血液検査でピロリ菌除菌の判定はできません

2018年05月09日 | 日記・エッセイ・コラム
 ピロリ菌の除菌が成功しているかどうかは、血液検査で判定できません。医者でも勘違いしている方が少なくないため、採血検査で除菌不成功と診断して、紹介されてくる患者さんもいるくらいです。
 目黒区の胃がんリスク検査などで行われている血液検査のピロリ菌検査は、菌のそのものではなく、感染による免疫反応で人間の体内で産生される抗体を測定する検査で、菌がいなくなってもしばらくの間は抗体が残るため、除菌の判定には使えないのです。戦争が終わっても兵隊さんが完全に引き上げるまでには時間がかかる、みたいなイメージです。
 ピロリ菌の除菌判定に使える検査は「尿素呼気試験」と「便中抗原検査」です。
 ピロリ菌は胃の中でウレアーゼという酵素を出して、尿素を分解してアンモニアを産生し、このアンモニアが菌のまわりの胃酸を中和することで、ピロリ菌は胃酸に消化されずに生き延びています。これが胃を荒らす原因にもなっています。尿素をアンモニアに分解するときに二酸化炭素がでます。標識をつけた炭素の試薬(無害です)を飲む前後の呼気の二酸化炭素を比較し、ラベルされた炭素がどのくらい含まれているかを調べることで、ピロリ菌の出すウレアーゼの働きがあるかどうか、がわかります。ウレアーゼはピロリ菌特有の酵素なので、ウレアーゼの働きがなければピロリ菌はいないと判定できます。これが「尿素呼気試験」の原理です。
「便中抗原検査」は、便中のピロリ菌の菌体内にある酵素カタラーゼを測定します。便に排出される菌そのものの成分(=抗原)を測定しているので、この成分が検出されなければ、菌がいなくなったと判定できます。
 除菌治療の薬を飲むとピロリ菌は急激に減少します。もし完全にいなくならずに、少しでも残っていればじわじわとまた増えてきます。完全に除菌されず、再び菌が盛り返してきていないかどうかをみるために、除菌治療薬を飲んでから、少し期間をおいてから除菌判定の検査を行う必要があり、当院では服薬後2か月以降を目安にしています。