仔羊の回帰線

詩と散文のプロムナード :Promenade

*ゲーテの詩と東洋的世界:

2024年03月21日 14時04分32秒 | 文学・学問・詩:余滴 Ⅱ

ゲーテが66歳の時の詩に、次のような短い詩がある。--

  われひとり  座して 思えらく

  これに優るところ いずこにあらん

   葡萄酒を ひとり 嗜たしな

   邪魔だてする者も なければ  想いに耽ふけるなり

      *- * -  (  ((    *

     この詩はゲーテが「西東詩集」West-ostlicher Divanを書き、東洋に関心を寄せたころの一篇なのだが、  中国の盛唐時代には、かの有名な漢詩、王維の五言律詩がある。--

   ひとり座す 幽篁の裏うち

     琴を弾き 復また 長嘯ちょうしょう

    深林 人知らず

   明月来りて 相照らす      王維 「竹里館」    

      *-* この二つの詩には、聊か相違があるのに気づく。王維の詩は、自然との融合、自然との一体感や調和が歌われている。

それに対し、ゲーテの詩では 自己が、人間が中心だということである。 王維の詩が、独り深い竹藪のなかで琴を弾き、閑に吟じているのだが、かくなる愉しみや味わいを知るのは、人ではなく、夜空に浮かび明るく照らしている月だけだ、という心境なのである。

  これに対して、ゲーテの詩は、他から離れ、ひとり静かにいるのだが、葡萄酒を嗜みつつ、自己から抜けきることなく、ひとり思いに耽っている様なのである。 

      

   

   

 

 


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