アブない やかラの話2

2024年07月04日 | 日記・エッセイ・コラム
 我々の体内の過剰なグルコースはアセチルCoAを経て、炭素数16の脂肪酸パルミチン酸となります。更にパルミチン酸は長鎖脂肪酸伸長酵素により、炭素数18のステアリン酸になり、ステアリン酸からω-9脂肪酸のオレイン酸が合成されます。ω-9とは脂肪酸の炭素鎖の末端から9番目のところに2重結合があるという意味です。オレイン酸の語源はオリーブで、オリーブオイルに多く含まれる脂肪酸ですが、このように動物の体内でも合成することができるので、動物性油脂にも多く含まれています。
 植物はオレイン酸からω-6脂肪酸であるリノール酸、ω-3脂肪酸のα-リノレン酸を生成することができるのですが、我々動物はリノール酸、α-リノレン酸を作る酵素を持っていないので、体外から摂取する必要があります。リノール酸、α-リノレン酸が必須脂肪酸と呼ばれる所以です。
 リノール酸は植物性油脂の主成分で、大豆油、コーン油などいわゆるサラダオイルと呼ばれている食用油に多く含まれています。植物油が動物性油脂に比べて健康的と言われるのは、動物が合成できない必須脂肪酸が多く含まれていることも一因です。
 体内に取り入れられたリノール酸は、アラキドン酸に変換され、アラキドン酸は酵素シクロゲナーゼ(COX)の働きでプロスタグランジンに、またリポキシゲナ―ゼ(LOX)の働きでロイコトリエンになります。プロスタグランジンもロイコトリエンも、我々の身体を守るために重要な役割を果たしている物質ですが、炎症物質ですので過剰に働くと不快な症状をもたらし、慢性炎症は動脈硬化性疾患や発がんの原因になります。頭痛や発熱のときに飲む消炎鎮痛剤は、COXの働きを抑えて炎症物質であるプロスタグランジンの生成を抑制する薬です。ロイコトリエンは血管透過性を増し気管支を収縮させる作用があり、その過剰な働きはアレルギー症状や気管支喘息を悪化させます。ロイコトリエン拮抗薬はアレルギーや気管支喘息の治療薬です。
 必須脂肪酸のリノール酸を多く含む植物性油脂も、摂り過ぎると「危ないヤカラ」になってしまうわけです。
 食用油脂が貴重品だった時代には少なかった、喘息やアレルギーの患者さんが増えているのは、植物油脂の生産量、消費量が飛躍的に増えたことが原因の一つだと私はおもっています。
 また、オリーブオイルは身体にイイ油といわれていますが、オレイン酸が多くリノール酸の比率が低いため、比較的「危なくないヤカラ」ぐらいにおもって、過剰な摂取は避けた方が無難です。