TATTOOは刺青

2013年09月30日 | 日記・エッセイ・コラム

 区の水泳教室の講師で碑プールに行くと「刺青・タトゥの露出禁止!」という掲示がでていました。テープやラッシュガード等でカバーすれば入場可能とのことですが、テープは不衛生だし、屋内プールでラッシュガードも違和感があります。
 それに刺青とタトゥ、違うものなの?
 北海道の温泉で、ニュージーランドのマオリ族の女性が、顔面の刺青を理由に入浴を断られる事件がおきました。アイヌ語復興をめざす会合に、同じ先住民族の立場から講師として招かれた先でのことなので、国際交流としては問題が大きいとおもいます。
  刺青はタバコと違って臭いや煙で迷惑することはない、染料が溶けて水を汚すわけでなし、プールも入浴も制限するまでもないと、私はおもうのですが、 まだまだ多くの日本人は、刺青を容認できないのです。
 刺青は世界中で行なわれている風俗で、民族的、呪術的、そして宗教的な意味合いが深いことも確かで、わが国でも土偶の文様などからもわかるように、古代では一般化していたとおもわれます。
  ところが大陸から仏教・儒教文化が入ってくると一気に廃れる。
 大国主命も、聖徳太子も、光源氏も 入れ墨はしていないのです。
  罪人の刑罰として身体に墨を入れる中国式が日本に入ってきて、刺青=アウトローが日本人の感覚に植え付けられたわけです。
  ところが江戸時代になって世の中が安定すると、アウトローがかっこいい、という歌舞伎の精神が生まれ、刺青は町人や渡世人に大流行、いわゆる倶梨伽羅紋々のアート感あふれる和彫りのデザイン、技術は江戸時代に完成されましたが、当然公務員たる武士は刺青は禁止、裁判官が判決のときに桜吹雪をみせることは、ありえなかったわけです。
 日本人の刺青は民族意識や宗教観とは無縁の、かっこいいアウトローの象徴なのです。
  さらに下って、借金抱えている人も、ローンを組んでいるといえば、まっとうな感じがすると同じで、TATTOOという外来語で、入れ墨のハードルがさがってしまいました。
  少女Aが安易にTATTOOを入れてしまう。
  入れ墨?ちがうちがう、タトゥだよ、なんて言い訳されないように「刺青・タトゥの露出禁止」なんておかしな表示になってしまう。
  いくらハードルが下がっても、海上自衛官が、ポパイの真似をして腕に錨のタトゥを入れたら除隊です。
  漫画家のやくみつるさんが、医者と横綱と抑え投手は失敗が許されない職業とおっしゃっていますが、 私は彫師こそが、絶対に失敗の許されない仕事の筆頭とおもっています。
   彫師は、やり直しのきかないアウトローの覚悟を肌に刻み込んでいく。
   覚悟している刺青には、吸い込まれるような魅力を感じます。美は善悪を超える。プールや温泉に入れないだけでなく、就職も制限される、生命保険に加入できないなど社会的にも圧倒的に不利、そんなみみっちいことなんか考えず、痛みをこらえて刺青を背負うことで、自分をアウトローに追い込む。国家免許に守られて、ちまちま生きてる自分には得られない世界が身体に刻まれているのをみると、ため息がでます。
  刺青じゃなくてタトゥ、なんておもっている人は、墨を入れてはいけません。
 


ピンクレディに夢中

2013年09月26日 | 日記・エッセイ・コラム

 敬愛する阿久悠の作詞した曲を集めたCD「人間万葉歌」に、ペッパー警部、SOS、渚のシンドバッド、カルメン77、ウオンテッド、UFO、サウスポー、モンスター、透明人間が収録されていて、この7曲を立て続けに聴いて、素晴らしさに圧倒されています。
 こどものころ、キャンディーズまでは許されていたけれど、ピンクレディが出てくるとテレビのチャンネルを回されてしまいました。みんながUFOの振りをして遊んでいるときに、やさしい悪魔が精一杯だった私にも、すべてが聞いたことがある曲、レコードも平凡明星も買ってもらえなかったけれど、歌詞までしっかり覚えているのです。
  はて、透明人間のあとのピンクレディはどうなったっけ?
  まったくおもいだせず、インターネットに頼ったところ、透明人間のあとに、カメレオンアーミーがあり、これが最後のヒット曲、タイトルまでは私もおもいだせました。そのあとピンクレディはアメリカに進出して、それなりの成功を収めた(らしい)のですが、どうも色物扱いだったようで、国辱的な内容の番組もあったせいか日本では全く内容は報道されなかったとのこと。
 そして帰国後ジパングという曲を出し、これがチャート1位をとれずに、その後ピンクレディはブラウン管からフェードアウトしていきました。
   戦争嫌いの阿久悠先生は、きっとアメリカ進出には反対で、ジパングなんて曲を書いたのだとおもいます。
   カメレオンアーミーとジパング、どんな曲だったのかなあ、とおもいユーチューブで調べました。
   「ほら、あなたの後にいる、もうあなたをねらっている、もし私が口笛吹いたら、カメレオンアーミー そろそろ来る カメレオン・・・」
   「ジパング、ジパング、信じなさい、ジパング、ジパング、私を信じなさい」
 背筋が寒くなりました。
   集団的自衛権が、もうそばに来ています。
  SOSです。
   がんばれ、サウスポー。 


噛めよ 噛めよ 体が 強くなる

2013年09月25日 | 日記・エッセイ・コラム

噛めよ 噛めよ 体が 強くなる
 ~大岡山小学校学校保健委員会「食育~噛む力について」より
 
 小学生の頃は、みんなの机が後に下げられて、掃除当番がこれ見よがしに箒を振り回して埃を立てている中、一人べそをかきながら給食を食べていた私ですが、就職してからは、救急車のサイレンが聞こえ始めてから、病院の前で停まるまでの間に、おにぎりとカップラーメンを平らげてしまうぐらいの早食いになってしまいました。
 消化器科の医者ながらお恥ずかしい限りですが、消化器官の活動にとって「咀嚼」は重要なファーストステップです。

咀嚼と健康
 「よ~く~ 噛~めよ 食~べも~のを~
噛めよ 噛めよ 噛めよ 体が 強くなる」
 という歌をご存知でしょうか?
 row row row your boat の節で、子供の頃、祖母に歌い聞かせられた記憶があります。

 食糧難の時代の歌で、たくさん噛んで、ゆっくり食べることで、少しでも満腹感を得ようという意図もあったのだとおもうのですが、「噛むと体が強くなる」というところにはうそはありません。
 咀嚼によって消化管の動き、消化液の分泌、そして食欲や満腹感もコントロールされているのです。

 咀嚼の第一歩は、「食べ物を口に運ぶ」ことです。
 動物は食べ物を探し、手に取ったものを、さわって、見て、臭いをかいで、食べてもよいものかどうかを判断します。このとき脳は本能と経験を全開にしています。
 人間はこの大切なプロセスは忘れてしまっているので、賞味期限表示に頼らず、冷蔵庫の食品のラップをはずして臭いを嗅いでみることは、大切なことだとおもいます。
 さて、食品は、歯でちぎられ口腔内に入り、更に細かく砕かれます。
 これは単に物理的に食品を小さくして飲み込みやすくするだけでなく、口腔から肛門までの一本の管である消化管の運動が、ここから始まります。
 噛むことで、食道、胃、小腸、大腸に、運動の指令が送られるのです。
 また、胆汁や膵液といった消化液の分泌の準備が始まります。
 唾液とよく混ぜ合わせることは、物理的に飲み込みやすくなるだけでなく、デンプンの化学結合が切れて糖に分解され、ミクロのレベルでも消化吸収されやくなります。
 よく噛まないことは、準備のできていない消化器官に食品を送り込むことになり、消化器官に負担をかけ、消化不良の原因になります。
 また、噛むことで、脳に食事をとっていること、そして食べている量を伝えます。
 脳は、胃の中の食品の量や、食事が吸収されて血糖値が上がることで、摂食をコントロールしていますが、胃の中の食品の量、血糖値の変化よりもまず先に、噛むことで食事の量を感知しています。
 よく噛まずに食べると、胃の中に食事がたまって、血糖値が上がるまで満腹感を感じないので、食べ過ぎてしまうことになります。
 たくさん噛むことで、脳をだますこともでき、これは簡単なダイエット方法です。
 よく噛んで食べることでしっかり栄養がとれるだけでなく、食べすぎによる生活習慣病の予防にもなるのです。


ふるさと

2013年09月19日 | 日記・エッセイ・コラム

 「実家といっても、父親が転勤したばかりなんで、私も初めて行く場所なんです」
 遅めの夏休みの挨拶に来た製薬メーカーの新人の担当者が言った。
  「高校野球、応援する地元がないんですよね、うちの学校が出られるわけがないし」
 聞けば、幼少時から引越し、転校の繰り返しで、卒業した進学校もたまたま父親の赴任先で、卒業以来その地を訪れたことがないという。
 このふるさとの無い青年を、私はとても身近に感じた。

 私も血縁地縁のない土地で転々と暮らした転校生で、幼馴染がいない。
  ガキ大将にいじめられた記憶もない、初恋の子が今どうしてるかもわからない。
  仲の良い友だちができても、もうすぐ引き離されることを知りながら遊んでいた。
  いやなことがあっても、もうすぐ転校でリセットできるとおもっている。
  転校生はいつもお客さんで、傍観者だ。
 「わかります。大人になってからも、転校生気分が抜けないんです」

  向田邦子さんは、祐天寺の近くのお生まれですが、父上の仕事の関係で転校を繰り返されていました。今、遺品は小学校3年から5年の2年間だけ住んだ鹿児島の近代文学館に保管されています。向田さんは鹿児島を「ふるさともどき」と呼ばれていました。
 淡路島出身の阿久悠さんは、ご自身の少年時代をモチーフに「瀬戸内少年野球団」を書かれたぐらいだから地元の方とおもっていたら、淡路島は警察官だった父親の赴任先で、淡路島には帰る家も身内も居ないことを知りました。
 私の共感する二人の作家の醒めた視線は、帰るふるさとを持たない転校生のものだとおもうと合点がいきます。

  私は青森県の母の実家に預けられて高校に通い、はじめて転校することなく卒業することができた。
 高校時代に両親は目黒に転居したので、私の帰省先は目黒になったが、住んだ事のない目黒だった。私は田舎に幽閉されてる気分で、たいそう不満な高校時代を過ごしていた。
 この夏、私の母校が高校野球の地区予選で決勝まで進んだ。
  地方大会なので、東京で青森の戦況を知ることができない。
  球場で観戦している従兄弟からメールで報告をうけ、東京で働いている同級生にメールを転送しながら、診察室で固唾をのんでいた。
  同じ高校で1学年上だった従兄弟は、地元に住んでいる。
 祖父母は亡くなったが、青森には伯父や叔母、たくさん親戚が暮らしている。
 高校時代に帰省先だった目黒が地元になり、高校時代をすごした青森がふるさとになっている。
  惜しくも母校の甲子園は叶わなかったが、私はやっとお客さんでなく、傍観者ではない人生を送れている気がしている。


ささやかな反抗

2013年09月10日 | 日記・エッセイ・コラム

日曜日の午前3時、学芸大学の駅前の人影は、もうまばら。
「こんばんわー、お兄さん、お酒飲んでいらっしゃいますよね?」
「・・・」
 厚生労働省の研究班が胃がん検診はバリウム検査のみを推奨、目黒区でこんなに成果をあげている「胃がんリスク検診」は推奨しないとの答申案を出した。
 それに抗議する集会に参加のあと、中華料理店で反乱分子の会食、気がついたら紹興酒が何本も空いていた。
「こんなおそくまで、何なさってたんですか?」
「・・・」
 そのあと、知り合いのイタリアンが翌日から遅めの夏休みに入るというので、閉店間際に行って、グラスワイン用に口の開いているワインを全部呑みきる。
 オリンピックがきても、景気がよくなるとはおもえない。
   消費税が上がるダメージの方が大きい。すぐには税金分値上げできないもの。
   そもそも、スポーツは夢を与える、などといいながら、二言目には経済効果。
   夢は夢でしかないんだよね。夢しかくれなくて、税金取るのは詐欺だよ。
「これから、どこ行かれるんですか?」
「・・・」
   厚労省研究班いわく、バリウム検診は胃がん死亡を減らしたけれど、胃がんリスク検診は胃がん死亡を減らしたという証拠がない。そりゃそうでしょう。バリウムしかなかった時代に、みんなが受けたのだから。でもいまやバリウム飲んでくれる人は対象者の10%以下、東京では4%以下。受けない検診では胃がん死亡は減らせないでしょう。
 胃がんリスク検診は胃がんになりやすい人をみつけて、胃がんの原因のピロリ菌を退治することで、胃がんにならないようする。胃がんリスク検診が、国民の胃がん死亡を減らすのはこれからなんです。
 私のバッグの中はそんな反論資料で一杯だ。
「ちょっと、かばんの中、見せてもらってもいいですか?」
「・・・」
 腹の虫がおさまらなくて、行きつけのバーへ行ってくだを巻く。
 総理大臣、御公家さんや明治天皇の末裔までくりだして、地球の裏側で旗を振ってガッツポーズで喜ぶ姿は見苦しい。
  勝つものあれば、負けるものあり。負けたものへの配慮の心がなければ、「OMOTENASHI」はできないとおもうよ。
 福島の汚染水は完全にコントロールされている?アスリートの安全は自分が責任を持つ?
  どこにそんな根拠があるの?あなた行ってみたの?
 福島の漁師はいまだに漁に出られないんだよ。
  外国のアスリートを守るより、国民を守るほうが先じゃないの。
  都知事さん、もしあなたが、こちら側にいたら、真っ先に批判してくれたんじゃないの?
 都知事憎さに、その手下に仕返し。
「ご協力、いただけないでしょうか?」
(やなこった)
「ここが私の家です、税金使っての護衛、ありがとうございました、おまわりさん」