あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

まあお茶でもどうですか。

2016-06-28 | 日記
♪清水港の名物は~ お茶の香りと男伊達。
なんて昔の歌にもあるが、僕の故郷はお茶どころなのである。
昨日、実家から新茶が届いた。
待ちに待った新茶である。
というのも今回、夏が終わった頃に去年送ってもらったお茶が切れ、食品庫の奥にあった数年前の安いお茶を飲んでいたのだ。
これが正直不味い。
何がどう不味いかと言うと、香りなんぞはとうの昔に飛び去り、味は渋みばっかりが残ってお茶の旨味なぞなく、色はくすんだ緑色。
安いお茶のお徳用の大きめのパックなんぞ買ったものだから、飲んでも飲んでも減らない。
ニュージーランドでお茶が飲めること自体ありがたいことなんだぞ、と自分自身を戒め、でも不味いなと正直に思いつつ。
やっとそれがなくなり、頂き物のティーバッグの緑茶なぞ飲みながら新茶が来るのを待っていたのだ。

庭で仕事をしていたら犬のココがワンワン吠えている。
何かと思って行ってみると、郵便配達の兄ちゃんが包みを持っていた。
おお、来たか来たかと受け取り、早速今年の新茶をいただいた。
お湯を沸かし、そのお湯を湯のみに入れて少し冷ます。
急須にお茶の葉を入れて、程よい温度になった湯をいれる。
お茶の葉が完全に開いたころ、湯のみに注ぎ庭に出た。
今年一番の新茶は『大地に』だな。
『大地に』とは、もう十何年前になるか、当時の合い方のJCが始めた儀式である。
自然の中でとことん遊ばせてもらった日に飲む最初のビールの数滴を大地に落とすのである。
ある夏にヤツは北海道をキャンプ生活していたのだな。
外で飲むからこそ『大地に』が出来るわけであり、居酒屋で乾杯なんて時になかなかできない。
そんな儀式を僕はことあるごとに続けている。
今回は初物を神さまにお供え物にするような気持ちで、母なる大地に今年の新茶を注いだ。
「大地に」とつぶやき、そして新茶をいただく。
お茶の香りも良く、味は適度な渋みの裏にうっすらと甘ささえ感じられる。
あー幸せだなあ。
実家から送られるお茶は日本でもトップレベルのお茶だ。
それってたぶん世界でもトップレベルなんだろうな。
ちなみに値段もトップレベルなのだろう。
そんな美味しいお茶がここニュージーランドで味わえるなんて。
ありがたやありがたや。

ニュージーランドに住む日本人のアイデンティティを考えることがある。
日本人のワーカーは仕事をきっちりこなすので重宝される。
その分、ラテン系の人たちと一緒に働くとそのツケを払わされることもある、と聞く。
表面だけ見れば貧乏くじを引くようなものだが、仕事を作務、すなわち修行と考えればそれもありか。
仕事に対して真摯に取り組み、手を抜かないというのは日本人の性質なのだろう。
同時に嫌な所も目に入る。
日本人会など、集まりのある場所では村社会独特のどろどろしたいやらしさも存在する。
「なんでニュージーランド辺りまで来てそんなかねえ」、などと思ったことも1回2回ではない。
日本人が経営する会社では日本の悪しき習慣をそのまま持ってきているところもある。
あとは日本人うんぬんより、「それって人間としてどうなの?」というところか。
そういったマイナス点はあれど、やはり日本人としての素晴らしさはマイナスを上回る。
最近、40も後半になりやっぱり自分は日本人なんだなあ、と思うことがよくある。
そしてそれを気に入っている自分もいる。
以前の話でも書いたが20代の生意気盛りには日本人で居ることが恥ずかしかった。
そんな過去も踏まえ、今は日本人としてこの地でそこそこやっている自分がいる。
最近はユーチューブで落語ばっかり聞いていて英語が下手糞になってしまったが、こちらの友達はそんな僕を理解してくれている。
どこにいるかは問題ではない。
人としてどうあるべきか、という問いに自分の行動で示すのが日本人のアイデンティティなのではないか。
そんなことをお茶を飲みながらぼーっと考えた。

日本人の感性の一つに味覚があると思う。
子供の頃から親が手を抜かずにきっちりとした物を食べさせれば、味覚は研ぎ澄まされる。
娘は14歳、最近今まで食べれなかった、いわゆる大人の味にも慣れてきた。
そしてお茶の美味しさも最近になって分かるようになった。
夕べは食後に美味しいお茶を飲んだら感動していた。
そう、本当に美味しいものは人を感動させる力がある。
それを伝えるのも、これまた親の役目ではないかと思う。
そうやって考えると、子供の頃に手を抜かず美味しい物を食べさせてくれた親に感謝。
今でもこうやって高価なお茶を送ってくれる親兄弟に感謝。
そいてこうやって家族で美味しいお茶を飲める平和な環境に感謝
ありがたや、ありがたや、なのである。

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