エネルギーを摂らない(食べない)、エネルギーを消費する(運動)がダイエットの基本です。
でも、食は人生最大の楽しみの一つ、長期に渡ってカロリー制限を続けることは困難です。
また忙しい毎日の中で運動の時間を作るのはたいへん、その上、運動で消費できるカロリーは悲しいほど少ない。体重60キロの人が20分歩いて消費できるカロリーが約60キロカロリー、お茶碗一杯のごはんが約150キロカロリーですから、食べたカロリーを運動で消費するのが、いかに難しいかがわかります。
食べるのは大好き、でも運動は苦手、それでも痩せたいという方へ、ちょっぴり医学の力を借りて上手にダイエットする方法を紹介します。
● 食欲を何とかしたい
お腹さえすかなければ、食べ過ぎることもない。脳の食欲中枢を抑制し、満腹中枢を刺激することで、空腹感を起こさせなくする薬が「サノレックス」です。
サノレックスは、高度肥満の治療薬として保険適応にもなっている薬ですが、肝機能障害の副作用の問題から3ヶ月以上の長期服薬ができないので、サノレックスでのダイエットにはリバウンドが多く見られます。食べる楽しみを犠牲するのは、ひもんや流ダイエットとしては、あまり推奨できません。
● 食べた物を体に取り込ませない
たくさん食べても、カロリーを体に吸収させなければ、肥満の進行防ぐことができます。
「コレバイン」を食前に服用することで、食事中のコレステロールを吸着して、便から排出してくれます。コレバイン自体も全く体に吸収されずに排泄されるので、便秘以外の副作用がほとんどなく安全な薬です。高脂血症の患者さんの治療薬としても保険適応されています。
「ゼニカル」は脂質を消化する酵素リパーゼの働きを阻害し、食事で摂取した脂質を体外に排泄させる働きがあります。この薬も体に吸収されずに排出されるので副作用は少ないのですが、脂肪便による下痢を起こす率が高いので、服用には注意が必要です。日本では未承認ですが、米国FDAでは認可され、国際的に広く普及しています。
これらの薬は、すでに体に過剰に蓄えている脂肪を減らしてくれるわけではありませんので、適度な運動を行いながら、ダイエットの補助薬として長期に服用しなくては効果がありません。また過剰な服用で必要な栄養の吸収が不足する可能性もあり、注意が必要です。
● 代謝を良くして、エネルギー消費を促進する。
体の細胞は、腸管から吸収されたブドウ糖、肝臓に蓄えられているグリコーゲン、脂肪細胞内の中性脂肪が分解して放出された脂肪酸を取り込んで、エネルギーにしています。
細胞内でエネルギーを産生するミトコンドリアに脂肪酸を運ぶ働きをするのが「L-カルニチン」で、その働きを助けるのが「コエンザイムQ10」です。
L-カルニチンとコエンザイムQ10は、細胞の代謝を活性化させ、細胞レベルでエネルギー消費を促進します。食事から摂取する量は極めて少ない物質なので、薬やサプリメントで補うことで、ダイエット効果をもたらすことが期待できます。
脂肪細胞には褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞があり、褐色脂肪細胞は余剰エネルギーを熱に換えて放出し、白色脂肪細胞は大量の脂肪を蓄積し、中性脂肪として大量のエネルギーを体内に蓄える働きをしています。
漢方薬「防風通聖散」は、白色脂肪細胞の脂肪分解を促進、褐色脂肪細胞を活性化することで、減量効果を認めることが確認されています。防風通聖散の成分である麻黄は交感神経に作用して代謝を亢進するとともに、脂肪細胞のβレセプターに作用して、脂肪燃焼を促進し、熱産生を促進するという薬理作用機序も明らかになっています。
「フォースコリー(フォルスコリン)」は、脂肪細胞内の酵素、アデニル酸シクラーゼを活性化して、cAMPを増加させ、脂肪燃焼を促進することによる、ダイエット効果が注目されているサプリメントです。
またcAMPの増加によって、男性ホルモン、成長ホルモンを活性化し、除脂肪体重(筋肉、骨格筋)を増加させることも期待されています。
当院では合併症や体質にあったお薬、サプリメントを選んで、効果的なダイエットをサポートしています。お気軽にご相談ください。