平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

ポスト・ハーベスト(1988年10月)

2005年02月11日 | 食の安全
食べ物の話題を続けます。もう20年近く前の平和エッセイ(1988年10月)ですが、今でもそのまま通用するのが残念です――

 日本では、国民が口にする食料の半分近くがすでに輸入品になっている。その上、最近の農産物の自由化の圧力によって、近い将来、輸入食料品の比率がますます増加することが予想される。米ですらもはや聖域ではない、などと言われている。日本の農家はもちろん農産物の輸入自由化に反対であるが、貿易の自由化は世界経済の阻止できない流れである。また、安くておいしい食料品が輸入されることを歓迎する人たちも少なくはない。しかし、これには賛成ばかりはしていられない問題もある。その一つがポスト・ハーベストの問題である。

これは聞きなれない言葉であるが、正確にいうと、ポスト・ハーベスト・アプリケーションの略で、ハーベスト、つまり収穫のあとで作物に施される薬品処理のことである。たとえば、アメリカから日本へオレンジやレモンなどを船で輸送すると約二週間かかるが、普通ではその間に果物は当然すべて腐敗する。それを腐らせないために、収穫された作物に、腐敗防止のための薬品がかけられる。この薬品が日本ではその使用が認められていない農薬で、しかもかなりの高濃度である。それでも、日本到着時には約二割が腐敗するという。

 ところがアメリカでは、自国内向けの作物にはこのポスト・ハーベスト薬品の使用は禁止されている、というからあきれる。自分の国では危険だから使用しないが、金さえもうかるのであれば、他国民の健康などどうなってもかまわない、というのであろうか。日本の政府や報道機関はこのような実情を国民に明確に知らせ、消費者はこのことをよくわきまえた上で、輸入食料品を口にするか否か選択すべきであろう。

 自分さえ得すれば、他人や他国がどうなってもかまわない、という発想は、今日の世界の風潮になっているようである。アメリカではタバコの有害性が認められて、テレビなどでのタバコのコマーシャルがきびしく制限されているのに、アメリカのタバコ会社は日本では大々的な宣伝活動をしている。ドイツやイタリアをはじめとして西ヨーロッパ諸国は、自国で出た有害な産業廃棄物をアフリカに捨てようとしている。日本とて例外ではない。日本を含め先進国は、自国では使用禁止になっている毒性の高い農薬を開発途上国に堂々と売っている。そしてその最たるものが、武器を売り込む死の商人である。

 こうしたことは、人類は本来、神から分かれた一つの生命であり、他者を傷つけることは、即、自分を傷つけることであることを知らぬ無知から生じている。早い話、東南アジアで日本の有毒な農薬を使って栽培された作物を日本が輸入したら、その被害を被るのは日本人なのである。このような問題を見るにつけ、人類は一つという意識を一日も早く覚醒させるために、ますます世界平和の祈りを祈らなければならない、と思うのである。

――このエッセイを書いたときは、「ポスト・ハーベスト」はまだ新語でしたが、現在では一般語になっているのではないでしょうか。そして、カロリーベースでの日本の食料自給率は、すでに50%を割り込み、40%になっているということです。