お花見は自粛しています

2021年03月30日 | 日記・エッセイ・コラム
 目黒川の遊歩道で、「お花見は自粛をお願いしています。」と書かれたプラカードを持った警備員さんたちが、川面と桜に背を向けて並んでいました。
 お花見「は」自粛、ということは、通行はokということか?
 でも花を見ないで通行するには、目をつむらなくてはならないので危険です。
 自粛をお願い? お花見に来た人に、プラカードを見て「お花見はやめよう」と自発的におもいなさい、は無理。
 そんなお願いをするよりも、目をつむった警備員さんたちが、桜に背を向けて「お花見は自粛しています」のプラカードを持って並んでいたほうが、説得力があるのではないかとおもいました。
 
 

新型コロナワクチン、いつ受けられる?どこで受けられる?、そして受けた方がいいの?

2021年03月23日 | 日記・エッセイ・コラム
 今のところ、目黒区では、4月26日以降に、区内13か所の会場で集団接種を行う見通しです。
 接種は、
 1.高齢者(1957年(昭和32年)4月1日以前に生まれたかた)
 2.上記の高齢者以外で基礎疾患があるかた。高齢者施設等で働くかた
 3.1.2.以外のかた
 の順に行っていくことになっていますが、具体的な接種の順番、方法についてはまだ発表はありません。
 詳細は目黒区HPをご参照ください。
 かかりつけの医療機関での実施を行う自治体もあるようですが、今回供給されるファイザー社のワクチンは極低温で保管しないと安定性が保てないことや、1本のバイアルに5~6人分の薬液が入ってることから、ワクチンを有効利用するためには集団接種が望ましい方法です。我々も目黒区医師会として会場にて接種をお手伝いする予定ですので、ご協力をよろしくお願いいたします。
 なお、ファイザー社以外の、温度管理の厳しくないワクチンが導入された場合には、医療機関での個別接種が行われる可能性はあります。
 さて、「受けた方がいいのか?」というご質問に関しては、正直なところ自信をもってお答えすることはできません。
 予防接種には、自分自身のためと世の中のための2つの目的があり、この2つはある程度重なり合っています。
 簡単にいうと、自分が掛からないことで人にもうつさないようにすることができる、かかっても重症化しないことで、医療資源を守ることができる、ということです。
 自分と社会がこのメリットを享受するために接種を受けるわけですが、接種による副反応のデメリットは接種した個人がすべて負うことになります。
 「受けた方がいいのか?」に対する答えは、このメリットとデメリットのバランスはどうか?ということです。
 まず接種することで、自分自身がコロナ感染しにくくなるか?については、開発段階の基礎データや欧米での先行接種の事例からは、YESといえるでしょう。それによって、人にうつさなくなるか?といえば、個人レベル(自分が掛からなければ、目の前の人にうつさない)ではYESとおもえますが、日本全体で見た場合、そこまでの効果が得られるかどうかは不明です。人口1億2500万人の日本の感染者数は累計で3月21日現在で45万7506人、単純計算で人口2,200人あたり1名、入院者が1万3383人、死亡者8,849人です。
 米国は人口3億3000万人に対して、感染者3,000万人、死亡者50万人、死亡率が高いとされる人口6千万人イタリアは、感染者数340万人、死亡者10万5000人、ワクチン接種の進んでいるイスラエルは、人口850万人に対して感染者83万人、死亡者6,000人です。
 我が国の感染率、死亡率は海外と比較して極めて低く、一般的に感染率、重症化率の低い集団に予防接種介入しても、感染者の多い集団のような目に見える効果を得ることは難しいのです。
 例えば体重100Kgの人がダイエットして60Kgになれば、効果は目に見えて明らかですが、体重60Kgの人が同じ方法を行っても40%減の36Kgになるわけではありませんし、60Kgの人がダイエット効果を目に見えるようにするのは100Kgの人より難しく、同じ方法をとってもダメで、そもそもダイエットをする必要もない、かえって痩せることの不利益が大きいかもしれないのです。
 低感染率、低重症化率の我が国では、予防接種の集団としての効果は得られにくいのではないか、多少はあったとしても、季節的な要因や、ウイルスの変異などの感染状況に影響を与える他の様々なファクターの方が大きく働いて、ワクチンの効果がそれこそマスクされて数字として表れにくく、効果よりも副反応ばかりが目立ち、そればかり報道されてかえって国民は不安になるかも?と私はおもっています。
 接種のデメリットは「注射時の痛み、注射後の痛み」、「アナフィラキシーなど短期的な副反応」、「発がん性や自己免疫疾患、生殖異常、その他接種後時間がたってから現れる不利益」、そして「効果持続期間が短い可能性」があることです。
 痛みに関しては、他の予防接種と同等と考えていいでしょう。
 短期的な副反応に関しては、アナフィラキシーの他に、血栓症などが報告されていますが、今のところ因果関係のはっきりしたものはありませんので、これまでの海外での接種状況からみても、心配するほどではない、と私はおもっています。
 問題は「接種後時間がたってから現れる不利益」で、これについては「あるかないかは時間がたってみなくてはわからない」としか言いようがありません。今回のワクチンはメッセンジャーRNAワクチンという前例のない作用機序のワクチンです。この手法のワクチンは長期的な安全性が担保されていないということでこれまで認可されていなかったのですが、欧米の感染状況の拡大から、それこそ緊急事態ということで、認められたわけです。目先の感染予防と「あるかないかは時間がたってみなくてはわからない」将来の不利益を天秤にかけて、どちらを取るかはいくら考えても答えの出ない問題ですが、低感染率、低重症化率の我が国で、少なくとも感染しても重症化率が極めて低く、残りの人生の長い若年者には接種したくない、というのが、私の本音です。
 ワクチンの持続効果に関しても未知です。今のところ変異ウイルスに対してもある程度効果があるということはわかっていますが、この先ウイルスの側がどんな対抗措置(変異)をとってくるはわかりません。我々の生体側もメッセンジャーRNAワクチンで作られた免疫をどのくらい維持できるのかは、個人差も含めて未知です。ただ、ウイルスの変異が大きく、人間側の免疫も1年程度しか維持できないインフルエンザワクチンを、われわれは毎年受けているわけですから、もし効果が持続しないワクチンであっても、一時的に効果が得られるのであれば、「コロナワクチンとはそういうもの」と割り切ればよい、と私はおもっています。
 接種開始まではまだ時間がありますので、接種するかどうかに関しては、無責任な情報に振り回されることなく、ご自身で判断していただきたく、そして「自分とは違う判断をする人を批判する世の中」にならないことを願っています。

また、降りるんピック?

2021年03月21日 | 日記・エッセイ・コラム
 またもやオリンピックがらみの性差別「発言」で辞任騒動です。
 開会式の演出案の相談のLINEのやりとり中で、小太りの女性タレントにブタの耳をつけて、「オリンピッグ」の駄洒落のオチを提案したとのことですが、差別云々はさておき、名ディレクターのアイディアとしてはあまりに平凡で詰まらない。そんな案しか出せないようでは、この件がなくても辞任は時間の問題だったのかもしれません。
 怖いのは、クローズドなグループの中での意見交換が表に出て、その発言に社会的な制裁が科された、ということです。
 今は私的なメールも拡散するし、日常の会話も簡単に録音できます。ジョージ・オーウェルも予想しなかった、「文春型」の監視社会の恐怖です。
 オリンピックは紀元前の古代ギリシャ「男性」市民の祭典が始まりです。オリンピックだけでなく、今世界の政治経済文化すべてが、ヨーロッパの白人男性社会が作ってきたものがスタンダードになっています。私も今、アルファベッドのキーボードを打っています。文化、人種、性の多様性が声高に叫ばれるのは、世界がどんどんグローバル化、すなわち「欧白男」スタンダードに向かっているからです。
 ホモサピエンスが誕生したのが、諸説ありますが、約10万年前、ずっと下って古代オリンピックは紀元前9世紀、約3000年前、リンカーンの奴隷解放宣言は1862年、わが国で婦人参政権が認められたのは1945年、男女雇用機会均等法は1986年です。解剖学的には人間の脳は石器時代からほとんど進化していませんし、女性しか出産できないという性的役割も変わっていないし、農耕開始に由来する格差と搾取は、現代のIT時代では更に拡大する一方、そもそも奴隷解放も、婦人参政権も自発的なものではなく、ヨーロッパ白人男性社会の圧力による実現です。
 世の中の構造も、私たちの身体も頭の中も基本的には何も変わっていないのです。
 性的なことに関していえば、遺伝子の再生産に時間と労力のコストがかからない男性と違い、女性は10か月の時間と自身の命を賭して1~2人の人間を再生産する「貴重」な存在。貴重なものは商品価値のある財となり、その価値には優劣がつき、高い価値のある財の獲得は競争になる。かくして出産と育児と時間的負担のない男性は遺伝子を残す財の獲得競争に明け暮れ、現在は仕事によって高い収入を得ることがその競争です。性風俗のほとんどが男性を対象にしていること、女性の凶悪犯罪が圧倒的に少ないことからみても、男性の、より商品価値(遺伝子を残す能力)の高い女性を手に入れるための競争が人間社会(動物すべてですね)を作ってきた、それは今も続いていて、女性には理解不能かもしれませんが、ひとことで言ってしまえば「すべてのオスの頭の中は常にそれだけ」なんです。私の彼はそうじゃない、そうじゃないことがいいことだ、とおもっている女性は、勘違いと自己否定をなさっています。
 自分の遺伝子を残すために女性の「商品価値」を値踏みすることは、太古より人間のオスに刷り込まれてるので、差別的な発言はなくならないし、なくせない。人類の長い歴史に由来するもので、発言した個人だけの責任ではないのです。 
 一つ一つの発言をとらえて、そのことだけで発言した個人のすべてを否定して退場させるのではなく、大切なのはその発言の何が問題であるかを明らかにして、それを具体的な行動にさせない、それによって不利益を被る人(性、人種、国籍・・・)を出さないようにすることです。そうしていかなくては、文春型の監視社会と相まって、たとえアイディアを出し合う内部の会議や、親しい間の私的な会話であっても、自由な発想を言ったり議論することにブレーキがかかってしまい、それこそが多様性を阻んでいくことになりかねません。
 もし今回の件が、ブタではなくて、ウサギの耳だったら問題にはならなかったのではないかとおもいますが、そんなことを書くと「ブタに対して差別だ」と言われてしまう時代が来るかもしれませんね。

教えて、みのもんたさん

2021年03月12日 | 日記・エッセイ・コラム
 3月1日に基礎疾患のない60才の女性が、新型コロナウイルスワクチン接種後にクモ膜下出血で亡くなりました。
 また、新型コロナウイルスワクチン接種後に、比較的重いアナフィラキシー症状を呈した例が3月8日時点で8例報告され、すべて女性で、4名はアレルギーや喘息などの基礎疾患があり、こちらは命に別状はなく加療にて改善している、とのことです。
 こうした報道があると自分は接種して大丈夫か?と心配して相談にいらっしゃる患者さんが、みのもんたさんが引退した今でも相当数いらっしゃいます。
 厚生労働省の統計によると、2017年には1万2,307名(男性4,535人、女性7,772名)の方がクモ膜下出血で亡くなっています。年間1万名以上ですから、毎日30名以上の方がクモ膜下出血で亡くなっている。その中の一人がたまたまコロナワクチン接種後の方だった、と考えるのが自然です。
 ファイザー社の新型コロナウイルスワクチン接種によるアナフィラキシーの発生率は、海外の接種事例から20万回に1回程度と報告されています。3月8日時点でのわが国での接種者は7万人ですので、海外事例よりも多いといえますが、初めてのワクチンをまだ慣れていない環境で接種する、という精神的な緊張状況を考えると、接種開始から間もない現時点では、副反応は多く出る可能性があります。
 というわけで、冷静に考えれば、今回の接種後の死亡やアナフィラキシーはそれほど恐れるような問題ではないので、患者さんには、
 「私は打ちますし、心臓とがんの手術をうけている自分の親にも接種を勧めるつもりです」とお答えしています。
 テレビには時間の制限がありますし、新聞は紙面の制限があります。そして何よりもスポンサーがいて、購買部数や視聴率を稼がなくてはならない「商売」です。ニュース記事も番組も商品、お客を煽るように選別し、仕掛けられているとおもった方がいい。
 朝食にカレーを食べた60代女性看護師がクモ膜下出血で亡くなっても報道されないし、新型コロナウイルワクチンを接種後に元気に過ごしている50代男性医師もニュース価値がないわけです。
 ここで1等3億円がでました、という宝くじ売り場の張り紙をみても、自分が当たるとはおもいませんね。特別だからニュースになり、特別なことは私にも、あなたにも起こらないのです。
 とはいえ、私が新型コロナウイルスワクチン接種にもろ手を挙げて賛成しているわけではありません。
 日本での新型コロナウイルスの感染状況、重症化率、死亡率を考えると、これほど大騒ぎして、たいへんなおもいをして、たくさんの税金を投じてわが国での接種を進める必要があるのか?という疑問に対する説明はなされていません。
 「接種が正しい道」ということで進んでしまっています。
 ワクチンが感染症制圧に一定の役割を果たしてきたことは確かですが、ワクチンがすべてではありません。様々な直接的な予防対策はもちろん、公衆衛生の向上や栄養状態の改善も疾病予防に大きな役割を果たしますし、ウイルス自体も変異しながら徐々に弱毒化(生き残るために人間に馴染んでいく)していきます。また新型コロナウイルスのように、元々が風邪のウイルスで、高齢者や基礎疾患のある人から重症化する、亡くなるという、いわば順当な病気をワクチンで抑え込む意義があるのか?麻疹、風疹、B型肝炎、そして子宮頸がんといった若年層や次世代に影響を与える病気に対するワクチンとは全く違う、と私は考えています。
 そして「正しそうなこと」が進む原動力は、正義だけでなく、それで得をする人がいるかどうか、ということを忘れてはいけません。例えば、かつてルワンダのような資源の出ない貧しい小国で悲惨な内戦が起こっても、国際社会はほとんど動かなかったし、わが国ではほとんど報道すらされなかったわけです。
 緊急事態宣言、パチンコ屋さんや接待を伴う店への圧力、GO TOなんちゃらを巡る問題、飲食店の時短要請、PCR検査の拡大、医療機関のひっ迫、医療従事者に感謝しましょうと自衛隊の飛行機を飛ばしてみたり、そして予防接種、よく考えてみれば、今回のコロナ騒動では、きちんとした説明のない(できない)ことだらけです。
 宝くじは、還元率45%(公営ギャンブルの70~80%、やパチンコの80~85%より低い)、1億円以上の当選率は500万~1000万分の1,100万円以上でも10万分の1です。競馬や競輪、パチンコのような娯楽性も少なく、確率を上げる努力も出来ません。当選率を上げるためには、たくさん買うことしかありません。宝くじは「買わない方がいいことは数字の上で明らか」なのに、こんなものを国民は騙されて買っているわけです。
 予防接種を勧める原動力は何?と疑ってみる、そしてテレビや新聞の報道を鵜吞みにせずに、自分の頭で考えて判断することが大事です。
 患者さんには「でも、どうしても不安だったら、無理に接種しなくてもいいとおもいますよ、僕もこの仕事をしていなかったら、きっと接種をためらっているとおもいます」と付け加えています。
 どんなに詳細な問診をしても予防接種による副反応は予見できないし、アナフィラキシーを予防する上手な注射の打ち方もありません。どんなに考えても、悩んでも、副反応が出るかどうかは接種してみなければわからず、宝くじの1億円当選者と一緒で、確率は極めて低いけれども必ず起こる。
 そして接種しなきゃよかった、はあるかもしれないけれど、接種したおかげでコロナに罹らなかった、のかどうかは絶対にわからない。そこは宝くじとは違うところです。