ミミズで血栓予防?~新型コロナウイルス感染症でも注目

2020年08月22日 | 日記・エッセイ・コラム
 新型コロナウイルス感染は肺炎だけでなく、血栓症を合併することがわかってきました。血管内に血栓ができることで、脳梗塞や肺塞栓症を起こし、これは比較的若い方にもみられます。
 ミミズは漢方薬やインドの強壮剤に使われてきた歴史がありますが、ルンブルクスルベルス(Lumbricus Rubellus)という欧米原産の赤ミミズの酵素が、血栓症予防に有効なのでは?と注目されています。

〇血栓症とは?
 血栓症は血管内に出来た血栓が血管を詰まらせ、血流が阻害されることで起こる病気で、全身どこの血管にも起きる可能性があります。脳血管に血栓が詰まると脳梗塞、肺血管が詰まると肺塞栓症になり、生命に危険を及ぼしたり、重大な後遺症を残すことがあります。いわゆるエコノミークラス症候群は下肢の静脈に出来た血栓が、肺に流れることで発症します。
 新型コロナウイルス感染症では血中のウイルスが血管の内皮細胞を障害し、そこに血栓ができることがわかっています。この血栓が脳梗塞や肺塞栓症の原因になったり、若年層の新型コロナウイルス陽性患者のつま先が赤や紫色に変色する「COVID toes(コロナのつま先)」という病変も「血栓」との関連性が指摘されています。

〇血栓の出来る機序
 悪者扱いの血栓ですが、血栓形成は障害された血管の止血作用に重要な役割を担っています。
 血管が障害され出血が起こると、障害部位に血小板が集まり傷口を塞ぐ応急処置をします。次いでフィブリンという繊維状のたんぱく質が血球を取り込んで傷口を固めます。血管内にかさぶたができた状態です。かさぶたに守られて血管が修復されると、かさぶたはお役御免になり、プラスミンというタンパク分解酵素によって溶かされます。
 このフィブリンによるかさぶたが血栓で、途中ではがれたり、うまく溶かされずに血管内に流れて血管を詰まらせて起こる疾患が血栓症です。

〇ミミズ酵素はどうして血栓症予防が期待できるの?
 血栓を溶解するプラスミンは血中のプラスミノーゲンというたんぱく質が、血管内皮細胞にあるt-PA( tissue plasminogen activator )や u-PA (Urokinase-)という物質に活性化されることで生成します。t-PA、u-PAは脳梗塞の緊急治療用の注射剤として使われています。
 ルンブルクスルベルスという赤ミミズから抽出されたルンブロキナーゼという酵素が、t-PA、u-PAに似た、血栓融解作用を持つことを宮崎大学名誉教授美原恒博士が発見しました。美原恒博士は大学の廃棄物処理にミミズを利用することを考案し、増えたミミズを何かに生かせないかと考え、専門の血栓症研究と結びつけました。
 シャーレにミミズ(ルンブルクス・ルベルス)を頭から 1 センチ位に切り分けた物を順番に並べると、頭の方から 3 分の1位のフィブリンが溶けており、その部位の内臓の中からフィブリンを溶かす線溶物質が出ている事が示唆されました。
 博士はネズミ、犬を使った動物実験からミミズ乾燥粉末の抽出液を経口投与すると、ウロキナーゼ(u-PA)を静脈注射するよりも効果的に血栓を溶解させると云う可能性が示唆されたため、研究室のスタッフを被験者にしたミミズ酵素粉末服用ヒト試験を行い、被験者全てにおいて、翌日からフィブリン分解産物(血栓本体であるフィブリンが分解されたもの)が増え、そして17日目にはほぼ見られなくなるという結果を得ました。
 その後の複数の実験でも、ルンブロキナーゼの血栓溶解効果が推測されています。

〇ミミズ乾燥粉末LR末III
 ルンブルクス・ルベルスを清潔な環境で養殖し、有効成分を残して乾燥粉末化したのが、LR末IIIです。
 医薬品としての承認は得ていませんので、サプリメント(食品)扱いです。
 LR末IIIを使ったサプリメントは各種販売されていますが、当院では白寿BIO医研株式会社「アリペリン5」を扱っています
 販売価格は10,800円(税込)です。
 

新型コロナウイルス検査(抗原検査、PCR検査、抗体検査)を実施しています

2020年08月14日 | 日記・エッセイ・コラム
※11月6日更新

新型コロナウイルス検査(抗原検査、PCR検査、抗体検査)を実施しています。
それぞれの検査の意義と実施方法についてご説明します。

〇抗原検査:ウイルス由来のたんぱく質を検出する検査です。この検査で陽性ならば、感染ありの可能性が高いと判断できますが、感染していてもウイルス量が少ない場合は陰性になる場合があるので、陰性だから感染していない、とは判断しきれません。検査は咽頭粘膜から検体を採取します。検体がうまく採取できない場合は、感染していても陰性となる可能性があります。検査から15分で結果が出ます。保険診療で受診できます。会社提出、海外渡航など自己都合で検査する場合は自費11,000円(税込)です。

〇PCR検査:ウイルスの遺伝子を検出する検査です。この検査で陰性であれば、陰性である可能性が高いと判断できます。感度が高いので、すでに活性のないウイルスを検出してしまう場合や、付着しているだけで感染が成立していない微量のウイルスも検出してしまうので、この検査で陽性でも、実際には感染していない場合もあります。検査は咽頭粘膜、唾液から検体を採取します。検体がうまく採取できない場合には、感染していても陰性となる可能性があります。結果が出るまでに検査から2~3日かかるので、症状のある方はまず抗原検査をお受けになることをお勧めしています。保険診療で受診できます。会社提出、海外渡航など自己都合で検査する場合は自費25,300円(税込)です

〇抗体検査:ウイルス感染による免疫反応を見る検査です。感染初期に上昇するIgM抗体と、感染から遅れて上昇し、治癒しても一定期間持続するIgG抗体をセットで測定します。IgG抗体が陽性の場合、すでにウイルスに対する免疫があることが予想されます。採血検査で検査後10分で結果が出ます。検診としてお受けになることをお勧めしています。
保険適用外で、費用は自費で6,600円(税込)です。
IgM(ー)・IgG(-):過去も現在も感染していない可能性が高い。
IgM(+)・IgG(-):最近感染し、感染が持続している可能性が高い。
IgM(+)・IgG(+):最近感染し、感染が持続している可能性が高いが、上記IgG(-)よりは時間経過している可能性が高い。
IgM(ー)・IgG(+):過去に感染し、現在は治癒している可能性が高い。免疫があり今後は罹患しにくい可能性もある。
の4パターンで診断しますが、病歴や症状の経過と合わせて判断します。


漱沃珍流

2020年08月08日 | 日記・エッセイ・コラム
 10年前の福島原発事故のときにもイソジンうがい薬が薬局から消えました。
 事故により放出される放射性ヨウ素が甲状腺に集積すると甲状腺がんの原因になり、実際チェルノブイリの事故後に甲状腺がんが多発していますが、あらかじめヨウ素を摂取することで、甲状腺に放射性ヨウ素が取り込まれるのをブロックできるため、特に若年者には原発事故直後の安定ヨウ素剤投与が有効という意見があります。賛否はともあれ、結局10年前の事故の時には、国や自治体によるヨウ素剤の配布は行われなかったのですが、ヨウ素を含むイソジンうがい液が安定ヨウ素剤代用になるという噂が流れてしまったのです。もちろんイソジンうがい薬のヨウ素はポビドンヨードというポリビニルピロドリンという高分子との複合体なので、服用しても安定ヨウ素剤と同等にヨウ素が腸管から体内に吸収されるわけではないし、高濃度で服用すれば粘膜障害のリスクもあるので、この時は私もお勧めしませんでした。
 さて、今回はイソジンうがい薬が新型コロナウイルス感染者の重症化を予防する、という説を、何と大阪府知事が実際に商品を目の前に並べて宣伝してしまったから、さあ大変。これで東西にトンデモ知事が揃い踏みの感があります。
 イソジンうがいで軽症感染者の唾液中のウイルスが減り、重症化を予防するというのが根拠らしいのですが、そもそもわが国では今のところ重症化する人は極めて少ないですし、すでに身体に入ってしまったウイルスに、表面を洗うだけのうがいが影響を及ぼすともおもえません。
 ヨウ素は水溶液中でH₂OI⁺となり、このイオンが細菌の細胞膜やウイルス構成タンパク質を酸化して不活化しますが、ヨウ素はアルコールにはとけるのですが、水に溶けにくいという性質があります。1956年にアメリカでヨウ素をポビドンヨードというポリビニルピロドリンという高分子との複合体にすることで、水に溶けやすくする方法が開発され、以来ポビドンヨード液はうがい薬や皮膚や傷口の消毒薬として広く使われています。ちなみにそれ以前はヨードのアルコール溶液が皮膚の消毒薬として使われていました。ヨードチンキ、いわゆる赤チンですが、うがい薬には使えませんでした。
 というわけで、イソジンうがいは新型コロナウイルス感染者の重症化を予防、は無理だとおもうのですが、コロナウイルスだけでなく上気道の細菌、ウイルス感染の予防には有効、だと私はおもっていますし、私もこのコロナ騒動以前からポビドンヨードうがい薬は常用しています。
 ウイルスは宿主の細胞のプログラムに入り込んで(この時点で感染が成立)はじめて増殖を開始します。のどや口腔、手指に付着しているだけでは増殖できないのです。よって、まだ感染を起こしていない付着の段階でウイルスを洗い流してしまえば、感染リスクは下がりますし、洗い流す水にウイルスの不活化作用があれば、効果は高まります。うがい、手洗いが推奨される所以です。
 PCR検査は咽頭や口腔に付着しているウイルス(不活化した”死骸”も含めて)を感知する検査なので、いわゆるPCR検査陽性の無症状感染者と言われている人には、「付着(しているだけで、細胞内には取り込まれていない)者」が多く含まれています。感染者の周囲に付着者が多いのは当然ですが、のどや口腔、手指に付着しているだけでは感染ではありません。重症者の比率が極めて少ないのも、付着者を感染者にカウントしているため、と私はおもっています。
 細胞内に取り込まれたウイルスには、いくらイソジンで表面をうがいしても効果がありませんが、咽頭や口腔に付着しているだけであれば、ウイルスを洗い流し、不活化するイソジンうがいは有効、というかそれがうがい薬の目的なので、当然です。軽症・無症状感染者と呼ばれている人には付着者が多く含まれているので、イソジンうがいで付着が感染に至るのを防げます。感染を防げば当然重症化もしないわけですから、付着者も感染者にカウントするという前提であれば、イソジンは軽症感染者の重症化予防に有効、と言えなくもないですね。「西のトンデモ知事」は取り下げましょうか。
 さて、どうしてポビドンヨード「povidone iodine」液がイソジンと言われているかというと、ヨウ素「iodine」と、体液と浸透圧が等しい「isotnic」からの造語「iso-dine」を商品名にしたとのことです。浸透圧は濃度によるので、浸透圧が等しいとはいえないのですが、それまでのヨードのアルコール溶液、ヨードチンキと違って水溶性、ということなのだとおもいます。
 さらに気になるのが、いつから人はうがいをしていたのか、ということ。うがいの語源は「鵜飼」で、鵜が魚をのどから吐き出す様子から人間ののどを洗う行為をうがいと呼んだ。鵜飼は古事記や日本書紀にも記載があるので少なくとも8世紀には日本人はゴロゴロ、ペッのうがいをしていたのでしょうか。
 夏目漱石の漱石というペンネームは「漱石枕流」という晋の故事が由来です。「漱」は口をすすぐの意味で、3世紀の晋ではゴロゴロしていたかどうかはさておき、ガブガブ、ぺッはしていたはずです。因みに「漱石枕流」とは、西晋の孫楚が「石に枕し流れに漱ぐ」と言うべきところを、「石に漱ぎ流れに枕す」と言ってしまい、誤りを指摘されると、「石に漱ぐのは歯を磨くため、流れに枕するのは耳を洗うためだ」と言ってごまかした故事で、偏屈な態度で、自分の誤りを指摘されても直そうとせず、こじつけをして押し通すことが「漱石枕流」です。
 東西の知事さん、くれぐれも「漱石枕流」をなさらぬように。