悪性貧血はビタミンB12の欠乏によって起こる神経障害を伴う重度の貧血で、19世紀末から20世紀初めまでは治療法がなく致死性の疾患であったため、悪性貧血と呼ばれていました。ビタミンB12は胃の壁細胞で作られる内因子と結合して小腸から吸収されますが、自己免疫によって胃の壁細胞が攻撃され内因子が欠乏し、ビタミンB12が吸収されなくなることが悪性貧血の原因です。
1926年米国の医師ジョージ・マイノット、ジョージ・ウィップル、ウィリアム・マーフィーは、肝臓を大量に食べさせることで悪性貧血が改善することを発見し、1934年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。1948年に米国の化学者カール・フォルカースが、メルク社で肝臓から「赤い結晶性物質」を抽出し、それがビタミンB12であることを突き止めました。現在でもビタミンB12の製剤は、各社とも赤い遮光シートに包まれています。ビタミンB12は非常に複雑な分子構造のため人工合成できず、かつては肝臓からの抽出に頼っていたのですが、1956年イギリスの化学者ドロシー・ホジキンがX線結晶構造解析によってビタミンB12の構造を解明して合成製剤化の道が開かれ、ドロシー・ホジキンは1964年ノーベル化学賞を受賞しています。
ビタミンB12はビタミンB9(葉酸)と共同してDNA合成と調整の働きを行っており、ビタミンB12不足で分裂の活発な血球合成に障害が起こることで悪性貧血が発症します。ビタミンB12は葉酸の活性型であるテトラヒドロ葉酸(THF)の再生産に関わっているため、ビタミンB12不足は同時に葉酸の欠乏もきたしてしまい、葉酸の補充によりビタミンB12不足も改善します。
ビタミンB12は葉酸と共同してホモシステインをメチオニンに変換します。先天的な高ホモシステイン血症の方は、若年から動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすいことから、ビタミンB12には動脈硬化を抑える効果があると考えられます。
またビタミンB12不足は神経障害をきたします。過剰なメチルマロン酸が脂肪酸合成に障害をもたらし、脂肪酸合成障害により神経細胞を保護する絶縁性の脂質の層「ミエリン鞘」の合成異常が起こります。メチルマロン酸をメチルマロニルCoAからスクシニルCoAに変換する酵素、メチルマロニルCoAムターゼはメチオニンから合成されるため、ビタミンB12不足によってメチルマロニルCoAムターゼが減少すると、メチルマロン酸濃度が上昇して神経細胞を保護するミエリンに異常をきたし、しびれ・感覚異常・うつなどの神経障害症状をきたすのです。
ビタミンB12(シアノコバラミン)は、人間の体内では合成できず、草食動物は腸内細菌のプロピオン酸生産菌が産生するビタミンB12を摂取しています。他のビタミンB群と異なり、ビタミンB12は植物性の食品には含まれておらず、動物のレバー、魚介類、卵、乳製品からしか摂取出来ません。海藻類にも含まれていますが、海藻の消化力には個人差が大きく、欧米人ではほとんど消化出来ません。ビタミンB12の成人の摂取推奨量は男性・女性ともに2.4μg/日、豚レバーなら約10g、小粒のアサリなら約2個程度に含まれている量ですので、普通に食事をとっていれば欠乏症は起きにくいのですが、動物性食品の摂取の少ない方はサプリメント等で補充した方がよいかもしれません。乳製品も摂らないビーガンの方は確実にビタミンB12不足になりますので、サプリメントによる補充が必須です。また胃の手術を受けた方は内因子不足でビタミンB12が吸収されず、特に胃全摘された方は経口で大量に摂取しても効果が得られない可能性があり、その場合は注射剤での補充が必要です。ヘモグロビンの合成に必要な鉄は、胃酸によってイオン化されて吸収されるので、胃全摘された方は胃酸の分泌もないので、鉄の補充も合わせて必要です。
ビタミンB12は水溶性ビタミンなので、大量摂取しても過剰症は起きにくいのですが、発がんとの関連を示唆する報告があります。
オハイオ州立大学総合がんセンター、フレッド・ハッチンソンがん研究センター、国立台湾大学のグループの2017年のJournal of Clinical Oncology誌への報告によると、10年間、1日にビタミンB12を1日に55 µg以上摂取する男性喫煙者では、非摂取者と比べて肺がんを発症するリスクが約4倍でした。
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)によると、2015年までの追跡期間中に、食道扁平上皮がん332人、食道腺がん17人、分類不能の食道がん78人の計427人(男性382人、女性45人)が食道がんに罹患し、ビタミンB12の食事摂取が多い人ほど、食道がんの罹患リスクが高い傾向が見られたと報告しています。
ビタミンB12はDNA合成に必要で、細胞分裂を促進するにビタミンなので、過剰摂取はがんの進行を促進してしまう可能性はありそうです。無症状のがんが潜在している可能性の高い高齢者は、ビタミンB12の過剰な摂取は控えた方が良いのではないか、というのが私の意見です。
1926年米国の医師ジョージ・マイノット、ジョージ・ウィップル、ウィリアム・マーフィーは、肝臓を大量に食べさせることで悪性貧血が改善することを発見し、1934年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。1948年に米国の化学者カール・フォルカースが、メルク社で肝臓から「赤い結晶性物質」を抽出し、それがビタミンB12であることを突き止めました。現在でもビタミンB12の製剤は、各社とも赤い遮光シートに包まれています。ビタミンB12は非常に複雑な分子構造のため人工合成できず、かつては肝臓からの抽出に頼っていたのですが、1956年イギリスの化学者ドロシー・ホジキンがX線結晶構造解析によってビタミンB12の構造を解明して合成製剤化の道が開かれ、ドロシー・ホジキンは1964年ノーベル化学賞を受賞しています。
ビタミンB12はビタミンB9(葉酸)と共同してDNA合成と調整の働きを行っており、ビタミンB12不足で分裂の活発な血球合成に障害が起こることで悪性貧血が発症します。ビタミンB12は葉酸の活性型であるテトラヒドロ葉酸(THF)の再生産に関わっているため、ビタミンB12不足は同時に葉酸の欠乏もきたしてしまい、葉酸の補充によりビタミンB12不足も改善します。
ビタミンB12は葉酸と共同してホモシステインをメチオニンに変換します。先天的な高ホモシステイン血症の方は、若年から動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすいことから、ビタミンB12には動脈硬化を抑える効果があると考えられます。
またビタミンB12不足は神経障害をきたします。過剰なメチルマロン酸が脂肪酸合成に障害をもたらし、脂肪酸合成障害により神経細胞を保護する絶縁性の脂質の層「ミエリン鞘」の合成異常が起こります。メチルマロン酸をメチルマロニルCoAからスクシニルCoAに変換する酵素、メチルマロニルCoAムターゼはメチオニンから合成されるため、ビタミンB12不足によってメチルマロニルCoAムターゼが減少すると、メチルマロン酸濃度が上昇して神経細胞を保護するミエリンに異常をきたし、しびれ・感覚異常・うつなどの神経障害症状をきたすのです。
ビタミンB12(シアノコバラミン)は、人間の体内では合成できず、草食動物は腸内細菌のプロピオン酸生産菌が産生するビタミンB12を摂取しています。他のビタミンB群と異なり、ビタミンB12は植物性の食品には含まれておらず、動物のレバー、魚介類、卵、乳製品からしか摂取出来ません。海藻類にも含まれていますが、海藻の消化力には個人差が大きく、欧米人ではほとんど消化出来ません。ビタミンB12の成人の摂取推奨量は男性・女性ともに2.4μg/日、豚レバーなら約10g、小粒のアサリなら約2個程度に含まれている量ですので、普通に食事をとっていれば欠乏症は起きにくいのですが、動物性食品の摂取の少ない方はサプリメント等で補充した方がよいかもしれません。乳製品も摂らないビーガンの方は確実にビタミンB12不足になりますので、サプリメントによる補充が必須です。また胃の手術を受けた方は内因子不足でビタミンB12が吸収されず、特に胃全摘された方は経口で大量に摂取しても効果が得られない可能性があり、その場合は注射剤での補充が必要です。ヘモグロビンの合成に必要な鉄は、胃酸によってイオン化されて吸収されるので、胃全摘された方は胃酸の分泌もないので、鉄の補充も合わせて必要です。
ビタミンB12は水溶性ビタミンなので、大量摂取しても過剰症は起きにくいのですが、発がんとの関連を示唆する報告があります。
オハイオ州立大学総合がんセンター、フレッド・ハッチンソンがん研究センター、国立台湾大学のグループの2017年のJournal of Clinical Oncology誌への報告によると、10年間、1日にビタミンB12を1日に55 µg以上摂取する男性喫煙者では、非摂取者と比べて肺がんを発症するリスクが約4倍でした。
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)によると、2015年までの追跡期間中に、食道扁平上皮がん332人、食道腺がん17人、分類不能の食道がん78人の計427人(男性382人、女性45人)が食道がんに罹患し、ビタミンB12の食事摂取が多い人ほど、食道がんの罹患リスクが高い傾向が見られたと報告しています。
ビタミンB12はDNA合成に必要で、細胞分裂を促進するにビタミンなので、過剰摂取はがんの進行を促進してしまう可能性はありそうです。無症状のがんが潜在している可能性の高い高齢者は、ビタミンB12の過剰な摂取は控えた方が良いのではないか、というのが私の意見です。