ノバルティスが専用窓口 データ操作の降圧剤

2013年07月25日 | 日記・エッセイ・コラム
共同通信社  7月25日(木) 配信

 製薬会社ノバルティスファーマ(東京)は24日、同社の降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)の臨床研究データに人為的な操作があった問題を受け、服用している患者向けに専用の問い合わせ窓口を設置した。

 問題発覚後、不安に感じた患者が服用を中止するケースが相次いでいるため。ディオバンをめぐっては脳卒中や狭心症の発生の予防効果に疑問が出ているが、同社は高血圧などの治療薬としての安全性や有効性に問題はないとしている。

 同社は「服用を急に中止すると血圧をコントロールできなくなる恐れがあり、大変危険。まず専門医や当社に相談してほしい」(広報部)とした。

 問い合わせ窓口はフリーダイヤル(0120)187298。受付時間は、祝日や同社の休業日を除く平日の午前9時から午後5時半まで。


胃のアンチエイジングをしましょう!~7月10日NHK「ためしてガッテン」より

2013年07月20日 | 日記・エッセイ・コラム

 年をとると、皮膚も骨も脳も血管も、全身いたるところが老化していきます。
 いやですねぇ。
 若い頃、内視鏡の研修をはじめたころ、高齢者の萎縮して薄くなっている胃粘膜は「老化による萎縮」と診断し、年相応ですねとご説明し、たまに見かける胃粘膜萎縮のないお年寄りには、「お若い胃ですね!」と申しあげていました。
 でも、それは間違っていたのです。
 ピロリ菌の発見で、胃の老化に対する考え方が一変しました。
 胃粘膜の萎縮の原因は老化ではなく、ピロリ菌感染だったのです。
 ピロリ菌感染がなければ、年をとっても胃粘膜は若いときのままつやつやしています。
 たまにみかける「若い胃粘膜」のお年寄りは、ピロリ菌感染のない方だったのです。

 胃を荒らす要因はピロリ菌だけなのか?
 YES。
 もちろん、胃粘膜に影響を与える要因はたくさんありますが、ピロリ菌の影響が圧倒的に大きいのです。
 よく、ストレスで胃炎になるといいます。
 それは本当か? 7月10日放送されたNHK「ためしてガッテン」で、実験をしてみました。
 ピロリ菌感染のない若い番組スタッフが、たいへんストレスのかかるトランプドミノを組み立てる作業を3日間続け、その前後の胃の内視鏡像を比べるというもの。
 ふふふ、実はこの撮影、当院で行ないました。
 結果、胃粘膜の内視鏡像には、ストレス作業前後で全く変化ありませんでした。

 萎縮がすすんだ胃粘膜からは、高率に胃がんが発生します。
 胃粘膜萎縮の原因であるピロリ菌は薬で簡単に治療できます。
 ピロリ菌除菌が成功すれば、胃の老化、いえ胃粘膜萎縮はそれ以上進まなくなりますし、胃がんになる危険度も下がることが期待できます。
 胃のアンチエイジングは簡単です!
 
 
 


医者は無責任な投資コンサルタント

2013年07月16日 | 日記・エッセイ・コラム

 「この治療を受けるあなたと、受けないあなたを、後で比べることはできない」
 いつも私が患者さんに申しあげている言葉です。
 風邪薬をのむか、コレステロールを下げるか、手術をうけるか・・・、あなたにとって医療を受けた場合と、受けない場合、どちらがいいのかは永遠にわからない。
 風邪薬をのんでよかった、とおもっていても、もしかしたらのまなくてもすぐに治ったかもしれないし、コレステロールを下げていたのに脳梗塞になったと恨んでいる人も、のんでいなければもっと早く発作がおきていたかもしれない。絶対に比べられない選択。
 受けてよかったかどうかを客観的に知るために、受けた人受けない人をたくさん集めて、どっちがよかったかを比べる研究、大規模臨床試験を医学の分野ではよく行ないます。ちなみに今回のディオバンの不正疑惑も、このタイプの研究です。
 でも人間の身体はブラックボックス、多くの人にプラスの結果が出た治療でも、自分にはマイナスということも少なくない。
 そんな不確実な状況で、医者は研究データや過去の経験を総動員して、患者に最善とおもわれる手段を示す。
 それは投資コンサルタントが「この株を買うと儲かりますよ」というのと同じ。
 利益が保証されているわけではないのです。
 違うのは、株の場合は損をしたかどうか、すなわち、買った場合と買わなかった場合があとで検証できるけれど、手術してしまった身体はもとには戻らない。手術してよかったも、しなければよかったかどうかも、わかるときは永遠に来ない。
 医者は、3年しか生きられなかったを、3年も生きられたと、言い換えることができる。
  何とも無責任な投資コンサルタント、だとおもいます。

 


ディオバン(エックスフォージ、コディオ)服用中の患者さんへ

2013年07月13日 | 日記・エッセイ・コラム

7月26日追記)ノバルティス社が、ディオバン(エックスフォージ、コディオ)服用中の患者さんの問い合わせ窓口を開設しました。
フリーダイヤル(0120)187298
受付時間は、祝日や同社の休業日を除く平日の午前9時から午後5時半まで。

 ディオバン(薬品名バルサルタン)に関する学術論文について、多くの報道がなされており、ご心配をお掛けしております。
 ディオバン及び、ディオバン配合剤のエックスフォージ、コディオ服用中の患者さんから、多数お問い合わせをいただいておりますので、当院の考えと今後の対応方法をお示ししたうえで、ご質問、お問い合わせへの回答をいたします。

●今回のディオバンの学術論文の問題点と、当院の考え
問題点
1)日本国内の研究者による複数の自主的研究において、ディオバンが他の降圧剤よりも優れているという結論を出すためのデータ改ざんがあったのではないか?
2)同研究において、降圧効果以外の、心疾患や脳血管障害の抑制についても、ディオバンが他の降圧剤よりも優れているという結論を出すためのデータ改ざんがあったのではないか?
3)研究を行なった機関にディオバンを製造販売してるメーカー(ノバルティスファーマ)は多額の寄付を行なっており、研究に公平性を欠いたのではないか?
4)研究のデータ解析に、ノバルティス社の社員が関わっており、恣意的に自社製品に有利な解析を行なったのではないか?
当院の考え
1)2)に関しては、データ改ざんは研究者の犯罪ですから、こういった大規模研究の中で、個々の研究者があえて犯罪行為を行なうことはないとおもいます。リスクを負うメリットがありません。
 しかし、「入院を要する心不全」や「一過性脳虚血発作」といった、医師の主観の入る評価項目があり、これはデータを集めているときに研究の目的を知っていれば、データを恣意的に導く要因になるとおもいます。もしかしたら、データ改ざん以前の、データを取る時点でのバイアスが大きかったのではないか、と私はおもっています。
 3)については、大学などの研究機関は何らかの方法で研究費を調達しなくてはならず、製薬メーカーの寄付も重要な財源になっているのは事実です。
 私の大学時代の経験を正直に申しあげると、研究費をいただいている会社の薬を優先的に処方する、ぐらいのことは多少ありました。
 しかし、その会社の薬が有利になるように研究データを改ざんすることは、まずしないでしょう。そんなことをしたら、研究者としての生命を絶たれてしまいます。
4)製薬メーカーの研究者には、統計の得意な方がいらっしゃるので、私も個人の立場で、自分の研究データの解析をお願いすることはありましたが、それが不正につながることはありえないとおもいます。誰が解析したかより、どういう解析をしたかの方が問題で、解析方法は論文に記載されるからです。しかし、利害関係が発生する研究に、当該社員に解析をお願いするのは、誤解を招くとおもいます。
 従いまして、当院としては、今回のディオバンの研究論文では、データ改ざん等があったかどうかは判断できませんが、関わった研究者の姿勢を疑われても仕方がないという要素が多いことは事実とおもいます。

●当院のディオバン(エックスフォージ、コディオ)処方に関する今後の方針
 今回の問題は、国内外の多数あるディオバンに関する学術論文の中の、国内のいくつかのものにおいて、データ解析上の疑義、製薬メーカーの関与に関する疑義がある、ということで、この点は、厚生労働省も調査を開始しております。
 現在のところ、ディオバン錠に関しては、厚生労働省からも保険薬価収載停止や回収の指示は出ておらず、メーカーからの出荷も継続しており、薬剤の効果を否定されたという状況ではございませんし、健康上の被害に関しては心配ないと考えています。
 当院においても降圧剤として、一定の効果がみられている患者さんも多数いらっしゃいますし、服用継続についても、問題なしと考えます。
 当院では、「ディオバン及びその合剤(エックスフォージ、コディオ)」については、以前より服用していて、血圧が安定している患者さんに関しては、現在のところ、これまでどおり処方を継続しております。
 新規の患者さんについては、「ディオバン及びその合剤」以外の薬を優先的に選択しながら、事態の推移をみていきたいとおもいます。

●これまでいただいたご質問
Q)新聞報道でみたのですが、ディオバンを服用していて大丈夫ですか?
A)今回の事件は、重篤な副作用が認められたわけではなく、健康被害もでていませんので、
現在ディオバンで降圧効果が得られている患者さんについては、ひきつづき服用継続をお願いいたします。
 私事ながら、私は自分の父親にもディオバンの処方を継続しております。

Q)先生の処方に従って、効果のない薬を長期に使用していたことになるので、これまでの薬代を返金頂きたいのですが?
A)ディオバンに他剤よりも優れた効果、降圧効果以外の効果があるかどうかについては、現在疑義がもたれているところですが、効果のない薬、と言い切ることは、今のところできないとおもっております。
 ディオバン錠に関しては、厚生労働省からも保険薬価収載停止や回収の指示は出ておらず、メーカーからの出荷も継続しており、薬剤の効果を否定されたという状況ではございませんので、「ディオバン及びその合剤」を処方した患者さんに対しての薬剤費の返金は、今のところ考えておらず、他施設においても、返金を行なったという事例は聞いておりません。
 今後、厚生労働省やメーカーから返金等に関する指示があった場合には、速やかに対応いたします。

Q)一定の効果があるとしても疑惑のある薬は飲みたくないというのは当たり前の話ではないでしょうか?新薬で同じ効用のある薬を至急自宅まで持参下さい!
A)お気持ちはたいへんよくわかります。
これが保険診療でなく、一般の商取引、当院でいうと自費の販売品であれば返品、交換に応じたい事例なのですが、保険診療はご加入の健康保険組合も支払いを負担しているので、すでに患者さんに処方して保険請求してしまった薬を、医療機関で勝手に交換することはできないのです。
また自宅へのお届けについても、病状悪化による往診依頼ということであればお引き受けいたしますが、それ以外の理由での訪問や配達はご容赦ください。
お手数ですが、ご来院いただき、今後の処方について相談させてください。

Q)ディオバンを他の薬に変更してもらうことはできますか?
A)ご受診いただいて、ご相談上、他剤に変更することは可能です。

Q)ディオバンをのんでいて、脳梗塞になった。副作用ではなかったのか?
A)ディオバンを服用していたことで、脳梗塞になったとは考えられません。ただ、ディオバン服用よる脳血管障害抑制の効果が得られなかったといわれれば、今回の脳梗塞に関しては、残念ながらそういうことになります。ただし、ディオバン以外の薬を飲んでいる方でも脳梗塞、心筋梗塞になる方はいらっしゃいますし、血圧以外の要因も考えられますので、ディオバンが悪者だった、とは判断できません。