青森産のひらめ

2013年11月13日 | 日記・エッセイ・コラム

 行きつけのレストランの黒板メニューに「青森産ヒラメのカルパッチョ」とあった。
 「大丈夫?」とたずねると、シェフは「青森で泳いでるところをみたわけじゃないんで・・・」と苦笑した。
 連日、次から次ぎへの食品偽装の暴露報道に食傷ぎみです。
  車えびとブラックタイガーの違いがわからない自分の舌を残念とおもうか、経済的とおもうかはさておき、おいしいとおもって食べたのだから、金返せ、なんて無粋なことは言いっこなし。その場所で、その値段で、イベリコ豚なのか、大間のマグロなのかは、よく考えればわかるはず。
 今回のことで本当に気の毒なのは消費者ではなく、本物を出荷している生産者です。
   エノケソのまずい芝居を、お客はエノケンだとおもいこんでしまったようなものです。
   ヨーロッパの食品、食材には厳密な「原産地呼称制度」があり、違反すると国境を越えて処罰されます。有名な青かびチーズのロックフォールは、フランスのロックフォールの洞窟で熟成したものしか、名乗ることができません。それが規定されたのが1925年のこと。
  食に対する文化の違いを感ぜざるを得ません。
  しかし、われわれ日本人には見立て、というすぐれた文化があります。庭を観て大海をおもう。たくさんの何とか富士があり、全国に何何銀座がある、小町娘も日本中にいた。実際になくてもある気分になれる、にせものを本物とおもい込んで楽しむ、リアリズムを超越した国民なのです。
 そして硬い輸入牛肉にラードを注入して霜降り牛肉にする技術もある。
 文化と技術で、地鶏見立てブロイラー、芝えび見立て養殖バナメイエビを美味しくいただけるのが、日本人なのです。
 食欲の秋です。目くじら立てずに、舌鼓を打ちましょう。