GASTRO-HEALTH NOW 31号(2014.6.15)あとがき

2014年06月18日 | 日記・エッセイ・コラム

筍堀の名人は、地面を踏んだ微妙な感覚で、まだ地下深くに眠っている筍を探り当て、掘り出すそうです。頭を出してしまった筍は、固くて商品にならないからです。足で場所をぴたりと探し当て、地中から傷つけないように筍を掘り起こす、その職人技を見て驚きました。

このたびは横須賀市から素晴らしい報告をいただきました。「胃がん発見数、発見率、早期胃がん率とも、従来のX線法による胃がん検診を大きく上回っている。」こう書くと必ず、長く続けてきたX線検診と、新規導入の胃がんリスク検診を同列に比較評価することはできないとお叱りを受けます。新規のがん検診導入時には「掘り起し効果」があり、それまで見つかっていなかったがんが一気にまとまって見つかるので、繰り返し実施している場合に比べてがん発見率は高くなるからです。しかし、横須賀市の胃がんリスク検診は新規導入とはいえ、同じフィールドで同じ胃がんをターゲットにした検診が機能せずに、眠っていた胃がんを「掘り起こした」のです。半数以上の症例が手術、化学療法にまわっていることを考えても、今回の胃がんリスク検診による胃がん「掘り起こし」が、市民の救命に直接結びついているといえます。しかしながら21%は進行がんであったこと、そして内視鏡治療症例が全体の35%しかないことは、今後の課題でもあります。
筍堀の名人のように、胃がんを予知してできるだけ早期に探り当てることが、胃がんリスク検診の真の目的です。