A) 問診でピロリ菌除菌歴が確認された方に関しては、除菌成功、不成功に関係なく、胃がんハイリスク群として、定期的な内視鏡検査を実施してください。
除菌がうまくいったにもかかわらず、定期的な内視鏡検査をすすめるのは、患者指導上難しい面もありますが、「除菌により胃がんリスクリダクションは期待できるが、未感染者同様の胃がんリスクになるわけではない、実際除菌後の胃がんも少なからず存在する」ことは、受診者にしっかり伝えなくてはなりません。
リスクリダクションの効果を内視鏡検査の実施間隔に反映できるとよいのですが、今のところそれを裏付ける報告はありません。
除菌により胃粘膜がきれいになることで胃がんが発見しやすくなることから、除菌後の胃がんのうち、除菌成功後数年以内での内視鏡検査での発見が多いことも事実です。
今後調査が進めば、HP除菌時の年齢や除菌前後の内視鏡所見、ペプシノゲン値、HP抗体価などによって、リスクリダクションの程度を具体的に見積もり、胃がんリスクをHP未感染と同等レベルとしてよい群などを設定することできるのではないかと期待していますが、現状では、E群についてはBCD群同様の胃がんリスクとして逐年、もしくは施設の事情に応じた間隔での内視鏡検査対象としてください。
LG21ヨーグルトについては、除菌療法を行なう際、除菌3週前から除菌終了までの4週間、LG21を1日2個摂取したら、除菌率が上昇したという報告(東海大学)がありますが、LG21だけを摂取しても、ピロリ菌除菌はできません。
ペプシノゲン値についても、LG21摂取で軽度の改善はありますが、ABC分類の判定に影響が出るほどではありません。
したがって、「影響なし」とお考えいただいて大丈夫です。
Q)胃がんリスク検診を採用した場合、バリウム検診は廃止してもいいのでしょうか?
A)胃がんリスク検診はあくまで胃がんになる危険度をみる検診で、胃がんをみつける、診断するものではありませんので、従来のバリウムによる胃がん検診の代用にはなりません。
しかし、胃がんリスク検診で、高リスク(BCD群)と診断された方に対する内視鏡検査の体制が整っているのであれば、胃がんリスク検診とバリウム検診の両方を実施する必要はありません。
特に、年齢層の低い職域検診では、一般検診の採血検査と同時に行なえる胃がんリスク検診の導入、バリウム検診の廃止は、費用の面でも、受診者の身体的時間的負担の軽減の点でも、メリットが大きいと考えます。
BCD群の方は、ピロリ菌除菌の対象になりますので、保険診療として内視鏡検査とピロリ菌除菌を行ない、その後定期的な内視鏡精査を継続することができれば、バリウム検診を受ける必要はありません。
内視鏡検査の体制の整っていないところでは、胃がんリスク検診への切り替えは難しいですが、胃がんリスク検診を併用して、従来の逐年一律のバリウム検診を、リスクに応じた、効率的な運用にすべきと考えます。
「皆、これを受けて飲みなさい。これは私の血の杯」~イエス・キリスト
「私の身体には、カベルネ・ソービニオンが流れている」~川島なお美
牛乳瓶のふた、ウルトラ怪獣人形、仮面ライダーカード、記念切手、ビートルズのレコード、映画チラシ・・・子どもの頃から、いろいろなものを熱狂的に集めては、物置の肥やしを増やしてきました。
そんな私の目下のコレクションはワイン。
ワインはデリケートな収集物なので、保存温度、湿度の管理が大切です。切手帖の保管のために、海苔の缶に入っている乾燥剤を集めていた私ですが、今はちょっと値の張るワインセラーにワインを寝かせています。
セラーからボトルを出しての矯めつ眇めつは、ジャケットに折り目をつけないようにレコード盤を出し、細心の注意でターンテーブルにのせた経験が生きています。
買って最初に聴くときにカセットテープに録音してしまうので、レコードほぼ新品のままコレクションできました。
でもワインはそうはいかない。本当のお楽しみは栓を開けて呑むこと、でもそれはコレクターにはご法度・・・。
友だちとの交換会には、ダブっているライダーカードしか持って行かなかった私ですから、同じワインを何本も買い込んでいるのは当然です。
もう世界中にどこにも在庫のないワインなのだ、と薀蓄を垂れながら振舞っているうちに、本当にセラーに最後の1本になってしまう時が来る。
呑みたい、でも呑んだら、もう呑めない。
そんなワインがセラーにどんどん増えていきます。
ビールや焼酎、日本酒も、同じブランドであれば、毎年同じ品質のものを生産するので、ワインのようにヴィンテージがありません。去年のエビスも今年のエビスも同じ味です。
ワインは天候によるぶどうの出来によって、毎年品質が変わります。同じ生産者が同じ畑のぶどうで作っても、毎年違う味わいのワインができます。ぶどうの収穫量によって、ワインの生産量も毎年違います。高級ブランドのワインは限られた畑のぶどうから作られているため、ヴィンテージによる味わいの違いがわかりやすく、それはワインの楽しみの一つであり、ヴィンテージによって希少性、価格に差が生じることに、コレクター心がくすぐられます。
同じヴィンテージのワインは消費により漸減していくので、セラーに寝せておくだけで、希少性は確実に増していきます。
だからといって、どのワインも長く保存すれば価値が高まるというものではありません。
ワインは熟成期間によって味わいが変化しますが、ワインごとに、また同じ銘柄のワインでも、ヴィンテージによって飲み頃が異なります。そのワインにとって旬の時に抜栓してあげるのが、一流のソムリエの仕事ですが、ワインコレクターのセラーではたくさんのワインが眠ったまま、老いていきます。
ウイスキーやブランデーにもヴィンテージがありますが、アルコール度数の高い蒸留酒は栓を開けてから、ちびちびと何ヶ月、何年と愉しむことができます。しかしワインは酸化が早い、コルクを抜かれ、眠りから覚めたワインは一夜の夢、夢が覚めないうちに飲みきってあげなくてはなりません。そして750CCが絶妙な量、一人で飲むにはちょっと多い。だからワインを開けるときは、キリストも川島なお美さんも、「誰かと一緒」なのです。
私にとって、ワインの栓を抜くことは、コレクター小僧から大人になる通過儀礼です。
大人はワインと引き換えに「誰かとの時間」を手に入れる。そして味わったワインは楽しんだ時間のヴィンテージで、自分の中のセラーに保管されます。
どんな財産も墓には持っていけない、と言われますが、ワインは天国でも楽しめるコレクションと信じて、夜な夜な栓を抜いています。