東京駅が大好きなんだけれど、いつも賑わう構内を歩いていると母にと買い求めたものの記憶がよみがえる。
最後に入院していた病院に行くために乗り換えたのが東京駅だから。
難病で少しずつ話せなくなって、咀嚼することも難しくなっていって、母は大好きなビールも塩を振ったスイカも口にできなくなった。
きっと頷く人も多いと思うんだけど「普通」とされる能力を失っていく家族のために、なんとかならないかと目を皿のようにして探す時期があった。
羽のように軽いスプーン。
筆談機として活躍したDS。
携帯用の小さなすり鉢。
だから東京駅のジューススタンドでスイカジュースを見つけた時も心が踊った。
その時はまだ歩いていて口からものを飲み込めた母は、スイカジュースを飲んでは何度も手でOKサインを出した。
美味しい、と。
いろんなものを失っていく下り坂のような道のりを、今振り返ってみると、それもみんな贈り物のような時間だった。
あー、でもあのスイカジュース。
塩をふってあげたらよかったな。
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