつの前にたっている私には想像できない。
ここがベルリンでなく日本ならば私の周りには私とおなじようにこいつの様子をじっと見つづける人がいることだろう。しかしここでは人々は一瞬立ち止まってこいつの顔を見ると、すぐに立ち去ってしまう。
この夏の流行色である白をまとっている点は人気者のクヌートと同じだ。
ただこいつは去年の冬の流行色の黒もまとっている。
眼の周りが黒く、鼻も黒く、耳も黒く、体もあちこちに黒が混じっている。
白と黒が同時に流行色になる時、きっとこいつもクヌートのように、たくさんの人に囲まれるのだろう。
こいつも熊。熊猫という。
白熊はおもむろに2本の足で立ち上がると、手を大きく上に振りかざした。
そして目の前に腹ばいになって横たわる男の背中に向けてその全体重をのせた。
白熊は男を押さえつけるように男の背中の上に完全にのりかかっている。
白熊は動かない。
白熊の表情は私の位置からは良く見えない。ただ、白熊の体からは満足気なエネルギーが伝わってくる。
男はわずかに右手を動かすが、それ以上の動きはない。
男の表情もここからでは良く見えない。
わずかに苦痛のような表情も感じられなくはないが、男の体からは恐怖のエネルギーは伝わってこない。
男も楽しんでいるようだ。
白熊はまだ若い。そしてこの白熊にはクヌートという名前がある。
母親に見放されたクヌート。でも代わりにいつも一緒に遊んでくれる男がいる。
ちょっとまて、ここにいるのはこいつだけではない。
もっとたくさんの気配を感じるが、その一つの気配はただならぬものだ。
そいつを見つけた。
そいつはひっそりと腹ばいになって横たわっていた。
起きているのか寝ているの、そいつは眼のまわりも黒いためによくわからない。
眼の周りが黒いのは仲間になぐられたせいではない。ここには仲間はいない。クヌートのように一緒になって遊んでくれる男もいない。
疲れているのか、たいくつなのか、それともいつもこうしているのか、5分前からこいつの前にたっている私には想像できない。
ここがベルリンでなく日本ならば私の周りには私とおなじようにこいつの様子をじっと見つづける人がいることだろう。しかしここでは人々は一瞬立ち止まってこいつの顔を見ると、すぐに立ち去ってしまう。
この夏の流行色である白をまとっている点は人気者のクヌートと同じだ。
ただこいつは去年の冬の流行色の黒もまとっている。
眼の周りが黒く、鼻も黒く、耳も黒く、体もあちこちに黒が混じっている。
白と黒が同時に流行色になる時、きっとこいつもクヌートのように、たくさんの人に囲まれるのだろう。
こいつも熊。熊猫という。