あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

散歩

2011-11-12 | 日記
最近の日課は犬の散歩である。
朝、日が昇る頃に近所の公園に行く。
朝露で靴がびしょびしょになるので長靴で行く。
街中を歩く時は引き綱をつけて行き、公園の入り口で綱を外す。
犬が喜んで走り回る。幸せそうだ。
散歩のコースは池を1周。大体20分ぐらいか。
遠くに山が朝日を浴びているのが見える。
クライストチャーチは平野なので空が広い。
太陽は低い角度から昇り、低い角度に沈む。
山に囲まれたクィーンズタウンとはえらい違いだ。
昇ってきた朝日が池に写る。
神々しい朝だ。
瞑想をして気功の体操なぞをする。
この時間だとほとんど人に出会わない。
ぼくだって犬がいなかったらこんな時間に散歩などしない。



普段と違う時間帯というのは景色も変わって見える。
以前あるお客さんに聞いた話だが『1mの旅』というものだ。
自分の家を出て1mの間の旅である。
見慣れてしまうと感覚は鈍り、何も感じなくなってしまうが、意識を研ぎ澄ませれば1mの間でも感じること思うことはいくらでもある。
それを1mの旅と、その人は言った。
遠くへ行く珍しい景色を見れば感じることは容易だ。
だが普段自分が住んでいる場所をじっくりと見ることも大切である。
人間の意識は外へ外へと向いている。
個人の話であれば、容姿外見を人は気にするが自分の心の中を追求する人は少ない。
地球上の人類で言えば、意識は地球の外、宇宙へ向かっているが、自分達が住む地球の中がどうなっているのかほとんど分かっていない。
今この時代に必要なのは内なる探求である。
それは当たり前に見える物に意識を向け、一歩深いところで物事を考えることでもある。
当たり前の中に真の美しさはあり、当たり前の中に不必要で無駄なことはある。
要は物事の本質を見極める、ということだ。
散歩をしながらこんなことを考えるのもまた楽し。



散歩をする公園はカンタベリーパークというのだが、ここ1週間ほどその公園がにぎやかである。
11月の第二週末はクライストチャーチでA&Pショーという、ニュージーランド最大の農業祭がある。
その会場がカンタベリーパークなのだ。
このショーは農業に関連するものなら、ありとあらゆる物が展示される。
牛、馬、羊の品評会。その他、鹿、豚、ヤギ、鶏、アヒル、ロバ、ウサギ、アルパカなどの動物も来る。
牧羊犬を使った競技会もあれば乗馬の競技もあるし、丸太を斧でぶった切る競争もやる。もちろん羊の毛がりも欠かせない。
最新トラクターなど農作業機器の展示販売もあれば、昔使っていた蒸気機関の展示もある。
バンドも来るし、飲食のコーナーあり、子供用の簡易遊園地あり、その他出店たくさん。
ショーは水木金の3日間で行われ、金曜日はクライストチャーチは祝日である。
犬の散歩コースにもフェンスが張られ、先々週ぐらいから会場作りが始まった。
ショー前日、娘と犬を散歩に出かけたら大きな農耕馬がつながれていた。
ここに住んでいても農耕馬をこんな間近で見ることなどない。
深雪は大喜びで馬の近くに行き興味深そうに眺めている。
ココは初めて見る大きな動物に怖がって近づかない。
馬は品評会に出すためのものだろう。毛のつやもよくいかにも健康そうである。
別の場所ではアヒルに餌をやるおじさんがいた。
聞くとピクトンでアヒルのファームをやっているそうな。
ショーのためにアヒルを持ってやってきた。
シープドッグを使いアヒル3羽をうまくコントロールする様子は、羊を囲いに追い込むドッグショーのミニチュア版だ。
カメラを持っていないのが残念である。
ふつう近所の散歩にカメラは持ち歩かない。



ショー当日の朝、今度はカメラを持って散歩に行った。
するとショーに使う羊を追いやる風景に出会った。
ニュージーランドでは別に珍しいことではないが、散歩コースでこういうのを見ると普段と違う日なんだなと思う。
シープドッグが仕事をするのを見てココは何を思うのだろうか。
池のほとりで囲みを作り、その中に馬が放されていた。
絵になる風景だ。
「馬というのは本来おとなしい性質なんですが、日本では馬が人に噛み付いたりけっとばしたりと荒いんです。ここニュージーランドではそのおとなしい性質がくっきり現れて、一人で両手に手綱を持って二頭の馬を引っ張っていくんですが、こんなの日本では考えられません」
以前出会った馬の調教師の言葉を思い出した。
確かに馬はおとなしく、娘が恐る恐る顔を触っても、じっとしている。
澄んだ馬の瞳を見ながら、地球上に住むのは人間だけではないんだなと、ふと思った。


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