平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

鳥インフルエンザ(2004年4月)

2005年02月09日 | バックナンバー
昨年の平和エッセイから(2004年4月)――

 鳥インフルエンザが日本でも感染を広げている。現在のところは鳥から鳥への感染で、鳥から人間への感染は、ベトナムやタイでは報告されているが、まだ例外的であると見られている。しかし、ウィルスが変異して、人間から人間に感染する力を持つと、大規模な感染、つまりパンデミーが起こる可能性がある。

 第一次世界大戦の直後の一九一八~一九年に、スペイン風邪と呼ばれたインフルエンザが大流行し、全世界で四千万人が死んだ。ウィルスの遺伝子分析から、スペイン風邪も鳥インフルエンザの一種であったことが判明している。

 人体には免疫という機能があり、細菌やウィルスが侵入しても、通常は抗体によって退治することができる。しかし、まったく新しいウィルスになると、人体はまだそれに対する抗体を持っていないので、自然治癒することが難しく、大規模な感染につながるのである。交通網が発達した現在、新しいウィルスはたちまちのうちに全世界に広まる可能性がある。

 どうしてこのようなウィルスが発生するのだろうか。原因はまだわからないが、人間と動物の関係がその一因であることは間違いないであろう。

 ニワトリは肉や卵として人間の食生活に利用されてきた。日本のような先進工業国では、ニワトリは過密状態で狭い鶏舎に閉じこめられ、できるだけ早く肥育するように、成長ホルモン、濃厚飼料、抗生物質が投与されている。

 また、できるだけ早く多くの卵を産ませるために行なわれているのが、「強制換羽」という方法である。雌鶏は一年間卵を産んだあと、産卵を自然にやめ、その間に羽を生え換わらせる。そのとき、餌と光を与えないというショックを加えると、換羽が早まり、それだけ産卵も早まる。しかし、これはニワトリに多大のストレスを与え、致死率を高める。ニワトリの立場からすれば、あまりにも残酷な飼育方法である。

 ニワトリだけではない。BSE(狂牛病)は、草食動物の牛に、牛の肉骨粉を食べさせるという、自然界の摂理を無視した飼育方法によって生じた病気である。狂牛病の牛の特定部位を食べると、「新クロイツフェルト・ヤコブ病」という痴呆症が発症する。

 人類はまだ、肉食をやめるまでにはいたっていない。動物性タンパク質もある程度は必要である。しかし、動物をただのモノと見なし、命を犠牲にして人間に体を捧げてくれている動物たちへの感謝を忘れ、ただ旨い不味いといっているのでは、動物も浮かばれない。残酷な飼育方法を改め、食べるときには、動物たちに心から感謝の念を捧げることが、最低限必要なことではないだろうか。