assassinioよ、お前もか!

2024年07月30日 | 日記・エッセイ・コラム
 その後ずっと気になっているのは、11世紀以前に英語圏では「暗殺」のことをどう呼んでいたのか、ということです。ちなみにフランス語はassassinat ドイツ語はattentat スペイン語ではasesinoで、英語のassassinationと語源は同じです。
 「ブルータスよ、お前もか!」と、ジュリアス・シーザーは紀元前44年3月15日に暗殺されているので、さすがにイタリア語にはオリジナルの「暗殺」があるとおもったのですが、こちらもassassinioです。ご丁寧にスパゲッティ・アッラッサッシーナ(spaghetti all'assassina):暗殺者のスパゲティ、というプーリア州の郷土料理もあります。
 ラテン語で「暗殺」はSicarius(シーカーリウス)、さらにギリシャ語ではドロフォノス、暗殺がお家芸のロシアでは、ウビーイツァで、assassinationに由来しない言葉のようです。
 欧米で、11世紀にassassinationのような「暗殺」とイスラム教を結び付ける言葉が発生したことには、何か深い訳がありそうです。ご存知の方、ぜひ教えてください。

どうしてassassinationなの?

2024年07月16日 | 日記・エッセイ・コラム
英語で「暗殺」はassassinationで、麻薬の一種であるハッシシを飲んだ人を意味するhashshāshǐnが語源とのこと。11世紀にイスラム教シーア派の暗殺教団の指導者ハサン・サッバーフが、部下ハッシシを飲ませて犯行させた、以上Wikipediaの情報です。
 英語で殺人に関する言葉は、suicide(自殺)、genocide(大量虐殺)など語尾が~cideの言葉が多く、殺虫剤も
Insecticideです。暗殺も~cide系の言葉があってもよさそうですが、assassinationは別格扱いです。
 日本語の「暗殺」は自殺、虐殺など~殺の系列ですが、アサシネーションと音が似ているので、ポルトガル語のタバコが煙草になったり、オリンピックが五輪のように音を漢字に当てたのかとおもいましたが、そういった和語ではなくて、漢語由来です。
 どうして英語で「暗殺」assassinationが別扱いなのか、しかもイスラム教に由来する言葉なのかは興味深いのですが、いまだに先進国において暗殺が横行している、人間は進歩しないということを感じます。

おまわりさんを減らせ

2024年07月14日 | 日記・エッセイ・コラム
 私たちは時間の流れを生きています。時間は過去から未来への一歩通行なので、すべての物事は、原因があっての結果であり、現在の状況は過去に原因があり、未来は現在どうするかで変えられるとおもっています。
 現在、すなわち結果だけを見た場合には、判断を誤ってしまう可能性があります。ジャレドダイアモンドさんの著作に、地球にやってきた宇宙人は、この星の支配者はトウモロコシで、人間を奴隷にして繫栄しているとおもうだろう、という記述がありますが、広大な畑に繁茂するトウモロコシに、人間が水を撒いたり、農薬を散布する姿を宇宙船から覗いた情報だけからは、そう見えるかもしれません。
 医学研究でも、我々は病気という結果から原因を考えて行くわけです。例えば動脈硬化が進んでいる患者さんはコレステロールが高い、コレステロールが悪さをしているに違いない、と考える。認知症の患者さんの脳にはアミロイドβが沈着している。アミロイドβを減らせば認知症の進行を抑えられるかもしれない。
 でもそれらは、事故現場にはいつもおまわりさんが集まっている。おまわりさんを減らせば、事故が減るのではないか?という誤解かもしれません。
 軍備を増強すれば敵が攻めてくる、という人もいますが、軍備を減らせば、戦争が無くなるとはおもえません。

胃がん検診をぶっ壊~す!

2024年07月08日 | 日記・エッセイ・コラム
 東京都知事選挙が行われ、さて都民は知らん仏より知ってる鬼、いえ、知らん鬼より知ってる鬼を選んだようです。
 今回は過去最多の56人が立候補し、当選者含む上位3名以外は、得票が有効投票数の1割未満ということで、供託金300万円が都に没収されます。300万円払えば注目度の高い都知事選で、テレビでの政見放送や選挙公報への掲載ができ、費用と手間は候補者持ちですが、都内全域にポスターも掲出できる。当選者は1名なので、間違って当選してしまうこともないということで、自己PR目的の立候補者が乱立したわけです。多額の税金を使って実施する選挙で、53名から300万円を没収しても見合わないので、供託金の金額をもっと高くするべき、という意見もあります。
 実は今から10年以上前に、私も選挙への立候補を考えたことがあることをおもいだしました。
 腫瘍内科医の岡田直美先生から、新刊書「『治らない』と言われてもあきらめないがん治療」(東京新聞)が届き、
その本の中で、私が岡田先生に立候補の相談したときのエピソードを紹介していただきました。
 幼少期のピロリ菌感染が胃がんの主たる原因であり、感染による胃粘膜萎縮が進むことで胃がんのリスクが高まります。採血検査でピロリ菌感染の有無と、胃粘膜萎縮の度合いの指標である血清ペプシノゲンを測る検査「胃がんリスク検査」を受けることで、将来胃がんになる可能性がABCDの4段階でわかります。ピロリ菌感染がなく胃粘膜萎縮もないA群の人は一生ほぼ胃がんにならず、B<C<Dの順に胃がんの発症率が上がります。放射線被ばくを伴うバリウム検診を毎年繰り返すよりも、生涯一度「胃がんリスク検査」を実施し、ピロリ菌感染のあるBCD群だけに胃がん検診を実施すべき。更にはBCD群の人はピロリ菌を治療することで、将来胃がんになる危険度を下げることができる。「胃がんリスク検査」は費用も数千円と安く、採血だけなので一般健診と同時に実施できる。
 私はこの「胃がんリスク検査」を全国に広める活動をしていたのですが、我が国では「胃がん検診」を全員一律に実施し、しかも集団検診ではバリウム検診が主流で、当時「胃がんリスク検査」を住民検診に導入している自治体は都内でも同志のいた足立区、葛飾区、そして目黒区の3か所だけで、全国でも10市町村もないぐらいでした。
 そこで、私は「胃がん検診の前に胃がんリスク検査を!」のワンイシューで各地の選挙に立候補し、胃がんリスク検査のABCDのマトリックスを選挙ポスターにして、全国に掲示することを目指したのです。
 そんなことを考えていた矢先「NHKをぶっ壊す!」で立花孝志さんが登場し、格の違いを見せつけられ、私は立候補を諦めました。今回の都知事選で立花さんは、希望者に選挙ポスターを張り出す権利を売り、注目を集めましたが、おかげさまで今では胃がんリスク検査を実施する自治体は全国で増え、都内ではほとんどの市区町村で実施していますので、選挙のお世話になることは止めました。
 

アブない やかラの話2

2024年07月04日 | 日記・エッセイ・コラム
 我々の体内の過剰なグルコースはアセチルCoAを経て、炭素数16の脂肪酸パルミチン酸となります。更にパルミチン酸は長鎖脂肪酸伸長酵素により、炭素数18のステアリン酸になり、ステアリン酸からω-9脂肪酸のオレイン酸が合成されます。ω-9とは脂肪酸の炭素鎖の末端から9番目のところに2重結合があるという意味です。オレイン酸の語源はオリーブで、オリーブオイルに多く含まれる脂肪酸ですが、このように動物の体内でも合成することができるので、動物性油脂にも多く含まれています。
 植物はオレイン酸からω-6脂肪酸であるリノール酸、ω-3脂肪酸のα-リノレン酸を生成することができるのですが、我々動物はリノール酸、α-リノレン酸を作る酵素を持っていないので、体外から摂取する必要があります。リノール酸、α-リノレン酸が必須脂肪酸と呼ばれる所以です。
 リノール酸は植物性油脂の主成分で、大豆油、コーン油などいわゆるサラダオイルと呼ばれている食用油に多く含まれています。植物油が動物性油脂に比べて健康的と言われるのは、動物が合成できない必須脂肪酸が多く含まれていることも一因です。
 体内に取り入れられたリノール酸は、アラキドン酸に変換され、アラキドン酸は酵素シクロゲナーゼ(COX)の働きでプロスタグランジンに、またリポキシゲナ―ゼ(LOX)の働きでロイコトリエンになります。プロスタグランジンもロイコトリエンも、我々の身体を守るために重要な役割を果たしている物質ですが、炎症物質ですので過剰に働くと不快な症状をもたらし、慢性炎症は動脈硬化性疾患や発がんの原因になります。頭痛や発熱のときに飲む消炎鎮痛剤は、COXの働きを抑えて炎症物質であるプロスタグランジンの生成を抑制する薬です。ロイコトリエンは血管透過性を増し気管支を収縮させる作用があり、その過剰な働きはアレルギー症状や気管支喘息を悪化させます。ロイコトリエン拮抗薬はアレルギーや気管支喘息の治療薬です。
 必須脂肪酸のリノール酸を多く含む植物性油脂も、摂り過ぎると「危ないヤカラ」になってしまうわけです。
 食用油脂が貴重品だった時代には少なかった、喘息やアレルギーの患者さんが増えているのは、植物油脂の生産量、消費量が飛躍的に増えたことが原因の一つだと私はおもっています。
 また、オリーブオイルは身体にイイ油といわれていますが、オレイン酸が多くリノール酸の比率が低いため、比較的「危なくないヤカラ」ぐらいにおもって、過剰な摂取は避けた方が無難です。