被害者は誰?

2022年04月28日 | 日記・エッセイ・コラム
 イナカキムスメシャブヅケ作戦の件に関して、「デジタル時代のマーケティング総合講座」を主催した大学が、受講者に対してだけでなく、「今回の不適切発言は、SNSや報道等で多くの方の知るところとなり、不快な思いをされたと承知しております。講座主催者として深くお詫び申し上げます。」と、広く一般に向けて謝罪をしていることに驚きました。
 大学での講義の内容が、講師の意向によらず教室外に拡散されることの方が異常だとおもいますし、更にそれを聞き知って、勝手に不快な思いをした受講料を払っていない部外者にまで、大学が謝罪する必要があるのでしょうか?
 実際に女性が覚せい剤中毒になったわけでもなく、特定の個人や団体を中傷したわけでもない、講師の単なる比喩表現を聴講対象外の人が知ってどう思うと、勝手に思わせておけばよいのです。しかも講義の中の一部分です。元首相がオリンピック委員会での発言の録音が流出し、その一部分が切り取られて拡散し辞任に追いやられましたが、あれも前後を知ればそれほどおかしな発言ではなかった。 
 さて、イナカキムスメシャブヅケ作戦という表現が不適切だったかについては、それこそ「SNSや報道等で知るところになった」断片的な情報しかないので論評は避けますが、不適切だったにしても、不的確ではなかったとおもいます。
 言い古されて手垢のついた表現ですが、「イイタイコト」は伝わります。
 かつて他国民をアヘンヅケにして領土も権益も奪ってしまった国もありました。
 グローバルなファストフードチェーンのとってきた戦略は、その味を知らなかった人への中毒性を利用しています。
 我々の先祖が狩猟採集の生活をしていたころは、脂肪分、糖分、塩分が常に欠乏状態。だから稀に獲物や果物、岩塩が得られたときには必死で食らいついて貯め込む行動をさせるように、脳内に快楽物質が出るようになった。我々の身体は狩猟採集の時代からほとんど進化していないので、食料がいくらでも手に入るようになった今でも、脂肪と糖、それに塩分を摂取すると快楽が得られ、かくして中毒に陥ってしまうのです。
 これが生活習慣病が増える理由でもあるのですが、それはさておき、では講師はどう言えば「適切」だったのでしょう。
 例えば「卵から孵化したばかりのヒナが、初めて見たものを母親だとおもってついて歩くように」なんてのは、ちょっと弱いかな?
 「ツユダクの女子大生」作戦なんてのはどうかしら?「ピカピカの一年生」の節のCM流して、学生証提示でたくさん付録をつけてあげる。昔、ファストフード店でも、子供向けにおもちゃやキャラクターグッズをたくさん配ってました。付録で釣って、子供の舌をファストフード中毒にするために。
 でも、どんな言い換えを行ったたとしても、そのような中毒作戦は、デジタル時代の現在にも通用する「適切な」マーケティングなのか?
 講座主催者は表現の適切さよりも、語る中身の適切さを吟味すべきなのではないかしら。