コロナより怖いのはコロナ原理主義

2021年04月29日 | 日記・エッセイ・コラム
 2019年4月に池袋で起きた交通事故の加害者に対する報道が辛い。
 若い母親と幼児が死亡し、加害者を含む10名が負傷した惨事で、自動車を運転していた加害者が当時87歳と高齢であったことで、高齢者ドライバーに対する社会の目が厳しくなり、事故後逮捕身柄拘束されなかったのは、加害者が元通産省の高級官僚であったからではないかという憶測から「上級国民」という言葉が生まれ、「上級国民」はこの年の新語・流行語大賞の候補にもノミネートされました。
 検察は警察の捜査から、事故の原因は加害者の「ブレーキとアクセルの踏み間違い」として起訴しましたが、加害者は「機器の誤作動」と主張しています。電子化部品が多い現在、これは交通事故裁判の争点としては珍しくないのですが、問題はこの高齢の元高級官僚の加害者が、いかに事故を起こしたことを反省していないか、が報道の中心になってしまっている点です。
 日本の刑事裁判の有罪率は99.9%、法廷に立った時点でほぼ犯人ですから、加害者が法廷で自分の正当性、盗人にも三分の理を必死に主張して、少しでも量刑を軽くしようとするのは仕方のないことです。それを年齢や容姿、態度、過去の経歴などを含めて悪意を持って報道するのは、判決が出る前に私刑を加えているようなものです。
 被害者やその家族、特に妻子を一瞬にして奪われた遺族は本当お気の毒ですし、自分がその立場であれば、加害者を許せないのは当然です。ましてや加害者の態度から謝罪の気持ちが汲みとれないとなれば、はらわたが煮えくり返るおもいだとおもいます。それに同情するのは人間として当然なのですが、逆に自分もいつどんなことで加害者になってしまうかもしれない、ということを考えると恐ろしくなります。
 
 プリンセスの婚約者に対する報道のお行儀があまりに悪い。
 本人だけではなく母親のことを、これでもかと攻撃する。人の親の悪口を言ってはいけない、と子供の時に教えられなかったとすれば、余程お育ちが悪い。お前のかーちゃん、デベソ、は誰に対しても絶対に言ってはいけないのです。
 年金詐欺疑惑、母子家庭に分不相応な暮らしや教育方針、・・・大きなお世話ですよね。
 上級国民を叩き、上級になろうとする人の足も引っ張るわけです。
 万一?結婚された場合には1億円以上の一時金(黒田清子さんのときは1億5250万円)が税金から支払われる、生涯の警護費用にも莫大な税金がかかり続ける、だから国民が口を挟む権利があると主張する方もいますが、このお金はあの方でなくても誰でも同じ、婿殿の評価で金額が変わるというものではない。そして、どんなお相手なら税金かけてもいいの?
 女性宮家など、皇室のジェンダー問題の議論のネタにもされて、あんなやつを殿下と呼ぶわけにはいかない、なんていう気の早い方もいますが、殿下はさておき、皇室の配偶者は政治家のように、国民が選ぶものではないのです。

 どうしてオリンピック組織委員会が看護協会に看護師500人の確保を要請してはいけないのでしょう?
 ワクチン接種の人員が足りないのに、コロナで医療現場が疲弊しているのに、オリンピック期間に500人もナースを派遣するなんて、とんでもない、という論調で批判されていますが、誰々が~してるときに、~するのはダメ、こういう考えが恐ろしいですね。兵隊さんが戦地で戦っているときに~するのは不謹慎だ、みたいな。
 長く医療現場を離れていて、コロナの現場に復帰するのは難しいけれどオリンピックのボランティアならお手伝いできる、という方もいるとおもいます。ワクチン接種には賛同していないけれど働きたいという看護師さんだっています。そして、スポーツ医学の現場経験があったり、自らもアスリートで、オリンピックの現場が適材適所というナースにとっては、またとない活躍の場でしょう。
 予防接種会場から、コロナ病床から看護師を500名引きはがしてきて、五輪会場に配置しろ、というわけではないのです。
 コロナより怖いのはコロナ原理主義です。

5月6日から高齢者接種がはじまります

2021年04月28日 | 日記・エッセイ・コラム
 目黒区では5月6日から区内接種会場にて新型コロナワクチン接種がはじまります。
 区も医師会も全力で取り組んでおります。
 当院スタッフもできる限り出務いたしますので、よろしくお願いいたします。
 ワクチン接種出務に伴い、診療時間の変更や、時間外の電話お問い合わせに対応できない場合があることをご容赦ください。

 国では接種を加速するために、自治体主導の接種とは別に、5月24日から自衛隊主導で都内に1日1万人の接種ができる高齢者向けの大規模接種センターを設置するようです。
 現在目黒区など自治体に供給されているファイザー社のワクチンは、3週間おきの2回接種ですが、現在承認申請中のモデルナ社のワクチンは4週間おきの2回接種が原則で、メーカー違いのワクチンを交互接種した場合の有効性はまだ評価されていません。
 接種間隔の異なる2種のワクチンが存在することの混乱を防ぐために、これから入ってくるモデルナ社のワクチンは、ファイザー社の自治体接種とは別チャンネルで接種を行う、ということも、大規模接種会場を設置する理由とのことです。
 接種チャンネルが増えることは望ましいとはおもうのですが、外出制限を訴える一方で、東京都内だけでなく神奈川、埼玉、千葉から都心の大規模接種会場(大手町の合同庁舎内に設置する予定とのこと)にたくさんの高齢者を集めるのは、どうなんでしょう?防衛大臣は、接種のための移動は「不要不急の外出にあたらない」とおっしゃていますが、ウイルスにとっては、そんなこと知ったこっちゃない、ですよね。

 大阪での感染者急増や病床のひっ迫、変異ウイルスは感染率が高い?重症化しやすい?といった情報で、テレビや新聞は国民の恐怖を煽っていますが、我が国の感染率、死亡率は今のところ極めて低く、海外と比較してワクチン接種が遅れているといった報道に焦る必要はありません。最終的にはちゃんとみんなにいきわたりますので、焦らず、気長に待っていていただければ、とおもいます。
 また、現在のワクチンの有効性の評価は「発症抑制効果」で「感染予防効果」ではありません。接種した人はしない人に比べて、感染しても症状が出にくい、ということです。もちろん感染予防効果もあるとはおもいますが、ワクチンを打ったから感染しなくなるわけではないので、マスクや手洗い、ソーシャルディスタンスといった感染予防対策は接種後もひきつづき必要です。
 ワクチンは感染予防の切り札ではなく、対策の一つに過ぎません。

 3度目の緊急事態宣言下、ゴールデンウイークを前に外出も娯楽も制限され、せっかく天気のいい日が続いているのに、気持ちが塞いでしまう毎日です。
 糖尿病など、生活習慣病が悪化する患者さん、うつになり心療内科に紹介を求める患者さん、あっという間に認知症が進行してそれまでの素晴らしい経験とおもいでを失ってしまう患者さんが増えています。
 私も一日中ほとんど診療所から出ることなく、3食、おやつも夜食も診察室で壁に向かってひとりで食べている生活が、もう1年以上続いています。焼き鳥もラーメンも、恋しいという気持ちさえなくなってしまいました。
 ただ、私の場合は、診察室にこもっていても、毎日患者さんがいらしてくださいます。それだけが今を生きる支え、患者さんに生かしてもらっています。
 人が生きていくには、社会との接点が必要です。
 みなさま、ステイホームもほどほどに。

ゴールデンウイークの診療予定

2021年04月23日 | 日記・エッセイ・コラム
5月1日(土)~5月5日(祝) 8時30分~12時30分/12時30分~16時30分診療
 ※東京都の要請により、12時30分以降は発熱患者さんの診療を優先いたします。
 ※※PCR検査ご希望の方は、できるだけ早めの時間に受診されることをお勧めいたします。(検査機関による検体回収後に受診された場合、検体のお預かりはできますが、回収は翌日扱いになります)
 ※※※5月3日(祝)17時~22時は目黒区鷹番休日診療所を担当いたします。
 

明日から85才以上の接種予約受付が始まります。

2021年04月22日 | 日記・エッセイ・コラム
 明日23日から目黒区新型コロナウイルス予防接種の85歳以上の方の予約受付が始まります。80歳以上の方は26日から、75歳以上の方は30日からです。
 すでに実施されている地域の状況から、受付開始直後は電話がつながらない、サイトが開けないなどのトラブルがあるかもしれませんが、時間をおいて対応してみてください。あわてる必要は全くありません。
 4月2日現在、イギリスでは全成人の9.9%にあたる500万人以上が、80歳以上の半数が、2度の新型コロナウイルスワクチン接種を受け、1度目の接種を受け終えた人は3140万人に上ります。
 ワクチン接種の効果もあってか、イギリスでは感染者数のが順調に減少しているため、4月12日から屋外の接客イベントと全ての店舗は営業を再開し、介護施設への訪問規制も緩和しています。
 人口6700万人のイギリスで、4月19日に確認された新規の感染者は2,524人です。
 緊急事態の再々々宣言に揺れている、人口1億2300万人の日本の4月22日の新規感染者が5,292人です。
 新規感染者数だけでいえば、我が国はワクチン接種が普及していなくても、行動制限の緩和をはじめているイギリスと同じレベルなので、もし予約電話がすぐにつながらなくても、あわてないこと。
 75歳未満の方からは、ワクチンが供給されるのかについての不安のご質問も多いのですが、詳しいことはわかりませんが、首相が米国まで行って、供給元のファイザーの社長に直談判しているぐらいですから、きっと確保は厳しい状況なのではないか、と私はおもっています。アストラゼネカやジョンソン&ジョンソンのワクチンを血栓症の問題で中止してる国も出始めたので、ファイザーのワクチンの需要がますます高まっています。国連は先進国がワクチンの囲い込みをしないよう呼び掛けていますし、被害の大きいEUは域外へのワクチン輸出を厳しく制限しています。そんな状況で、極めて感染率の低い日本にワクチンを優先的に配分したとなれば、ファイザー社も金子目当てと、国際的な批判を受けかねません。
 当面供給不足があるかもしれませんが、心配はいりません。 
 昨年のインフルエンザワクチンも、結局は大量に余って処分しました。その昔、たまごっちは縁日でも叩き売りされましたし、ナタデココもすぐにスーパーで安売りされました。子供の頃にあと30年で石油がなくなる、といわれて怯えたのですが、今原油はだぶついています。今まで足りない足りないといわれたものが、最後まで足りなかったためしはありません。
 来年の今頃は余ったワクチンをさばくために、3回目接種、4回目接種が有効、なんて宣伝をしてるかもしれません。

 
 

新型コロナワクチン接種を迷っている方へ~抗体検査のご提案

2021年04月19日 | 日記・エッセイ・コラム
 すでに新型コロナ感染から回復された方から、ワクチン接種を受けた方がいいか?というご質問がありました。
 回復者が再感染した例もありますし、ウイルスも変異するので再感染の可能性はもちろんありますが、一度感染した方は、当面(どのくらいの期間かは不明)は感染しにくい、感染しても重症化しにくい、というのは、複数の報告から間違いないようです。
 今のところ感染から回復した方に対するワクチン接種の指針はなく、未感染者と同じ条件で接種券が配布されます。
 これはあくまでも私見ですが、回復者は接種を急がなくてもいいのではないか、もしくは1回接種でいいのではないか、とおもっています。
 感染既往のある方に接種した例では、1回目の接種で(未感染者の2回目にように)発熱疼痛症状が強く出て、抗体価も接種後に上昇することから、1回接種で未感染者の2回目のような効果が得られることが推察されます。
 新型コロナウイルス感染は無症状、軽症で済んでしまう方もたくさんいるので、知らないうちに感染して免疫のある方もいらっしゃるとおもいます。
 厚生労働省が行った調査によると、昨年12月14日から25日にかけて希望者から無作為に抽出した20歳以上の男女など合わせておよそ1万5000人を対象に行われ、新型コロナウイルスに対する抗体を保有していた人の割合は、東京都が0.91%、大阪府は0.58%、愛知県は0.54%、福岡県は0.19%、宮城県は0.14%でした。
 免疫には細胞性免疫と液性免疫があり、細胞性免疫は細胞内に入ってきた抗原(ウイルス)をキラーT細胞が直接攻撃する免疫で、抗体は産生しません。液性免疫は抗原に対してB細胞が抗体を産生して、抗体が抗原(ウイルス)と結合することで、抗原を弱毒化する免疫です。細胞性免疫は通常部隊で、この通常部隊で撃退できなかった敵を、特殊部隊の抗体がやっつける、というイメージです。特殊部隊の抗体は、紛争鎮圧後もしばらく駐留しています。麻疹や風疹のように駐留期間が一生のものもあれば、インフルエンザのように1年で撤退してしてしまうものもあり、コロナウイルスに関しては今のところ不明、もちろん個人差もあります。
 抗体を作ることなく(通常戦力で)感染防御できてしまうこともあるので、実際には抗体保有者以上に感染既往のある方はいるとはおもいますが、ともあれ東京では100人に1人弱の方が、コロナウイルスに対する抗体を保有しているということです。東京都の感染者数の累計が13万人、単純計算で1000人に1人ですから、知らないうちに(感染して)免疫のある人がかなりいる、ということは推察できます。
 そこで、接種すべきか悩んでいる方には抗体検査を受けてみることをお勧めいたします。自分が抗体を保有してるかどうかを知ることは、接種すべきかどうかを考える上での判断材料の一つになるとおもいます。